本記事は、やまもとりゅうけん氏の著書『金持ちフリーランス 貧乏サラリーマン』(KADOKAWA)の中から一部を抜粋・編集しています。
「サラリーマンのメリット」とは何か
私は、サラリーマンという働き方について「期待値の低い過当競争」だと考えています。
強いライバルがたくさんいて、順調にキャリアを積んで経営を担えるまで出世するのが難しい上に、その難しさに見合うリターンを得られないからです。
誤解のないようにお伝えしておきますが、私は決して「サラリーマンなんて働き方はクソだ。今すぐ会社を辞めろ」と言いたいわけではありません。私自身もかつてサラリーマンとして働いていた経験がありますから、サラリーマンはサラリーマンで、多くのメリットを享受できることも心得ています。
何といっても、「会社の看板をフルに使える」のは大きい。日本人にはまだまだサラリーマン信仰が根強く残っていますから、「会社に勤めている」というだけである程度の信頼を得ることができます。加えて、出世して決裁権を持ち、会社のお金と人材を動かせるだけの力を持てば、その力を頼りたい人が集まり、人脈が無限に広がっていきます。その人脈は、サラリーマンとしてさらに大きな仕事をし、さらに出世してお金を稼ぐにしても、独立して新たなビジネスを始めるにしても、大きな味方となってくれるでしょう。
また、日本のサラリーマンは労働基準法でガチガチに守られていますから、犯罪でも起こさない限り、どんなに仕事ができなくてもクビにはなりません。つまり、会社で頑張る気のない、言われたことを言われた分だけやり、「あいつは仕事ができない」と陰口を叩かれてもまったく気にしない、会社にぶら下がる気満々の人にとっては、サラリーマンという働き方はパラダイスなわけです。
「メリット」を享受できるのはごく一部の人間のみ
ただ、これらのメリットをフルに享受できるのは、決裁権を持っていて会社のお金や人材を動かせるような「超上位層のサラリーマン」か、ただ会社にぶら下がるだけ仕事を頑張る気のない「超下位層のサラリーマン」のどちらかです。世の中の大多数である「仕事のできる中堅サラリーマン」は、「サラリーマンであること」による大きなメリットを得ることなく、「超下位層のサラリーマン」の働きの悪さをカバーしながら、抑えられた給与で働き続けているのです。
世の中の大多数のサラリーマンは、さまざまな理不尽を呑み込んで「サラリーマン」として頑張っているのに、「サラリーマン」であることのメリットを十分に享受できていない。悲しいことですが、事実です。
あなたは今、この本を読んでいるわけですから、人並み以上の向上心を持っています。「超下位層のサラリーマン」ということはないでしょう。きっと「仕事のできる「中堅サラリーマン」なのだろうと想像します。
ならば「サラリーマンのメリット」を享受するには「超上位層のサラリーマン」を目指すしかないのですが、これがなかなかに厳しい道程です。
私が新卒で就職した会社は、社員が2,000人いました。その中で、決裁権を持ち会社のお金や人材を動かせるサラリーマンはごく一部です。
なにせ単純に、ライバルの数が多い。勝ち上がって出世するのは至難の業です。
その上、仮に同期との競争に勝ったところで、先輩たちも多くいますから「上が詰まっていてポストが空かない」なんてことも起こりえます。
激しい競争に勝っても、「サラリーマンのメリット」を得られるとは限らない。まさに「期待値の低い過当競争」でしょう。
「サラリーマンは安定している」は勘違い
「サラリーマンは安定している。それだけでも大きなメリットだ」
そう考える人もいるかもしれません。
しかし本当に、サラリーマンは安定しているのでしょうか。
サラリーマンの平均給与は、1998年度は465万円だったのですが、2008年度には430万円にまで下降。2018年度は441万円にまで回復したとはいえ、20年前から比べれば「緩やかに下がっている」と言わざるを得ません。
「安定している」と言えば確かに「安定している」のですが、平均給与の実態は「安定しつつ、緩やかに下がっている」のです。
給与水準に関していえば、サラリーマンでいる限りは、緩やかな下りのエスカレーターに乗り続けているようなものです。主要先進国の中でこのように平均給与が上昇していないのは日本だけです。
給与だけではありません。家賃補助や家族手当といった「サラリーマン特有」の福利厚生も、どんどんカットされ続けています。これから劇的に復活することはそうそうないでしょう。
極めつけは、2020年に起こったコロナショックです。
コロナショックは飲食業界や旅行業界を中心に、日本全国の企業に大打撃を与えました。
とくに旅行業界では、「給与が手取り10万円にまで落ち込んだ」なんていう事例はザラです。いかに「日本のサラリーマンは労働基準法で守られている」とはいえ、会社がつぶれるか否かの瀬戸際に立たされるような、想像を絶する緊急事態が起こった場合、サラリーマンはやはり、大きなあおりを食うのです。
この働き方のどこが「安定している」のでしょうか。
働きに見合わない、不当に安い給与で働かされ、やる気のない「超下位層のサラリーマン」の面倒を見つつマイナスを補って頑張ってきたのに、緊急事態に直面したら給与をあっさり下げられる。あまりにも理不尽すぎではないでしょうか。
今こそ、何の疑問もなく選んできた「サラリーマン」という働き方を見つめ直し、お金についてシビアに考え、「新たな働き方」を考えるときにきているのです。
かつて、あなたと同じように会社に搾取されていた「仕事のできる中堅サラリーマン」であり、今はフリーランスとして「人生逃げ切り」(=経済的な不安を限りなくゼロに近づけるとともに、面倒な人間関係や誰かに決められた場所・時間に縛られない状態)を勝ち取った私は、そう考えます。