この記事は2022年10月21日に「きんざいOnline:週刊金融財政事情」で公開された「政府の後押しで急拡大する中国の「新エネルギー車」市場」を一部編集し、転載したものです。


政府の後押しで急拡大する中国の「新エネルギー車」市場
(画像=snvv/stock.adobe.com)

2021年以降、中国の自動車市場においてNEV(新エネルギー車)の販売が急伸している(注)。2022年1~9月期の中国のNEVの販売台数は前年同期の2.1倍の457万台に膨らみ、同期の新車販売台数に占めるNEVの比率は24%となった(図表)。

NEVの販売台数を企業別に見ると、上位10社のうち6社が中国の民間自動車企業となっており、中国民間企業の躍進が目立つ。

中国では、自国の自動車企業の競争力が弱いことが産業政策上の長年の課題となっていた。この点、NEVなら、技術蓄積が求められる複雑な機械部品で構成される内燃機関を搭載する必要がない。

加えて中国の電子産業などで培ってきたバッテリー技術が活用でき、競争優位性を得やすい。そのため、2012年からスタートした習近平体制下では、中国国内でのNEV産業の育成に本格的に取り組んできた。

こうした中で、コロナ禍を起因とする半導体などの部品不足により、外資系企業が得意とする高級車を中心にエンジン車やハイブリッド車の供給が滞った。それに対して中国企業が製造するNEVは、部品の現地調達比率が高い分、供給制約の影響が少なく、販売への影響を相対的に小さく抑えることができた。

原油価格の高騰を背景にガソリン価格が高止まりする一方で、NEVのエネルギーである電気料金が政府により安い水準に抑えられたことも、NEV購入のニーズを高める要因となった。

中国政府は、2030年までに新車販売に占めるNEVの比率を40%程度にする目標を掲げており、今後もNEV産業の発展を後押しする姿勢を強めている。

こうしたなか、業界ではEV最大手の比亜迪汽車(BYD)など、経営資源をNEV事業に集中する中国の民間自動車企業が相次いでいる。中国のNEVには、バッテリーの発火事故が発生するなど、品質面の問題や充電スタンド不足といった課題も残されている。

だが今後、企業はNEVの安全性の向上に取り組み、政府もインフラ整備に注力するだろう。中国のNEVの2022年末の販売台数は700万台に達する可能性が高く、その勢いは2023年も続くと予想される。

政府の後押しで急拡大する中国の「新エネルギー車」市場
(画像=きんざいOnline)

浜銀総合研究所 調査部 主任研究員/白 鳳翔
週刊金融財政事情 2022年10月25日号