本記事は、電通若者研究部 ワカモン氏の著書『フラット・マネジメント 「心地いいチーム」をつくるリーダーの7つの思考』(エムディエヌコーポレーション)の中から一部を抜粋・編集しています。
「納得解」を見つけ出す。
「やらされ仕事」をゼロにする。
1980年代ごろまでの日本では、ハードワークで長時間労働も厭わず会社のために働く社員は「企業戦士」と呼ばれ、企業や社会から重宝されていました。そうした企業戦士が日本の高度経済成長期を支えたといっても過言ではありません。しかしバブル崩壊後、そうした企業戦士は「社畜」と呼ばれるようになり、ネガティブな表現で描かれるようになっていきます。海外では、資本主義社会で賃金のために働く労働者を奴隷に喩えた「wage slave(賃金奴隷)」という言葉もあるほどです。会社の売上のような数字ベースの「成果目標」しかないような成績第一主義の会社は、まさにそれを体現してしまっている古い会社であるといえるでしょう。
「成果目標」だけでなく部下自身の「成長目標」を設定する必要があるのです。それは、部下自身に「納得できるやる意味」を感じてもらう必要があるからです。この「納得できるやる意味」のことを、われわれは「納得解」と呼んでいます。いまの若者は、何かを選択する際に、この「納得解」を重要視します。
たとえば、上司が部下に仕事を指示するとき、「なぜこの仕事をあなたにやってほしいのか、そこにはどんな意味や意図があるのか」ということをしっかりと伝えないと、表面上は「わかりました」と言って受け入れているように見えたとしても、内心では納得できていないがゆえに「これって自分にとって本当にやる意味あるのかな?」と思われているかもしれません。
仕事を遂行する意味を納得しないままではやる気も出ず、とりあえずタスクをこなしただけの中途半端なアウトプットになってしまう危険性があります。
こうした状況を避けるためには、部下自身の納得解を把握したうえで丁寧に仕事を指示することが重要です。そうすることで、仕事に対する能動性を引き出せる可能性が高くなるといえます。
部下の納得解を見つけるためにもっとも重要なことは、1人ひとりのことをよく理解し、その部下が納得するポイントを捉えることです。その理解が浅いまま、上司や会社都合の「やる意味」を伝えたところで、部下にはまったく響かず、納得することはできないでしょう。
「そうはいっても、どうやって部下のことを理解すればよいのだろうか」と悩む上司の方も多いと思います。日々のコミュニケーションのなかで徐々に彼らのパーソナリティや価値観を理解していくのが理想的ではありますが、テレワークなどの普及によって対面での接点が少なくなった昨今、コミュニケーションを取ることがより難しくなっている状況もあるでしょう。
しかし、そうした環境下にあるからこそ、できるだけ部下のことを理解するための努力が必要です。そのために把握しておくとよいのが、彼らのモチベーションを高める要因となる「モチベーションの源泉」です。彼らが生まれてから現在にいたるまでの人生において、何にモチベーションが高まったのかを「+」、逆に何に下がったのかを「−」として、具体的なエピソードを時系列に沿って、それぞれ上位5つ程度を聞いてみるとよいでしょう[図06]。
ここで挙がったエピソードについて、「なぜモチベーションが上がったのか、あるいは下がったのか」、「何が嬉しかったのか、あるいは辛かったのか」と細かく丁寧にヒアリングをして深掘りしていくことで、どういったポイントにモチベーションを感じてくれるのか=部下の納得解がどこにあるのかを、紐解いていってみてください。
とはいえ、日々のコミュニケーションが取れていない状況で、プライベートに関わる過去の人生について、いきなり話を聞くのは難しいでしょう。
まずは、なぜ「モチベーションの源泉」を把握したいと思っているのかを丁寧に説明し、部下の希望に合わせて話の範囲を仕事上に限定するなど、お互いの認識を「すり合わせる」ことが大切です。時間や予算に余裕があれば、ワークショップ的に実施するのも有効でしょう。
部下のモチベーションの源泉を知って、彼らの納得解を把握したうえで丁寧に仕事を指示することで、たんなる「やらされ仕事」から「やりたい挑戦〜チャレンジ〜」に変換することができるはずです。
まとめ
- 納得できるやる意味=「納得解」が重要
- 「納得解」があることで、仕事に対する能動性を引き出せる
- 納得するポイントは一人ひとり違っている