この記事は2022年3月8日に「ニッセイ基礎研究所」で公開された「データで見るコロナ禍の行動変容(3) ―― 食生活の変容~外食需要の中食シフト、さらに強まる手軽さ志向」を一部編集し、転載したものです。

要旨

食生活の変容
(画像=PIXTA)
  • コロナ禍で外食が控えられ、テイクアウトやデリバリーなどの中食利用が増え、外食需要の一部が中食シフトしている。コロナ前から共働きや単身世帯の増加で中食需要は拡大傾向にあったが、コロナ禍で中食に対応する飲食店が増え、消費者にとって一層、魅力が増している。ただし、特にデリバリーは若者の利用が多く、配達網に地域差があることなどから、2020年半ば頃から利用増加層は横ばいで推移している。

  • 年代別に見ると、外食控え傾向は高齢層ほど強いが、中食利用は若いほど積極的である。よって、外食需要の中食シフト傾向は若いほど強く、高齢層では他年代と比べて内食(自炊)へシフトしている。また、中食は小学生以下の子育てに手のかかる世帯のほか、フルタイム勤務の多い在宅勤務利用者を中心に需要が増している。

  • 総務省「家計調査」等にて食料の支出額を見ると、外食費は大幅に減る一方、パスタや冷凍調理食品、出前、生鮮肉、チーズ、出前などが増えており、家での食事機会が増えることで手軽に食事をしたい志向と質を高めたい志向が存在しているようだ。また、2021年は2020年より各種食材の支出額が減る一方、冷凍調理食品や出前などは増えており、手軽さを求める志向はより高まっている。

  • コロナ禍で食事を介したコミュニケーションの場が大幅に減っている。日本人の国民性なのか、感染状況が改善していても慎重な態度が根強い。各種会合が減った現状は、飲みニケーションを好まない若者や、夜開催の飲み会には参加しにくい子育て中の社員などからすれば、ほっとする部分もあるだろう。しかし、積極的に会いたい相手とすら制約が課される状況には、強い寂しさも感じるのではないか。

  • コロナ禍で食事のデリバリーもさることながら、ネットショッピングやオンライン会議など多くの場面で効率化が進展している。利便性は向上しているが、人間関係の潤滑油ともなる「余白時間」が失われている。Googleなどの取り組みで見られるように余白時間はイノベーションを生む原動力となる。先行き不透明な中で、余白時間を意識的に設けることは、事業経営の観点でも、一人の生活者としても希望を生む未来につながるのではないか。