本記事は、井上裕之氏の著書『人生を自由にしてくれる 本当のお金の使い方』(あさ出版)の中から一部を抜粋・編集しています
「お金があるけれど不幸せな人」は、「バランス」が崩れている
お金だけでは幸せになれない2つ目の理由は、「バランス」です。
私はこれまで、多くのお金持ち(富裕層)と接してきました(「お金持ち」に公的な定義はないため、調査会社によって基準が異なります。国内では、野村総合研究所の分類が有名です。純金融資産保有額が1億円以上5億円未満を「富裕層」と定義しています)。
そのお金持ちの人たちの中にも、「幸せなお金持ち」と「不幸せなお金持ち」がいます。
このように不幸せなお金持ちとは、
「経済的に恵まれているのに、心の充足感、充実感、満足感が足りない人」
「お金は足りているのに、幸せの感性が足りない人」
のことです。
「不幸せなお金持ち」は、「健康、人間関係、仕事、お金、社会貢献のバランス」が整っていません。だから、心が満たされない。
「幸せなお金持ち」と「不幸せなお金持ち」の違いは何かというと、冒頭に挙げた「バランス」なのです。
「貯蓄が3億円ある。けれど、仕事にまったくやりがいを感じない」 「貯蓄が3億円ある。けれど、もう何年も入院していて、不安が続いている」 「貯蓄が3億円ある。けれど、誰からも信用されず、ひとりぼっちで寂しい」 「貯蓄が3億円ある。けれど、人のためには1円も使いたくない」
これでは、どれほどお金があっても、「幸せ」を感じにくいでしょう。
●幸せとは、「バランスが整った状態」のこと
私たちが、「幸せ」を感じるときに重視する要素・項目は、収入、健康、人間関係など、さまざまです。
世界最大の世論調査会社「ギャラップ社」は、50年以上かけて世界150カ国を調査・分析した結果として、「幸福度を高めるために必要な5つの要素」を明らかにしています(参照:『幸福の習慣』トム・ラス/ジム・ハーター著/ディスカヴァー・トゥエンティワン)。
【幸福を構成する5つの要素】 ①仕事の幸福 ②人間関係の幸福 ③経済的な幸福(お金) ④身体的な幸福(健康) ⑤地域社会の幸福
ギャラップ社は、「どれかひとつの要素で高得点をとるのは比較的簡単で66%が実現。しかし、5つの要素すべてで高得点を獲得できる人は、わずか7%にすぎない」と分析しています。
この結果は、
「経済的な幸福で高得点が取れていても、他の要素での得点が低ければ、『幸せなお金持ち』にはなりにくい」
「あまりあるお金を持っていても、5つの要素がバランスよく整っていなければ、幸せを感じにくい」
ことを示唆しています。つまり幸せとは、こうした要素の「バランス」が整った状態のことを言うのです。
●幸せなお金持ちは、「バランスを整える」ことにお金を使っている
ではなぜ、不幸せなお金持ちは、バランスを崩しているのでしょうか。
私が見てきた「不幸せなお金持ち」に共通していたのは、「お金を稼ぐ」、あるいは、「お金を使わない」ことへの執着心が強いことです。
「他人よりもお金をたくさん持っていれば、他人よりも幸せになれる」 「成功者とは、お金をたくさん持っている人のことである」 「お金をたくさん持っている人=正義、お金を持っていない人=悪」
と盲信し、お金を稼ぐことに躍起になる。
他人を押し退け、自分の利益だけを追い求める。
お金があることをアピールして悦に入る。
稼いだお金は我欲を満たすために使う……。
不幸せなお金持ちは、「バランスを整えるためにお金を使う」という発想に乏しい気がします。
仕事、人間関係、お金、健康、社会貢献のバランスが整っていないと、「幸せを感じる感性」は弱くなります。
「健康状態が良くない」「自分を認めてくれたり、気づかってくれたりする人がいない」「人とのつながりがなく、孤独である」「今の仕事が自分に合っていない」など、構成要素のバランスが崩れていれば、充足感、充実感、満足感が不足するのも当然です。
一方、「幸せなお金持ち」に共通しているのは、「お金を稼ぐ(貯める)」ことに執着しないことです。
「体力が衰えないように、今は健康に力を入れよう」 「新規事業をはじめたばかりだから、今は仕事に力を入れよう」 「部下の人数が増えたので、今は人間関係に力を入れよう」
といったように、自分のライフステージに合わせて、「今の自分に必要なこと」にお金を使ってバランスを整えています。
「幸せ=バランス」です。
「幸せなお金持ち」になる上で大切なのは、「お金を増やす」こと以上に、
「バランスを整えるためにお金を使う」
ことなのです。
著書は累計発行部数130万部を突破。実話から生まれたデビュー作『自分で奇跡を起こす方法』(フォレスト出版)は、テレビ番組「奇跡体験! アンビリバボー」で紹介され、大きな反響を呼ぶ。ベストセラー『「学び」を「お金」に変える技術』(かんき出版)、『本物の気づかい(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など、著書多数。
※画像をクリックするとAmazonに飛びます