本記事は、司拓也氏の著書『自分を守るためにちょっとだけ言い返せるようになる本』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

発言
Tamani Chithambo / peopleimages.com / stock.adobe.com

相手の迫力に負けない「圧のある声」を作る「簡単腹式発声法」

力強い大きな声を出すには、横隔膜を使って息を吐き切ることが必要です。

しかし小さい声で話すことに慣れ切ってしまっている方は、横隔膜の動きが鈍化して使えない状態になっています。

「腹ポコ運動」は横隔膜を強制的に刺激し、腹式発声が簡単にできるようになる運動です。出したい音量を自由自在にコントロールできるようになります。

  1. 片手で握りこぶしを軽く握り、口の少し下に置きます。
  2. 鼻から息を吸い、1の手で作った穴の中に、勢いよく口から息をフッ! と5回吐き出します。
  3. 「フッ」1回につき1秒ほどのペースで、「フッ! フッ! フッ! フッ! フーーー!」を1セットでおこないます。
  4. 息を吐く時に、横隔膜まわりの筋肉(みぞおち辺り)が前に押されていることを確認してください。
  5. 風船を膨らませる要領で、3セット繰り返してください。実際に風船を使ってもOKです。
自分を守るためにちょっとだけ言い返せるようになる本
『自分を守るためにちょっとだけ言い返せるようになる本』より引用

・心身の健康をもたらす腹式発声法

腹式発声法でのボイトレは心身を健康に導いてくれます。

実際に、レッスンを受講された方からも「風邪を引きにくくなった」「鬱の症状が楽になった」「イライラが減った」という報告を頂いています。

秘密は自律神経です。

自律神経は、血流をコントロールする役割を担っています。血流が良くなると、免疫力がアップし、身体の調子が整います。

自律神経は、「交感神経」と「副交感神経」に分けられます。

交感神経は、血管を収縮させ、血圧を上げる働きをもっていますが、交感神経が優位になりすぎると、緊張や興奮状態を導きます。副交感神経は、血管を緩ませ、血圧を低下させる働きをもっており、副交感神経が優位に働くとリラックス状態を導きます。

自律神経は、交感神経と副交感神経のバランスが大切です。

特に攻撃を受けやすい人は、緊張、不安、怒りなどストレスフルな環境の中で、交感神経優位の生活を送っていて、副交感神経のレベルが下がっている方が非常に多いのです。

そんな状態ではリラックスできず、ドギマギしたビビリの状態で過ごすことになります。

ボイトレは、腹式での発声を繰り返しおこなうことで、副交感神経を優位に働かせることができます。

交感神経の暴走を抑え、自律神経のバランスを整えてくれるのです。

自律神経が整った状態というのは、焦りや不安のレベルが下がって、心に落ち着きがある状態です。

いわゆる腹が座った状態を作ることができるのです。

そしてこの状態で発せられた声は、不安やビビリを感じさせない「腹が座った威圧感を感じさせる響きのある声」になるので、無用な攻撃を受けることが少なくなります。

心を閉じる、あきらめると声の機能は退化する

もともと自分の声や話し方にコンプレックスがある人は、他人に何かを伝える時、毎回とても不安になってしまいがちです。

相手が信用できる人であったとしても、「否定されるのではないか」と考えると、怖くて話せなくなってしまうことがあります。

そうなると、話すことがおっくうになり、自分から口を開くことがなくなってしまいます。なかには、話すことが怖くなってしまい、黙りこんでしまう人もいます。

・声の機能は放置すると退化する

実は日常的に声を出していないと、声の機能はどんどん退化します。

機能が退化すれば、当然、声を出す時に以前よりも苦労することになります。

さらに相手からの攻撃がきつくて、心を閉じてあきらめモードになると、ますます話さなくなり、どんどん声を出すという機能が退化していきます。

大切なのは、この悪循環の流れを断つこと。

そのためにも、まずは少しだけ、声を出してみる。ほんの少しでもいいので、「伝える」という行為を続けてみると、人と接することの恐怖感や苦手意識は弱まります。

他人に緊張が伝わらない「声」や「話し方」の習得法を解説していますが、一方で、忘れてはならないのが「心」のもち方です。

多くの場合は、声や話し方だけに問題があるというよりは、「自分に自信がない」という意識が大きく影響しています。

極端な話ですが、自分に自信がある人は、誰に習うわけではなくても、声も大きくて、話し方も堂々としていることが多いです。

とはいえ、いきなり「自分に自信をもて!」と言われても、多くの人は困ってしまうでしょう。なぜなら、自分の性格や意識は一朝一夕で変えられるものではないからです。

でも、声や話し方を変えることで、「自分に自信があるように見せかけること」は可能です。仮に、内心はドキドキしていたとしても、声が堂々としていれば、あなたの緊張は悟られることはありません。

また、仮に、緊張で死んでしまいそうになっていたとしても、話し方が自信に満ち溢れていれば、あなた自身も「自信がある人」だと思われる可能性が非常に高いのです。

緊張しやすくて、人と話すのが苦手。自分の意見に自信がもてない。他人の気持ちの動きに敏感で、すぐに遠慮してしまう。

そういう繊細な人のためにこそ、「ポーカーボイス」は存在します。

自分の内面を変えようとするのではなく、一言でもいいから声を出して、自分の意見を他人に伝えられるようにする。

そこから、「自分の意見を伝えられた」という自信が生まれ、話すことへの苦手意識は緩和されていきます。

自分を守るためにちょっとだけ言い返せるようになる本
司拓也
ボイスメンタルトレーナー。声と話し方の学校「ボイス・オブ・フロンティア」代表。日本話す声プロボイストレーナー協会代表。
一般の方から、上場企業のエグゼクティブ、トップ俳優、声優、アナウンサー、議員、就活生など1万人以上の声と話し方の悩みを解決。メルマガの読者は2万人にのぼる。
会社員時代、上司や顧客からの理不尽な依頼や要求に対し、断れない、言われっぱなしで追い込まれる状況を何度も経験、鬱状態になる。その危機感からコミュニケーションを研究。相手を怒らせることなく自分の言いたいことが言え、自分の心も強くなる「ポーカーボイス&トークメソッド」を開発。過去の自分と同じ悩みを抱える人向けにワークショップ等を開催し、好評を博する。

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