本記事は、新井 一氏の著書『1億円稼いでいる人は何をしているのか?』(総合法令出版)の中から一部を抜粋・編集しています。
お金の流れをつかめる人、つかめない人
「まずは、小さく起業してみればいい。それはつまり、小さな売り買いを始めること」。今はこれだけ理解しておいてください。お金の流れをつかめる人は、最初から事業計画とか、商品企画とか、マーケティングとか、難しく考えません。「当面は借り入れしない」と決めたのなら、大したことはできませんから安心してください。
お金の流れをつかめる人は、「小さな売り買いを始められる人」です。それはつまり、「どこから、どこにお金が流れているのかがわかる人」ともいえます。起業とは、「お金の流れているところに行く」という〝陣取りゲーム〟のようなものだからです。
そこに、金銭的リスクを取ってショートカットして行くか、時間的リスクを取って行くか、その答えは、やる人の性格や適性によって変わってくるでしょう。お金のある人や、大金を扱うことが怖くない人は、躊躇なくショートカットすべきですし、逆の人は、多少の時間と労力を覚悟して1歩前に進む方法もあります。アプローチは異なりますが、どちらのやり方でも、お金の流れをつかめる人になれます。
逆に言えば、お金の流れをつかめない人とは、「小さな売り買いを始められない人」です。それはつまり、「お金を手元に置いておくことを優先する人」ともいえます。人にお金を使わないので、自分にも使ってもらえません。自分自身や資産に投資しないので、お金を増やす機会を失っているのです。
そのような人は大概、無料の情報ばかりをあさって、自分の得ばかりを優先し、人のために動く視点が欠落しています。よっていつまでもお金が流れている場所に気づけないでしょうし、教えてもらえることもありません。
お金の流れをつかめる人は、「お金が流れている場所がわかる人」です。では、その「お金の流れている場所」とは、一体どこなのでしょうか?
私は起業について、書籍、YouTube、講演会など、さまざまな場所で発信していますが、「起業に大事なのは思いやり」と言い続けています。マーケティングや資金調達などのややこしい話よりも、もっと大切なことと認識しているからです。
ここで言う〝思いやり〟とは、「困っている人を助けたい」「社会の歪で苦しんでいる弱者を救いたい」という気持ちのことです。そのような他を利する視点でもいいですし、「自分が苦しんだのだから、同じような人がいるはず」という、そんな視点でも大丈夫です。ただ、大それたことはできませんし、持続可能にするためにも、きちんと対価を頂かなくてはなりません。
「今の自分にできることで、この人の、この問題を何とかできないか?」
その、「この人の、この問題」を意識して、今日1日を過ごしてみてください。いつもと違う景色、情報が脳に飛び込んでくると思います。そこが、お金の流れている場所である可能性は高いです。
ここで、ひとつの例をご紹介しましょう。
逆転営業アカデミーの木村さんは、営業として商談をするところまでは行けるけれど、契約を取ることができない、そんな営業パーソンのための教育コミュニティを主宰しています。上司にハッパをかけられ、会議が嫌でしかたがない、そんな状況を何とかしたいと考えている会社員から、日々たくさんの相談を受けています。
木村さんは、独立するころにはトップセールスのひとりになっていましたが、営業職になりたてのころはまったく成果が出せず、苦しんだ挙句、左遷された経験もある苦労人です。
「今、苦しんでいる人がいる。自分が変われた経験を伝えたい」。木村さんはそんな思いから、ブログやYouTubeで発信を始めました。結果、たくさんの人々からアドバイスを求められるようになり、その活動を発見した研修会社からも声がかかり、継続的な社員研修の実施へと事業領域を拡げ、フローの数を増やしています。(逆転営業アカデミー https://gyakuten-eigyou.com/ )
もうひとつ例をご紹介します。
Rさんは、初めて私とお話しした際、「絶対に起業したいです!」と力強く宣言されました。私がその理由をうかがうと、「年収1億円欲しい!」「自由になりたい!」「好きなことをして生きていきたい!」と、我欲のオンパレードでした。もちろん、私に対しての言葉ですので、世間一般に向けて発信する言葉とは違うと思いますし、頼もしい決意でもあります。とは言え、念のため、「それ、他の人に言っちゃダメよ」と、小さな声でアドバイスしておきました。
- お金が欲しい
- 働きたくない
- 私が幸せになりたい
お気持ちはよくわかります。ですが、「なるほど、そうなんですね。頑張ってください」と受け流されてしまえば、誰の協力も得られなければ、お金の流れをつかむチャンスも得られないでしょう。もし、「今、●●で苦しんでいる人がいる。力になりたい!」という、そんなあなたであれば、「手伝いたい!」「取材したい!」「出資したい!」という人が集まり、お金があなたの周りを流れるようになっていきます。
私は、ここまで極端な話以外にも、独りよがりで小さな売り買いすら始められない人をたくさん見てきました。多くは、「会社でやらせてもらえないこと(会社の人・物・金・信用がないとできない大きなこと)」をやろうとする人だったり、「自分のやりたいこと(資格にこだわったり、需要を無視したこと)」をしようとする人だったりします。ちなみに、資格は、「その資格を得たい(勉強したい)人」は多くても、「勉強したあなたに(有料で)何かを依頼したい人」は少ないことが多いので、フロー増設に使う場合には注意が必要です。「習いたい」と「やってほしい」は違う需要ですし、皆が知っていることには価値がありません。
「小さな売り買いが発生している場所」を見つける
私たちが〝小さな売り買い〟をスムーズに始める際には、いくつかの注意点が存在します。最も大事な2つとして、
- 自分ひとりで始めること
- お金の流れを生み出そうとしないこと(つかむ)
があります。「ひとりで始めること」とは、最初から社員やビジネスパートナーを持たないということです。社員は当然として、ビジネスパートナーも立ち上げ当初は必要ありません。意見や熱量、スピード感が合わず、お互い嫌いになって終わることになります。
「お金の流れを生み出そうとしないこと」とは、「需要をつくろうとしない」という意味と、「お金が流れている脈に乗っかる」という意味になります。どちらも、自分で1からつくる時間もお金もない、という理由からです。
では、世の中のどこにお金が流れているのか、思い出してみましょう。実際、1歩街に出ればたくさんの商店があり、そこに人が集まりお金が流れていることがわかります。ですので、たとえば何かの〝物〟を売ろうと思えば、そんなお店に置いてもらうことが基本になるのです。「当り前だろ!」と言われそうですが、実際は「お店(店舗)を持とうとする人」や、さらに、「誰も来ないネットショップを構築して商品を置く人」が、とても多いのです。
大切なことは、「今の自分にできること(店舗なんて持てますか?)」であり、「お金(人)が流れている場所に商品・サービスを置くこと」です。やるべき答えを言ってしまえば、理想の店舗を探し、「商品を卸させてほしい」と交渉すること、あるいは、多くの人が利用するネットショップ(Amazonやメルカリなど)に出品することになります。
「そこにお金の流れはあるか?」を常に意識し、リソースを配置するようにしましょう。