この記事は、2022年8月1日に三菱UFJ国際投信で公開された投資環境ウィークリーを一部編集し、転載したものです。全体をご覧になりたい方は、こちらをご覧ください。加えて、デイリーレポートについては、mattoco lifeをご覧ください。

企業決算
(画像=oben901/stock.adobe.com)

目次

  1. 生産は中国都市封鎖解除で急回復
  2. 消費はコロナ動向やマインド悪化が懸念
  3. 急速なドル安円高が株価の重石

生産は中国都市封鎖解除で急回復

2022年6月の鉱工業生産は前月比+8.9%(2022年5月:▲7.5%)と3カ月ぶりに増加しました(図1)。

先行きの生産は強気な見通しが示される
(画像=三菱UFJ国際投信)

2022年6月以降は中国都市封鎖解除を受けて国内生産活動が回復し、経済産業省の基調判断は「一進一退」に上方修正されました。

業種別では自動車工業や電気・情報通信機械工業、電子部品・デバイス工業など15業種中11業種が増加し、部品供給緩和に伴う自動車関連の回復や旺盛な半導体需要等が確認されました。

先行きは製造工業生産予測調査によると2022年7月が同+3.8%(補正値:▲0.9%)、2022年8月が同+6.0%と生産の回復基調が続く見込みです。自動車や資本財関連業種は強気な見通しを示しています。

企業見通しの強さは底堅い需要を反映しているものの、海外経済減速や供給制約、中国のゼロコロナ政策の行方など下押しリスクも残存し、回復ペースが緩やかに留まる可能性に注意が必要です。

消費はコロナ動向やマインド悪化が懸念

2022年6月小売販売額(季節調整値)は前月比▲1.4%と4カ月ぶりに減少しました(図2)。

6月小売販売額は4ヵ月ぶりに減少
(画像=三菱UFJ国際投信)

業種別では織物・衣服・身の回り品小売業や飲食料品小売業、各種商品小売業が弱含み、2022年3月下旬の行動制限解除後に回復が続いた反動とみられます。ただし、2022年4~6月平均は前期比+1.8%と堅調に推移し、経済活動の正常化で個人消費は持ち直しました。

他方、2022年7月消費者態度指数は30.2(2022年6月:32.1)と2カ月連続で低下し、内閣府の基調判断は「弱含んでいる」に下方修正されました。内訳をみると暮らし向き(28.4)や耐久消費財の買い時判断(23.6)が低水準にあり、物価上昇や新型コロナ感染再拡大、供給制約に伴う流通量不足等が背景とみられます。

消費者心理の悪化に加えてオミクロン変異株(BA.5)感染拡大も深刻な中、先行きの消費回復ペースが鈍化する可能性がありそうです。

急速なドル安円高が株価の重石

先週の日経平均株価は前週比0.4%下落しました。世界的な経済減速への懸念が燻る中、米国の大幅利上げで米経済減速等を意識したドル安円高が進んだ影響も株価の重石となりました。

他方、2022年4~6月期の企業決算ではTOPIX構成企業の3割程度が公表を終え、全銘柄ベースの1株当たり利益(EPS)は前年比+6.5%(予想比+21.7%)と増益を保っています(図3)。

決算は業種で明暗分かれるも、企業全体では増益
(画像=三菱UFJ国際投信)

業種別ではまちまちな結果となるも、ロシアのウクライナ侵攻で原材料高騰に拍車がかかる中でも企業による価格転嫁の動きや円安進行に伴う収益押し上げ効果が企業業績を下支えた模様です。先行きのマクロ環境は不透明さ残るも、堅調な企業業績を背景に底堅い展開が続くとみます。

三菱UFJ国際投信株式会社
戦略運用部 経済調査室 エコノミスト
田村 史弥