本記事は、宮川淳哉氏の著書『中小企業のための人事評価の教科書 制度構築から運用まで』(総合法令出版)の中から一部を抜粋・編集しています
重大症状 期中でのフォロー・モニタリングがない
●期中フォローする仕組みが欠如している
部門課題、個人目標それぞれにおいて、計画策定にエネルギーと時間を注いだものの、期がスタートしてからは部門任せ、本人任せになってしまうことが多々あります。
スタートして1年間ほったらかしにした上で期末評価時のみに進捗や達成度を確認し、そのときに進捗が思わしくなかったとしたらそれまでの時間を浪費したことと同様ですし、その時間を取り戻すことはできません。
計画はあくまでも仮説であり、仮説を実行して想定どおりの効果が挙がっているか、つまり目標に近づいているかを確認し、想定どおりの効果が挙がっていないのならば行動の追加や修正をする必要があります。
仮説を実行して、想定どおり100%の効果が得られるということはほとんどありません。ほとんどの場合ズレやギャップが生じるわけですから、目標達成のための行動が「うまくいっていない」と卑下する必要もありません。淡々と前向きに軌道修正すればよいのです。
部門計画については、できれば毎月あるいは隔月程度で進捗フォローミーティング(部門長が参加し進捗報告・フィードバックをする場)を開催しましょう。フォローミーティングの目的は、確実な実行を促すと同時に、実行計画の進捗状況を確認・共有することです。また、組織としての実行力、原因分析力、問題解決力の向上および参加者全体のレベルの底上げ効果が目的です。
また、個人目標の期中のフォローは1カ月に1回は行うべきでしょう。
●効果的なフォローができていない
PDCAの「CA」をどのように行うのかの認識や基準が揃っているでしょうか?
部門計画・個人目標に共通しますが、フォローすべき「CA」とは何かの定義づけができていないケースが多々あります。
「結果を確認・評価し、次のP(計画)につなげる」という表現がよく見られますが、「活動報告」や「進捗・結果報告」という抽象的な見出しで報告してしまうと内容にもレベルにもバラつきが出ますので、次のようにフォローすべき視点を具体的に設定します。
1 当月に計画していた行動を実施したか、実施しなかったか 2 行動計画を実施した結果、期待どおりの効果が出たか、出なかったか 3 行動計画を実施しなかったならばその原因は何か、また期待どおりの効果が出なかったならばその原因は何か 4 次月以降の行動計画の修正や追加施策の検討、計画の削除は必要ないか(「何を」「いつまでに」と具体的に記入) 5 新たな課題の追加や課題の重要度の見直しは必要ないか
これらの視点ごとに思考し、記入しますので、当然ながら「活動報告」のような見出しで一つの記入欄にまとめるべきではなく、上のシート記入例のように視点ごとに記入欄を設けます。
この効果は「都合の悪い報告から逃げられなくなる」ことです。
一つの欄で自由な視点で報告をすると、どうしても都合の良い報告となってしまいます。たとえば、良い結果を大々的に報告し、未実行の内容があってもその記入・報告がなかったり、さらりと記入されているだけで終わっているケースです。
この5つの視点での進捗確認と効果検証については、実行者(記入者)のマネジメントレベルの確認の場となります。
同じフォーマット、同じ「発表→フィードバック」の形式だからこそ、人によるマネジメントレベルの巧拙が際立ってわかります。
個人目標の進捗確認シートは、計画策定と同じシートを活用します。
下の個人目標のシートは部門課題進捗確認シートと比べて見出しを簡素化しています。しかし、部門課題と同様のレベルで細かくチェックすることが可能ならば、それが望ましいです。
組織目標のPDCAと個人目標のPDCAをうまく連動させられるかどうかが肝であり、その巧拙が会社や部門の経営力・マネジメント力およびその結果である業績に直結します。
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