近年、オルタナティブ投資に注目する機関投資家や個人投資家が増えている。ウクライナ危機やパンデミックの影響もあり市場のボラティリティが高まっているなか、伝統的な投資とは異なるリスク・リターン特性を持つオルタナティブ投資を活用して、投資ポートフォリオを分散することで、長期的な投資目標達成を目指す狙いだ。
こうしたなかで、「オルタナティブ投資の民主化」を推し進めるのが、オルタナティブ投資のデジタルプラットフォームを提供するLUCA。従来であればオルタナティブ投資にアクセスできなかった、中小機関投資家や個人投資家への機会創出を目的として立ち上げられたプラットフォームだ。
なぜ同社は今、オルタナティブ投資のプラットフォームを開設するのか。また、オルタナティブ投資の国内市場の現状にどのような課題感を持ち、どういった未来を描いているのか。LUCAのオルタナティブ投資市場への見解や事業戦略を通じて、国内で広がっているオルタナティブ投資という新潮流に迫る。
LUCA設立の狙い
―― 個人投資家にオルタナティブ投資への機会を創出することがLUCA設立の狙いかと思われますが、なぜ今、個人向けオルタナティブ投資に着目されたのですか。
個人的に、オルタナティブ投資は安定した投資ポートフォリオ形成の上で必要なピースだという意識を持ったことが発端です。私は2003年からヘッジファンドをはじめとするオルタナティブ投資事業に従事し始めました。ヘッジファンドの大前提は絶対収益、つまり資産を減らさないということ。伝統的な投資対象である上場株や債券などの価値は、マーケットの価値が下がれば連動して下がりますが、長期的な資産形成を行うとき、まずは資産を減らさないという原則からスタートすべきです。そこからオルタナティブ投資の重要性を意識し始めました。
オルタナティブ投資にはヘッジファンドのみならず、プライベート・エクイティ(PE)やベンチャー・キャピタル(VC)のような未上場株を対象とするものもあれば、不動産やインフラといった、いわゆる実物資産と言われるものなど、多様なアセットクラスがあります。
特定の境界線があるわけではなく、総じて「オルタナティブ」と呼ぶわけですが、いずれにしてもオルタナティブ投資の1つの大きなポイントはマーケットとの相関が低いこと。この点が下支えとなり、オルタナティブ投資を組み込むことによって中長期的に投資ポートフォリオが安定するのが重要な点だと考えています。
―― マーケットとの相関が低い点が非常に重要なポイントということですね。
はい。国内の状況を見ると、機関投資家へのオルタナティブ投資の浸透はここ10年ほどでかなり進んでいます。国内最大規模の機関投資家である年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は2017年度以降、積極的にオルタナティブ資産運用を行い、2022年3月末時点で(オルタナティブ資産全体の)時価総額は2兆1,586億円となっています。
しかし、個人投資家向けのオルタナティブ投資ではこれまで、投資機会が非常に限られていました。現在、個人投資家がアクセスできる投資商品には大きく、「公募投信」「株/債券」「ETF」、そして「個別未上場株」「実物不動産」などがあります。
このうち、ETFまでの3つの資産クラスはマーケットとの連動性が強く、(マーケットの)ボラティリティの影響が大きいのが大前提です。また、個別未上場株や不動産のようなアセットのパフォーマンスに関しては、個別要因が非常に大きいといえます。つまり、こうした資産クラスではプロの目利きが重要となり、個人で投資判断を行うこと自体にそれなりのリスクがあります。
そう考えると、マーケットの状況に左右されず、中長期的に安定したポートフォリオを構築することは、個人投資家にとって極めて難しいのが現状でしょう。「夜に安心して眠れるポートフォリオ」と私たちは形容しますが、この状態を実現する投資商品をきちんと届けるべきだという考えが、私たちの事業の出発点です。