本記事は、須藤亮氏の著書『トッププレゼンターが教える「企画書とプレゼン」実践講座』(日本実業出版社)の中から一部を抜粋・編集しています
〈プレゼンの勘所〉プレゼンとは自分を磨く場
POINT: いかに相手の心を動かすか
私は、40年近くマーケティング・コミュニケーションの仕事をしています。その中、国内外で数々のプレゼンをこなしてきました。その都度、結果に一喜一憂し、そこに人生がありました。
そんな経験を通して感じたのは、「プレゼンは自分を磨く舞台」だったということです。
だからこそ、プレゼン前には入念に準備しますし、1回1回一生懸命、相手の心を動かそうと工夫しました。
今回、そのノウハウを棚卸しして、ティップスとしてお伝えします。
まず言いたいのは、あなたもプレゼンの機会を得たならば、いかに相手の心を動かすかという気概を持って立ち向かうべきということです。
ここでは相手の心を動かすティップスをいくつか紹介していきます。
Check it!: ・プレゼンは自分を磨く場であること。 ・いかに相手の心を動かすかという気概を持って臨もう。
〈プレゼンの勘所〉相手を勇気づける気持ちで
POINT: 「熱意」と「プロフェッショナル性」と「謙虚さ」を持つ
依頼主は、何らかの問題を抱え、悩んでいるわけです。だからこそ何らかの企画をし、アクションを起こさねばならないと思っています。もしかしたら、それは大きな投資かもしれない。あるいは、会社が潰れないためにどうしてもやらなければならないことなのかもしれない。いずれにしても、直面する問題に切迫しているのは確かです。
そういった相手に対して大事なのは、相手の身になって考えること、そして プレゼンを通じて相手を勇気づけることです。
ですから、プレゼンする側にポジティブかつそれなりの自信が垣間見えなければ、相手も心を動かされないでしょう。
「うまいこと言うね」「この手ならうまくいくかもしれない」「そうか、この手があったか」。プレゼン後に相手に心の中でこう思わせることができれば、そのプレゼンは成功と言えるでしょう。
心を動かす。そんなシチュエーションに際して、プレゼンターが心がけるべき「姿勢」とはどのようなものでしょうか。それは3つあります。
1つ目は、「熱意」です。
上に述べた通りで、あなたはその悩みの深さを理解し、同調し、その中で一生懸命考えてきましたという態度を持ってこそ、初めて相手の共感が得られます。
2つ目は、「プロフェッショナル性」です。
依頼主があなたやあなたの会社に頼んでくる理由の一つとして、自分たちにはないノウハウや経験で、悩みを解決してくれるかもしれないという期待があります。社内で誰かに何か頼まれるのも同じことでしょう。少しでもそれに応える部分や態度が示せると、あなたに対する相手の信用度が増します。
3つ目は、適度な「謙虚さ」です。
いくら自分たちがプロフェッショナルだとしても、常に上から目線で応対していては共感は得られません。お医者さんもそうですよね。患者の立場に立って親身に相談に乗り診療をすることで、患者は安心して診断を受け入れます。
Check it!: ・プレゼンは相手を勇気づけるスタンスで取り組む。 ・プレゼンターに必要なのは、「熱意」と「プロフェッショナル性」と「謙虚さ」の3つ。
〈プレゼンの勘所〉答えを肝心な場面まで見せない
POINT: プレゼン中は相手のワクワク感を維持せよ
企画書の要(かなめ)は「戦略」だと述べたように、相手の一番聞きたいところも戦略とそれに基づく「施策」でしょう。
そうなると、そこに辿り着くまでにいかに相手を飽きさせず盛り上げるかが プレゼンの一つのカギになります。
具体的には、現状分析から課題の設定に向けて徐々に読み解いていき、戦略に辿り着くわけですが、その途中で戦略が容易にバレてしまうとなるとプレゼンの効果は半減します。
ですので、プレゼン中は戦略の部分で使うキーワードなどを、その前の段階で決して見せないように工夫します。
よくある悪いケースですが、プレゼン直前の挨拶時に、上司自らいかに自分たちがよく考えてうまい提案に仕立て上げたかを話し、勢い余って聞き手に今回の根底になる考え方やキーワードを口を滑らせて言ってしまうことがあります。
そうなってしまっては、プレゼン時に再びその箇所を熱くしゃべっても、相手にインパクトを与えることはできません。
相手のワクワク感を維持するためのちょっとしたティップスは、肝心な場面 まで答えを見せないことです。
Checkit! ・戦略を早めにバラしてしまうと、相手はいざ戦略のところに来ても響かない。
〈プレゼンの勘所〉言葉のつなぎは非常に大事
POINT: 「接続詞」や「冒頭言葉・締め言葉」次第で説得力が増す
次に、プレゼンターが心がけるべき意外に大事なことをお伝えします。それは、「言葉のつなぎ方」です。
リボンフレームでつくった企画書の特徴は、企画書自体が大変ロジカルにきっちりつくられていることです。つまり極端な話、企画書を棒読みすれば、言いたいことは伝わるはずです。
しかし、プレゼンターの姿勢のところで「プロフェッショナル性」が必要と述べたように、いかにプロフェッショナルな雰囲気をまとわせるかが勝負になります。
その時、意外に大事なのが「つなぎ言葉」です。企画書の文章を、いかに適切な言葉でつなぎ、補強するかが重要なのです。
有効な「言葉のつなぎ」を加えることで説得力が俄然異なってきます。
例を挙げると、[街の本屋さんの再生]の「課題の考え方」のプレゼン原稿を以下のように補強しました。( )の部分が、新たに加えた補強の文章や接続詞です。
「今回の課題の考え方ですが、(売り上げ不振の)原因①、(すなわち、)本を買って読む人が減少は、いち本屋での解決は難しい(でしょう。)
(ならば、)もう一つの要因、(つまり、)ネットに流れているお客様を何とかすること(に課題を設定します。)
(何故なら、)他の本屋のように何らかの活動をやって存在感を増すことで、この本屋さんのかつてのファンを引き戻すことができれば、客離れを解消できる(可能性があるからです。)」
この中で、太字の部分は、企画書には書いてありません。それをプレゼンターが適切に付け足すことで話がスムーズに流れるのです。
また、同様に重要なのがプレゼンの「冒頭と締めの言葉」です。
例えば、「今回、御社の期待に応えるため我々の知恵を総動員して考えてまいりました」とか、「我々の提案によって御社の懸案の課題が解決できると確信しております」とかいう言葉です。
プレゼンターの態度として、「熱意」や「謙虚さ」が大事だと言いましたが、プレゼンの冒頭部と最後の締めの言葉を選ぶことで、このような態度が相手に伝わり、好感が持てるものとなるでしょう。
Check it!: ・「そこで」「何故なら」などの接続詞や接頭語(つなぎ言葉)がプロフェッショナルな雰囲気をつくる。 ・冒頭と締めの言葉も考えておく。
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