ここまで読んでNMNにがぜん興味をもち、体内のNMN量を増やす方法を知りたくなった方もいるのではないでしょうか。NMNは枝豆、ブロッコリー、アボカド、トマトなどに含まれていますが、残念ながら、NADの濃度が回復するほどの量は通常の食事では摂取できません。そこで現在、NMN配合のサプリメントが次々に開発・販売されています。
先述のように、サーチュイン遺伝子にはテロメアの短縮を防ぐはたらきもあります。つまり、NMN配合のサプリメントを飲めば、サーチュイン遺伝子、テロメアそれぞれを同時に、〝寿命延伸モード〟に人為的に切り替えられる可能性があるわけです。これは非常に魅力的な話ですが、問題点がないわけでもありません。
まず、現在出まわっているNMN配合サプリメントは高価なものが多く、飲みつづけるにはそれなりの費用がかかります。一部、安価なものもありますが、NMNの配合量が少ない商品もあるようです。さらにヒトへの投与の安全性が確認されたとはいうものの、前述の研究で被験者がNMNを投与された期間は3~4年ほど。長期的に摂取した場合の安全性については、現時点では不明です。そもそも、サーチュイン遺伝子を人為的にオンにするリスクについても、まだはっきりとはわかっていません。
そしてもう1点、ヒトへの投与において、インスリンの感受性が上昇することは確認されたものの、マウスで見られたような抗老化効果は認められていない点も忘れるべきではないでしょう。「NMN配合のサプリメントを飲めば若返る」「NMN配合のサプリメントを服用すれば寿命が延びる」とは、いまの段階ではいえないのです。
とはいえ、サーチュイン遺伝子は研究がさかんな分野です。近い将来、サーチュイン遺伝子をオンにしてテロメアの短縮を防ぐ、夢のような方法が開発されるかもしれません。今後の展開に要注目です。
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