本記事は、高橋浩之氏の著書『スーツは経費で落ちますか? 税理士による<税知り本>、賢い節税・トクする申告』(合同フォレスト)の中から一部を抜粋・編集しています
なぜ、おじいさんは赤字になり、世界を制覇できなかったのか 20%の値引きで粗利3分の1の当たり前 対象 値引きを考えている社長
バナナを売るあなたを見ていた隣のおじいさん。
おじいさんのビジネスモデルもあなたと同じです。
「わしだって、世界を制覇したい」
そこで、考えた。
差別化のために、値引きはどうだ?
●20%値引きなら、粗利も20%減。これくらいならどうにかなる!
もし20%値引きしたら、粗利はいくらになるかな?
「20%値引きなら、粗利も20%少なくなるわけだ。日に3000円の粗利が八掛けで……。うん、そうだ、粗利は2400円(3000円×80%)だ。これくらいなら、大丈夫。ちょっと多く売れば取り返せる。
いやいや、ちょっとどころじゃないかも。2割引きだからな。倍くらい売れるかもしれない。売上30%アップで利益2倍だもん、倍売れたらどれくらい儲かっちゃうんだろう。いつ世界を制覇してもおかしくないわい。
よし、値引きに決めた!
ひとまず、いつもの10房から始めてみようか」
この考え、なんとなくいけるような気がします。
おじいさんは、20%値引きして、ひと房800円でバナナ10房を売り切りました。
ところが──。
●なんと、赤字になった!
「値引きをすると、売れ行きもいいのう。明日からは倍仕入れよう」
満足したおじいさんは、いつものように地元の親分にショバ代を届けに。地元の親分にショバ代を届けに。地元の親分にショバ……んっ?
ショバ代を届けられない!
バナナは、10房売ったので売上は8000円です。仕入れ代金は7000円なので、差し引き粗利1000円。
ショバ代は、日に2000円でした。それは変わりません。耳にタコかもしれませんけど、場所を貸しているだけの親分は、約束のショバ代が手に入ればOK。おじいさんがバナナをなん房売ろうと、いくら粗利を稼ごうと、一切関知しないのです。
でも、なぜ、たった20%の値引きでこうなっちゃったんでしょうか。粗利20%減で済むはずだったのに……。なにかの間違いだ……。
いやいや、間違いではありません。
ポイントは仕入れ代金です。よく考えると(よく考えなくても)仕入れ値は相変わらず10房で7000円。
仕入れ先は、おじいさんが値引きしているなんて知らないし、そもそも関係ない。仕入れ代金は、いつもどおりの7000円です。
7000円で仕入れたバナナを8000円で売るわけですから、粗利は1000円。
なんと、粗利が3000円➡1000円。2400円どころではありません。3分の1になっちゃいました! びっくり仰天です。20%値引きしただけなのに。
これじゃあ、3倍売らないと、もとの粗利と同じにならない。
以前なら10房売って、粗利3000円(1万円-7000円)でした。
値引きしたら、30房売って、粗利3000円(2万4000円-2万1000円)。
3倍売って、やっと粗利が一緒……。
もちろん、値引きが常に悪者というわけではありません。
値引きを呼び水にして、ほかの商品で儲けるということもあるでしょう。期限切れなどで、廃棄するしかない場合、「じゃあ、値引きして売ってしまおう」。こういうことだってなきにしもあらずです。
でも、もし、値引き癖なるものがあるとしたら。しなくてもいいのに、つい癖で値引きを提示してしまう。こんなことがあるとしたら。
値引きをすると、びっくりするほど粗利が少なくなることがわかりました。
なぜなら、仕入れ値は変わらないから。
「値引きのための値引き」にはご用心!
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