本記事は、高橋浩之氏の著書『スーツは経費で落ちますか? 税理士による<税知り本>、賢い節税・トクする申告』(合同フォレスト)の中から一部を抜粋・編集しています

スーツは経費で落ちますか? ダメなら、対応策を示しましょう──税の世界のモヤモヤ問題 対象 スーツを着て仕事をする個人事業主

スーツ
(画像=bee/PIXTA)

個人事業主の所得は、収入金額から必要経費を差し引いて計算します。

必要経費は、

・収入金額にかかる売上原価その他その収入金額を得るために直接要した費用
・販売費、一般管理費
・その他、所得を生ずべき業務について生じた費用

とされています。

さて、あなたがふだん仕事で着るスーツは必要経費──でOK?

●税の世界のモヤモヤ問題。それは、スーツ

スーツ──お笑い芸人が着る舞台用ではない一般的なもの──これは経費になるのでしょうか。

スーツは普通、仕事でしか着ません。

じゃあ、経費だよね。スーツをふだん着にするなんて、無理がある。そんなことしたら、あの人、オフでもスーツ着ているね、ケチなのね、とうわさになっちゃう。仕事でしか着ないものを経費にしちゃダメなんておかしいんじゃない?

こう考えるのは、至極まとも。

とはいえ、経費にならないという声も根強い。なぜなら、それは衣食住に関わるものだから。

衣食住には、誰もがお金を使います(当たり前)。

事業をしていても、していなくても、出ていくお金を経費で落とすとなるとそれなりの理由が必要です。それはわかる。でも、“仕事でしか着ないから”⬅これがそれなりの理由にならずして、ほかにどんな理由があるのか⁉

誰だって生きていくために食事はするけれど、仕事関係者との食事代が経費になることだってあります。

いろいろ考えると、夜も眠れなくなる。ハッキリとした答えが出せずにモヤモヤしてしまいます。

それでもいくつか対応策を考えてみましょうか。

〈対応策その1〉胸ポケットに屋号

スーツの胸ポケットに屋号を縫い込むという手があります。屋号が入っているんだから、仕事用だと言えます。と、こんな話をしたら、ある個人事業主曰く。

内ポケットでもいいんですかね?

内ポケット!それは名案!発想の転換とはまさにこのこと。スーツに屋号を縫い込んだという事実を残しつつ、表立っては見えない。つまり、スーツの胸ポケットに屋号などという、ちょっと気恥しいこと(?)にならなくてよろしい。まさに、一石二鳥!

もちろん、そういうわけにはいきません。それでは、会社員が内ポケットにネームを入れたのと同じですから。これで経費としてOKとはいかないのです。

やはり、縫い込む場所は胸ポケットに限ります。重要なのは、他人の目に触れること。

それができれば、経費への道は一歩も二歩も近づくはずです。

〈対応策その2〉スーツの背中一面に広告でどうだ!

胸ポケットじゃちょっと弱い。そんな慎重派のあなたは、いっそのこと広告にしたらどうでしょうか。

スーツの背中一面に広告を刺しゅう。お金はかかるけど、まあ、よろしい。スーツが経費になれば。これでどうだ!税務署だって文句はあるまい。

好奇の視線に耐える、その勇気があればですが……。

〈対応策その3〉プライベートの写真を撮っておく

税務調査で、スーツを経費にしていることが問題になった。税務署の人はダメだと言う。

経費にした人 スーツは仕事でしか着ないなんて当たり前じゃん。休みの日にスーツでショッピングセンターに行く人がいる?! ディズニーランドもスーツで行かないし。そうだ、証拠写真があるよ。ほら、見て。(ディズニーランドでの家族写真を見せる)ねっ? スーツじゃないでしょ?(内的独白:いや~、写真撮っておいてよかった~)

税務署の人 いや、そういうこと言ってるんじゃなくてですね……。たとえば、仕事が終わってプライベートで飲みに行くことありますよね? 取引先とじゃなくて。そのとき家に帰って着替えます? スーツのまま行くんじゃないですか?

経費にした人 いや、おれ、そんなときでも仕事のこと考えながら飲んでるもん。

〈対応策その4〉着替えればいいんだよ

要するに、状況に応じて着替えればいいってことです。

ということは──

私服で出勤して、仕事場でスーツに着替える。スーツで仕事をする。仕事が終わったら、スーツから私服に着替える。帰る。

では、自宅で仕事をする人は?

仕事の時間になったらスーツ姿になる。終わったら私服に着替える。くつろぐ(いや、でもこうなると、スーツを着る意味はありませんね)。

〈対応策その5〉2分の1でどうだ!

どれもこれも、決め手に欠ける。もう、いろいろあってよくわからない。

どっちがどっちって言えないなら、どう? 日本の伝統的な解決策で。つまり、間をとって2分の1。半分経費でどうだ!

* * *

以上は、個人事業主のお話。

どうでしょう? いい対応策は見つかりそうですか?

では、会社から給与の出る給与所得者の場合は?

そう思ったあなたは、給与所得者の特定支出を思い出してください。特定支出には「被服費」なるものがあります。まさに、スーツは被服費。スーツ代は給与所得者の特定支出*になるのです。

*スーツ代は給与所得者の特定支出──ただし、スーツが仕事で必要であることについて、会社から証明を受ける必要があります。

スーツは経費で落ちますか? 税理士による<税知り本>、賢い節税・トクする申告
高橋浩之(たかはし・ひろゆき)
税理士。1964年東京生まれ。高校卒業後トラックの運転手の職に就く。3年間のトラック運転手の後、税理士になるために専門学校へ。ところが──、誰でも入れるはずなのに、なぜか入学試験を受けてくれと。たったひとり。教員控室の端っこ。ひとりぼっちで受けた試験の問題は分数の計算。その場で合格、無事入学。1988年会計事務所就職。1990年税理士試験合格。合格科目:簿記論、財務諸表論、所得税法、法人税法、相続税法。1993年独立開業。東京都町田市で開業。ややこしい税金や会計のことをややこしくなく伝えられるよう、日々奮闘しつつ、現在に至る。

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