本記事は、坂本光司氏の著書『会社の偏差値 強くて愛される会社になるための100の指標』(あさ出版)の中から一部を抜粋・編集しています

社員の給料や賞与は業界の、または地域の平均以上である

給与
(画像=artswai/PIXTA)

この指標に〇がつく企業の「強み」と、つかない企業の「弱み」

社員の給料が、業界や地域の平均を大きく上回る中小企業は数多く存在しています。こうした中小企業に共通しているのは、「仕事を取った・取られた」といった喧嘩ビジネスや価格競争型ビジネスなどを避け、「他社がやらない、できない、やりたくない」いわば非価格競争型ビジネスで生きていることです。給料の高さは経営の質の高さの証でもあります。

●経営のレベルの高さは付加価値にあらわれる

厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」によると、40歳から44歳の社員の全産業・全職種の所定内給与は、男性が36.1万円、女性が26.1万円です。また同年代の年間賞与で見ると、男性が118.1万円、女性が70.5万円です。

企業規模別や業種別で大きなギャップがあり、例えば社員数人から人規模に限ってみると、男性が31.6万円、女性は24.5万円、また年間賞与では男性は65.9万円、女性が50.3万円です。ただこれは平均ですから、企業によっては、これよりはるかに低い ところも多々あるでしょう。

しかし、「中小企業だから給与や賞与が低くて当然」という考え方は間違っています。

というのは、経営者や幹部社員はともかく、現場、特に3Kとか5Kなどといわれる仕事に従事する社員は、どこの企業でも慢性的に人財不足状態にあるからです。

こうした状況では、人柄の良い創造型の人財社員であれば、どこにでも就職できます。そういう人たちがさまざまな理由で離職せず、属する企業で頑張ってくれています。「雇ってやっている」という考え方は、大間違いなのです。

業績が高いのは、社員の努力の結果です。社員の努力があるから、顧客に支持される高い品質が維持され、高付加価値を生む製品・サービスが生まれます。

業界や地域の平均より高い給与水準を維持している企業はどこも、高い付加価値を生み出しています。これらの企業のほとんどは年度当初に、全社員に対して明確に利益の分配基準を示しています。だからこそ社員は頑張るのです。

私がよく知る京都市の社員数20名のモノづくり企業の平均年収は、40歳で700万円。また、さいたま市の社員数70名の建設関連の中小企業の平均年収は40歳で600万円となっています。やれば、できるのです。

会社の偏差値 強くて愛される会社になるための100の指標
坂本光司(さかもと・こうじ)
1947年、静岡県(焼津市)生まれ。経営学者。静岡文化芸術大学教授、法政大学大学院教授などを歴任。現在は、人を大切にする経営学会会長、千葉商科大学大学院商学研究科中小企業人本経営(EMBA)プログラム長、日本でいちばん大切にしたい会社大賞審査委員長、他公職多数。徹底した現場派研究者であり、この50年間で訪問調査・アドバイスをした企業は8000社以上となる。専門は中小企業経営論・地域経済論・福祉産業論。近著『「新たな資本主義」のマネジメント入門』2021年ビジネス社、『もう価格で闘わない』2021年あさ出版、『経営者のノート』2020年あさ出版、『日本でいちばん大切にしたい会社7』2020年あさ出版 他。

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