本記事は、須藤亮氏の著書『トッププレゼンターが教える「企画書とプレゼン」実践講座』(日本実業出版社)の中から一部を抜粋・編集しています
戦略のある提案書をつくる簡単メソッド「リボンフレーム」
POINT 企画には集約思考と拡散思考の両方が必要
人間の思考法として、「集約思考」(=convergent thinking)と「拡散思考」(=diversion thinking)という2つの対照的な手法があります。
これは、アメリカの心理学者ギルフォードが名付けたもので、それによれば集約思考とは、たくさんの情報の中から共通点を見出し、要点を抽出し、目的に合う結論を一つに絞っていく思考法です。
ですので、集約思考では、情報と情報の関係性を理解し、意味のレベルで整理することが求められます。
一方、拡散思考とは、思考するテーマに対して要素や選択肢を思いつくだけ出力していく思考法です。拡散思考では、思い浮かんだモノ・コトの質よりも量を重視し、既成概念に囚われず自由に発想を行います。
「これはちょっと違うかな?」と感じるようなアイデアも歓迎し、柔軟に幅広くアイデアを出力することが重要です。「もうこれ以上は出てこない…」と感じたところからもうひと踏ん張りすることで、普段の思考領域を超えたところまで思考を広げることを目指します。
●2つの思考法をフレーム化したのがリボンフレーム
企画を推し進めるにあたって、この集約思考と拡散思考を効果的に活用していくことが有効ですが、実はこれを取り入れたのが「リボンフレーム」です。
リボンフレームとは、集約思考と拡散思考によって出てきた扇を2つ並べ、要(かなめ)で結んだものです。
そして要の真ん中に来るのが戦略です。これに沿って企画作業を進めていくのです。
その作業プロセスをかいつまんで言うと次のような流れになります。
(1)企画の初動時は依頼事項(=与件)を基に、まずは様々な角度から情報を集め分析します。この時必要なのは拡散思考です。 (2)次に戦略化のステージです。この時は最適な戦略に導くために、分析の結論を一本化します。これに必要なのが集約思考です。 (3)さらに、戦略が決まったら、それを具現化する施策を考えなければなりません。この時には再び拡散思考を実践します。
この初動・戦略化・施策化に集約思考と拡散思考を使い、リボンフレームに沿って進めていけば、誰でも簡単に良い企画書がつくれるようになるのです。
Checkit! ・企画作業には、集約思考法と拡散思考法の双方が必要。 ・それを取り入れ、戦略を中心に置き、フレーム化したのが「リボンフレーム」。
リボンフレームの中核「ロジック3点セット」
POINT 戦略はどう生み出されるのか
企画において「戦略」をどう生み出すのかは重要なポイントです。
リボンフレームでこの戦略の部分を拡大すると、「課題」「戦略」「理由」の3つの要素から成り立っています(下図参照)。
戦略は、漫然とした分析だけで生まれるものではありません。集約思考の結果、まず何が課題かを絞り込んでから生まれるものです。
つまり、課題があって戦略がある。そういう順序になります。
では「課題」とは何かというと、目的達成のため乗り越えるべきモノ・コト、あるいは解決すべきモノ・コトです。
「戦略」とは目的を達成する策略と言いましたが、別の言い方をすると「課題を解決する考え方」でもあるのです。
そして、3つ目の要素「理由」とは、文字通りその戦略を設定した理由。何故それが課題を解決するのかという根拠です。理由を明記することで、そこに説得力が生まれます。ちなみに、英語では「ラショナル」といって、欧米系の人は特にそこを重視する傾向があります。
この3つの関係を筆者は「ロジック3点セット」と名付けました。
ビジネスの推進には、必ずこのロジック3点セットがついて回ります。例えば、次のような日常の会話を考えてみてください。
上司:「あれ、どうなってる?」(=課題) 部下:「あっ、それはこれこれこういう考え方で進めてます」(=戦略) 部下:「何故かというと、こういう事情なもんで」(=理由)
こんなやり取りが頻繁に行われていますよね。
リボンフレームの中核は、実はこのロジック3点セットをどう構成するかで成り立っています。だからこそ、これをクリアすれば説得力ある企画書ができるのです。
Checkit! 戦略の前に課題があり、また戦略には理由がある。 課題・戦略・理由の3要素を「ロジック3点セット」と言う。 日頃のビジネスは、会話レベルでも必ずこの3要素で推進される。
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