この記事は2021年年11月29日に「株式新聞」で公開された「<中原圭介の相場観>オミクロン株台頭も日経平均はボックス継続」を一部編集し、転載したものです。


株式チャートのイメージ
(TAKUMI-CG / PIXTA (ピクスタ))

目次

  1. 新型コロナは過去の教訓生かし
  2. 引き続き投機筋の先物売買主導か

南アフリカなどで確認された新型コロナウイルスの「オミクロン株」の台頭によって、世界的な株安の流れが止まらない。まだ情報が少なく、投資家の警戒感は高まりやすい状況に乗じた投機筋の売り崩しが成功した例と見受けられる。

新型コロナは過去の教訓生かし

マーケットは不確実性を極端に嫌う習性がある。そのため、多くの投資家がポジション調整に動いたことは致し方ない。しかし、今回は売り方の買い戻しも早く進むのではなかろうか。

その理由の1つが、素早い水際対策だ。過去の教訓があるせいか、米国や英国をはじめとする各国が渡航制限に踏み切り、日本でも岸田首相が、11月30日午前零時から全世界を対象にビジネス目的などの外国人の新規入国を停止する措置を取ることを明らかにした。

また、米メルク<MRK>製の新型コロナ経口薬の承認が進む方向にあり、米ファイザー<PFE>と独ビオンテックはオミクロン株を分析して、必要があれば新たなワクチンの供給を目指すという。今後はこの新たな変異株についての情報も増えてくることが予想される。

そのため、マーケットは早晩落ち着きを取り戻すと考えられる。また、今回のリスクを受けて、FRB(米連邦準備制度理事会)がテーパリング(量的金融緩和の段階的縮小)のペース加速を思いとどまるシナリオも浮かび上がる。

引き続き投機筋の先物売買主導か

ただし、日本株の上値は重いという従来の見方に変更はない。日経平均株価は中期的に2万7000~3万1000円(厳密には2万6954~3万795円)のボックス相場を継続する可能性が高い。このゾーンを上ブレするだけの期待材料が乏しい。「18歳以下への10万円給付」に代表される、岸田政権のばらまき型経済政策は海外投資家から支持を得ているとは言いがたい。

とはいえまったく希望がないわけではない。既存のデルタ株を中心に欧米や韓国で新型コロナの感染が広がる中で、日本は封じ込めに成功している。専門家が口をそろえて到来を予言する「第6波」を小さな規模にとどめられれば、今度こそ日本株の見直し買いの呼び水となるかもしれない。

ともあれ当面は投機筋の先物売買に振り回される展開が継続するとみられる。引き続き上下両方向への値動きを想定した機動的な投資スタンスが求められる。

アセットベストパートナーズ 中原圭介