この記事は2022年8月29日に「ニッセイ基礎研究所」で公開された「米個人所得・消費支出(22年7月)-PCE価格指数(前月比)は20年4月以来のマイナス、市場予想(横這い)を下回る」を一部編集し、転載したものです。

米個人所得・消費支出
(画像=Fauzi/stock.adobe.com)

目次

  1. 結果の概要:個人所得、個人消費ともに市場予想を下回る
  2. 結果の評価:個人所得、消費ともに伸びは大幅に鈍化
  3. 所得動向:全体の伸びは鈍化も、賃金・給与の堅調な伸びが持続
  4. 消費動向:ガソリン消費が大幅に減少
  5. 価格指数:エネルギー(前月比)が20年4月以来のマイナス幅

結果の概要:個人所得、個人消費ともに市場予想を下回る

8月26日、米商務省の経済分析局(BEA)は7月の個人所得・消費支出統計を公表した。個人所得(名目値)は前月比+0.2%(前月改定値:+0.7%)と+0.6%から小幅上方修正された前月から低下、市場予想(Bloomberg集計の中央値、以下同様)の+0.6%も下回った(図表1)。

米個人所得・消費支出
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個人消費支出は前月比+0.1%(前月改定値:+1.0%)とこちらは+1.1%から小幅下方修正された前月から低下、市場予想の+0.5%も下回った。また、価格変動の影響を除いた実質個人消費支出(前月比)は+0.2%(前月改定値:横這い)と+0.1%から小幅下方修正された前月から上昇したものの、市場の+0.4%を下回った(図表5)。貯蓄率(*1)は5.0%(前月:5.0%)と前月から横這い、09年8月(4.9%)以来の水準を維持した。

価格指数は、総合指数が前月比▲0.1%(前月:+1.0%)と20年4月(▲0.5%)以来のマイナスに転じたほか、市場予想(横這い)も下回った。変動の大きい食料品・エネルギーを除いたコア指数は前月比+0.1%(前月:+0.6%)とこちらも前月から低下し、市場予想(+0.2%)も下回った(図表6)。前年同月比は総合指数が+6.3%(前月:+6.8%)と前月、市場予想(+6.4%)を下回った。コア指数は+4.6%(前月:+4.8%)とこちらも前月、市場予想(+4.7%)を下回った(図表7)。


*1: 可処分所得に対する貯蓄(可処分所得-個人支出)の比率。


結果の評価:個人所得、消費ともに伸びは大幅に鈍化

個人消費(前月比)は名目ベースで6月の+1.0%から大幅に伸びが鈍化した(図表1)。後述するようにガソリン消費が▲10.1%となったことが響いており、足元でガソリン価格は低下しているものの、これまでのガソリン高が消費の重石となっている可能性が高いとみられる。

また、個人所得も前月の+0.7%から大幅に伸びが鈍化した。労働需給の逼迫を背景に賃金・給与が+0.8%と堅調を維持したものの、自営業者所得などの減少が響いた。これらの結果、貯蓄率は前月から横這いとなったものの、09年以来の水準に低下しており、家計はインフレ上昇に伴う実質購買力の低下を補うために貯蓄を取り崩して消費している姿が続いていることを示した。

一方、FRBが物価指標としているPCE価格指数は総合指数が前月比▲0.1%とマイナスに転じたほか、前年同月比も前月から低下した。また、物価の基調を示すコア指数も前月比+0.1%と20年11月(横這い)以来の水準に低下したほか、前年同月比でも前月から低下しており、7月は物価上昇圧力が緩和したことを示す結果となった。今後も物価上昇圧力の緩和が続くか注目される。

所得動向:全体の伸びは鈍化も、賃金・給与の堅調な伸びが持続

7月の個人所得(前月比)は、労働需給の逼迫を背景に賃金・給与が+0.8%(前月:+0.6%)と前月から小幅に加速するなど、堅調な伸びを維持した(図表2)。一方、利息配当収入が+0.2%(前月:+0.6%)と前月から伸びが鈍化したほか、自営業者所得が▲1.4%(前月:+1.1%)、移転所得も▲0.4%(前月:+0.5%)とマイナスに転じた。

個人所得から税負担などを除いた可処分所得(前月比)は、7月の名目が+0.2%(前月:+0.7%)と前月から伸びが鈍化した(図表3)。一方、価格変動の影響を除いた実質ベースは物価が落ち着いたこともあって+0.3%(前月:▲0.2%)とこちらは3ヵ月ぶりにプラスに転じた(図表3)。

米個人所得・消費支出
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消費動向:ガソリン消費が大幅に減少

7月の名目個人消費(前月比)は、財消費が▲0.2%(前月:+1.5%)と前月の大幅なプラスからマイナス転じた(図表4)。サービス消費は+0.3%(前月:+0.7%)と前月から伸びが鈍化した。

財消費は、耐久財が+1.3%(前月:+1.4%)と堅調な伸びを維持した一方、非耐久財が▲1.0%(前月:+1.6%)と大幅なマイナスに転じて全体を押し下げた。

耐久財では、自動車・自動車部品が+1.2%(前月:+2.1%)と前月から伸びは鈍化したものの、堅調を維持したほか、家具・家電が+1.5%(前月:+0.4%)、娯楽財・スポーツカーが+1.6%(前月:+1.1%)といずれも前月から伸びが加速した。

非耐久財では、衣料・靴が+0.9%(前月:▲横這い)と前月からプラスに転じた一方、食料・飲料が+0.3%(前月:+0.6%)と前月から伸びが鈍化したほか、ガソリン・エネルギーが▲10.1%(前月:+8.2%)と20年4月(▲36.1%)以来の大幅な落ち込みとなり、非耐久財消費を押し下げた。

サービス消費は、住宅・公共料金が+0.8%(前月+0.8%)と前月並みの堅調な伸びを維持した一方、娯楽が+0.3%(前月:+0.5%)、外食・宿泊が+0.1%(前月:+0.8%)、医療サービスが+0.1%(前月:+1.1%)と前月から伸びが鈍化したほか、輸送サービスが▲0.1%(前月:+2.1%)とマイナスに転じた。さらに、金融サービスが▲1.6%(前月:▲1.0%)とマイナス幅が拡大した。

米個人所得・消費支出
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価格指数:エネルギー(前月比)が20年4月以来のマイナス幅

価格指数(前月比)の内訳をみると、エネルギー価格指数が▲4.8%(前月:+7.5%)と前月からマイナスに転じたほか、20年4月(▲9.1%)以来のマイナス幅となり、総合指数を押し下げた(図表6)。一方、食料品価格指数は+1.3%(前月:+1.0%)と、こちらは18ヵ月連続のプラスとなったほか、前月から伸びが加速しており、食料品価格の上昇には歯止めがかかっていない。

前年同月比は、エネルギー価格指数が+34.4%(前月:+43.5%)と17ヵ月連続で2桁の上昇となったものの、前月からは大幅に伸びが鈍化した(図表7)。食料品価格指数は+11.9%(前月:+11.2%)と61ヵ月連続のプラスとなったほか、こちらは79年3月(+12.1%)以来の高い伸びとなった。

米個人所得・消費支出
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窪谷 浩(くぼたに ひろし)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 主任研究員

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