この記事は2022年6月6日(月)配信されたメールマガジンの記事「岡三会田・田 アンダースロー(日本経済の新しい見方)『経団連21世紀研究所:中間層復活に向けた経済財政運営の大転換』」を一部編集し、転載したものです。
要旨
経団連の21世紀政策研究所の研究プロジェクトとして、「中間層復活に向けた経済財政運営の大転換」の報告書をまとめました。これまでの緊縮財政によって中間層が没落した問題を論じています。そして、中間層の復活には、緊縮財政から積極財政に大転換する必要があることを主張しています。
報告書の全文は下記のリンクにあります。1年近くわたり、研究委員が深く議論を重ねた自信作です。新しい資本主義が積極財政で起動するマクロ・ロジックもまとめてあります。就職氷河期後に社会人となった研究委員が集まり、既存の財政再建論とは違った、新しい経済財政運営の方法を提言しました。
問題意識および本研究会の目的
1990年代初頭のバブル崩壊とそれに続く金融危機以降、わが国経済は長きにわたり低迷している。
経済を成長軌道に戻すべく、政府の内外において幾度となく成長戦略が取りまとめられ、それらに基づいて経済財政運営を行ってきたが、経済成長率は他の先進国と比較しても大きく見劣りしている。特に賃金がほとんど伸びていないことから、中間層の衰退が著しく、かつての「一億総中流社会」からは程遠い状況となっている。
これまで取りまとめられてきた成長戦略は、いわゆるサプライサイドを重視するものであった。2001年の小泉政権が掲げた「聖域なき構造改革」がその最たるものであり、公共サービスの民営化によって、民間活力の発揮を目指したほか、生産性の向上や新たな需要創出を企図して、規制改革・緩和を進めてきた。
こうした政策の理論的根拠として成長会計に基づく分析があり、サプライサイドの構造改革を推し進めることで、全要素生産性が高まり、経済全体も成長するとの道筋を描いてきた。しかし、度重なる成長戦略の取りまとめと、その実行、およびその工程管理を行ってきたが、長期低迷から抜け出せない状況が続いている。
長期低迷から脱し、経済を成長させ、国民生活を向上させていくためには、従来型の思考や学説にとらわれず、抜本的な検討をしなければならないのではないか。こうした問題意識から、経済構造研究会を立ち上げ、検討を進めてきた。本書はこれまでの検討成果をまとめたものである。
「中間層復活に向けた経済財政運営の大転換」報告書
http://www.21ppi.org/pdf/thesis/220602.pdf
研究委員一覧
研究主幹
永濱利廣 第一生命経済研究所 経済調査部 首席エコノミスト
研究委員(順不同)
会田卓司 岡三証券 チーフエコノミスト
青木大樹 UBS SuMi TRUST ウェルス・マネジメント日本地域最高投資責任者 兼 日本経済チーフエコノミスト
飯田泰之 明治大学政治経済学部 教授
星野卓也 第一生命経済研究所 経済調査部 主任エコノミスト
鈴木章弘 21世紀政策研究所 研究員
21世紀政策研究所
http://www.21ppi.org/
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