この記事は2022年3月2日に「ニッセイ基礎研究所」で公開された「なぜウクライナ侵攻を予想できなかったのか?-読み違えはロシア側にも-」を一部編集し、転載したものです。

要旨

ウクライナ侵攻,予想
(画像=PIXTA)
  1. 事前の注意喚起にもかかわらず、ロシアによるウクライナへの大規模な軍事侵攻を的確に予想できなかったのは、プーチン大統領のマインドセット(思考パターン)と資源と軍事力と経済力とのアンバランスが意味するところを読み違えていたからだ。

  2. 大規模軍事侵攻は合理的ではないが、プーチン大統領は自らの信念に従った。合理的か否かという見方にとらわれなければ、プーチン大統領のマインドセットは、過去の言動や、実際のロシアの動きによって、はっきりと示されていたことに気付く。目的は、ウクライナのNATO加盟阻止だけでなく、冷戦後形成された欧州の安全保障体制そのものを覆すことにあるように感じられるようになる。

  3. ロシアは資源が豊かで、軍事力やサイバー戦での能力は高いが、経済的には大国とはいえず、十分な豊かさも実現していない。経済力は大規模な軍事侵攻を制約すると考えたが、むしろ、経済力に比し強大な軍事力や、攻撃力に偏った国家のサーバー能力は、これらを行使することで国際秩序の変更を迫る選択をする動機となると見るべきだった。

  4. 大規模軍事侵攻を実行に移したプーチン大統領も、ウクライナの軍事力やロシア国内の反応、中国の姿勢、何よりも西側の結束力を読み違えていたことに気付き始めているかもしれない。戦時下で欧州の結束は強まっている。プーチン大統領が重い代償を払い、ウクライナの主権が尊重されるよう世界も動かなければならない。

ウクライナ侵攻
(画像=ニッセイ基礎研究所)