本記事は、坂本光司氏の著書『会社の偏差値 強くて愛される会社になるための100の指標』(あさ出版)の中から一部を抜粋・編集しています

正社員比率、または無期雇用社員が90%以上である

正社員,給料
(画像=kouta/PIXTA)

この指標に〇がつく企業の「強み」と、つかない企業の「弱み」

働くほとんどの人は、正社員雇用を望んでいます。それも当然で、正社員として雇用されれば雇用期間を気にせず働けるし、生活も気持ちも安定するからです。十分な処遇をされた社員は、よけいな心配をせず、もてる力を十分に発揮します。正社員比率が高いか低いかは、企業のポテンシャルが高いか低いかの指標でもあるのです。

●人件費支払いは企業の目的

わが国の社員の就業形態を見ると、正社員比率が63%、非正規社員比率が37%です。そして正規・非正規、つまり有期雇用か無期雇用かを性別でみると、男性の正社員比率が77%であるのに対し、女性のそれは45%にすぎません。

業種別では、大きくばらつきがみられます。正社員比率が高いのは、建設業の87%、情報通信業の86%、そして製造業の77%などです。一方、医療・福祉は63%、流通業は52%、そして宿泊業、飲食サービス業は31%などとなっており、平均を大きく下回っています。

個別に見ると同じ業種、同じ規模でも、正社員比率が90%以上の企業もあれば、逆に30%以下という企業もあります。この意味では、正規雇用か非正規雇用かは、業種特性というより、企業の経営の考え方、特に社員に対する見方によるところが大きいといえます。

非正規社員の割合が高い企業は、多くの場合、人件費を最大のコストと見ており、固定費ではなく変動費として扱いたがります。事実、正社員を100とした非正規社員の賃金(含む賞与・福利厚生分)は、50%前後以下にすぎないのです。

雇用契約面でも、正社員として雇用すればよほどのことがない限り雇用は定年まで守られますが、非正規の場合は契約期間が満了すればそこで終了。そのため人件費はコストの調整弁として扱われることになります。

社員とその家族を大切にする経営では、人件費は社員とその家族の生活を守る基礎です。ですから人件費は、企業にとって、追求すべき目的のひとつなのです。

この指標では、正社員比率は100%としたかったところです。しかし社員の中には、正規より非正規のほうがいいという人も少なからずいるので、90%以上としています。

望ましいのは、正社員を希望する人は正社員として、非正規社員を希望する人は非正規社員として雇用することです。

会社の偏差値 強くて愛される会社になるための100の指標
坂本光司(さかもと・こうじ)
1947年、静岡県(焼津市)生まれ。経営学者。静岡文化芸術大学教授、法政大学大学院教授などを歴任。現在は、人を大切にする経営学会会長、千葉商科大学大学院商学研究科中小企業人本経営(EMBA)プログラム長、日本でいちばん大切にしたい会社大賞審査委員長、他公職多数。徹底した現場派研究者であり、この50年間で訪問調査・アドバイスをした企業は8000社以上となる。専門は中小企業経営論・地域経済論・福祉産業論。近著『「新たな資本主義」のマネジメント入門』2021年ビジネス社、『もう価格で闘わない』2021年あさ出版、『経営者のノート』2020年あさ出版、『日本でいちばん大切にしたい会社7』2020年あさ出版 他。

※画像をクリックするとAmazonに飛びます
ZUU online library
(※画像をクリックするとZUU online libraryに飛びます)