本記事は、高橋浩之氏の著書『スーツは経費で落ちますか? 税理士による<税知り本>、賢い節税・トクする申告』(合同フォレスト)の中から一部を抜粋・編集しています

大みそかに結婚。控除額は12分の1でも365分の1でもない

確定申告,扶養控除
(画像=PIXTA)

春。

ある村に羊飼いの男がいた。

くる日もくる日も同じことの繰り返し。男は飽き飽きしてしまい、ちょっといたずらをしたくなった。

男は、大声を上げた。「結婚するぞ!結婚するぞ!」

あいつもついに結婚か。やれ、相手は誰だ。やれ、新居はどこだ。披露宴だ、祝儀だ……。

大騒ぎする人々を見て男は大爆笑。ひとしきり爆笑した後、男は言った。

「景気が悪いから延期する」

秋。

味をしめた男は、ふたたび大声を上げた。

「結婚するぞ!おれの所得は900万円以下だ」「結婚するぞ!配偶者と一緒に暮らすぞ」「結婚するぞ!配偶者の給与年収は150万円以下だ」「結婚するぞ!配偶者に給与は支払わない」

男の言葉に、またもや人々は大騒ぎ。その様子に満足した男、遊びに来ていた外国のお友だちが帰るとこう言った。

「新しい判断で延期する」

冬。

大みそかが近づいてきた。男は顔色を変えて、大声を上げた。

「結婚するぞ!入籍だ!」

「事実婚じゃないぞ!」

けれどもみんなは知らんぷり。

「また延期するさ」

「オオカミ少年だな」

誰も男を信じなかったのである。

でも、今度は本当に結婚した。2度あることは、3度なかったのだ。

虚をつかれた村は大混乱。

そのさなか、男は一人静かに確定申告書の「配偶者(特別)控除欄」に、「38万円」と記載したのである。

ウソつき男は誰にも信用されないということだろうか。

いや、「配偶者38控除」に日割り、月割りという概念はない。重要なのは大みそか。このことを男の話は教えてくれる。


配偶者38控除の要件。

まずは、あなたの所得が900万円以下であることが前提です。そのうえで、

(1)法律的に結婚していること
(2)配偶者と同一生計であること
(3)配偶者の所得が決まった金額以下であること
(4)あなたが個人事業主の場合、配偶者に給与を支払っていないこと

これらの要件は、大みそかの時点での状況によります。大みそか── 12月31日──、唯一その日の状況、ピンポイントで判断するのです。

大みそかに結婚したから控除額は、365分の1だとか、12月に結婚したから12分の1という計算はしません。

つまり、配偶者の控除に日割り、月割りはない。

大みそかに要件を満たしていれば、結婚していた期間に関係なく── たとえ、大みそか間際に結婚しても── 1年分の控除(←こういう言い方は通常しませんが)が受けられるのです。

どうせ結婚するのなら、年明けよりも年内に結婚したほうがいい。そのほうが、配偶者の控除が1年早く(1回多く)受けられるから。

結婚するなら、年内に(*)。

(*)結婚するなら、年内に── 出会いがあれば、別れもある。念のために(?)別れるときのことも確認しておこう。あなたと配偶者が、春夏秋冬どんなに仲むつまじく過ごしていても、12月30日に離婚すると、その年あなたは配偶者の控除を受けられません。なぜなら、所得税の世界で重要な意味を持つ大みそかに結婚していないから。── 離婚するなら年明けに。

スーツは経費で落ちますか? 税理士による<税知り本>、賢い節税・トクする申告
高橋浩之(たかはし・ひろゆき)
税理士。1964年東京生まれ。高校卒業後トラックの運転手の職に就く。3年間のトラック運転手の後、税理士になるために専門学校へ。ところが──、誰でも入れるはずなのに、なぜか入学試験を受けてくれと。たったひとり。教員控室の端っこ。ひとりぼっちで受けた試験の問題は分数の計算。その場で合格、無事入学。1988年会計事務所就職。1990年税理士試験合格。合格科目:簿記論、財務諸表論、所得税法、法人税法、相続税法。1993年独立開業。東京都町田市で開業。ややこしい税金や会計のことをややこしくなく伝えられるよう、日々奮闘しつつ、現在に至る。

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