この記事は2023年9月28日に「第一生命経済研究所」で公開された「ChatGPTに聞いてみた物価・エネルギー対策 」を一部編集し、転載したものです。


日本株の上昇要因と下落要因は ? 話題のChatGPTにも聞いてみた
(画像=and4me / stock.adobe.com)

目次

  1. いつか止めなくてはいけない
  2. ChatGPTに質問した
  3. エネルギー革命だった

いつか止めなくてはいけない

私たちは、知らず知らずのうちに、先入観や周囲の空気の影響を受けて柔軟なアイデアを思い付かなくなる。ガソリン補助金は、政治的な摩擦を心配するから止めるに止められない。選挙があるかもしれないという強迫観念が、なるべく何も変えたくないという現状維持的な思考をつくり、その発想に多くの人を巻き込んでいく。確かに、レギュラー・ガソリンは1リットル180.5円(9月25日時点)で割高だが、もしも補助金がなければ212.0円に跳ね上がる。9月末にこの補助金を廃止し、10月以降一気に212円にするのはいくら何でも厳しい。しかし、価格補助を永遠に現状維持してよい訳ではない。10~12月は枠組みを維持して、2024年以降は徐々に補助を縮小する体制に移っていく必要がある。おそらく、現行の6月から9月までの補助縮小もそうした考え方に依拠していたのだろう。2024年以降は、もっと負担増が上手に調整される仕組みを考え出す必要がある。例えば、1リットル175円に価格補助して、半年後に市況が175円以下に下がったとき、価格を維持して価格補助のコストを回収するような工夫が考えられる(図表1)。それならば、財政負担を重くしないようにできる。一時凌ぎの制度を作らないことが政策当局には求められる。

第一生命経済研究所
(画像=第一生命経済研究所)

ChatGPTに質問した

本稿では、自分が固定観念に囚われている可能性もあるので、ChatGPTを使って、空気を読まない対策を考えてみた。質問は、物価対策ではなく、エネルギー対策として有効な策を尋ねてみた。2023年は、ちょうど第一次オイルショックから数えて50年目である。1973年10月に第4次中東戦争が始まった。OPECが1バレル3ドル台だった価格を5ドル台に引き上げることを発表する。そしてOPECはイスラエル支持国への禁輸を発表する。翌1974年1月には原油は11ドル台に跳ね上がった。

このインパクトは今の日本では想像もできないほどの衝撃だったと考えられる。

ChatGPT(無料版)で入力した質問は、

「Q.オイルショックで日本が採用したいくつかの有効な対策は何ですか」というものだ。回答を短く紹介すると、


  1. エネルギー効率向上と節約策:日本はエネルギー消費の効率向上に重点を置き、産業・交通・住宅などのセクターでエネルギー消費を削減しました。効率の高い家電製品の開発と普及が進み、省エネのライフスタイルが奨励されました。
  2. 公共交通機関の拡充:新幹線網の拡充や、公共交通機関の整備が進められました。個人用車の利用を減少させ、エネルギー消費の削減と石油依存度の低減が実現されました。
  3. 産業構造の変革:エネルギー消費の多い重工業から、エレクトロニクスや情報技術などのエネルギー効率の高い分野への転換が進められました。
  4. 規制緩和と競争政策(略)
  5. 外国為替政策(略)
  6. 国際協力(略)

これらの対策により、日本はエネルギー効率を向上させ、エネルギー消費を制限し、石油価格の上昇に対処しました。これにより、日本は経済の安定性を維持し、持続可能な成長を実現しました。

とある。以上の記述の中には、「個人者の利用を減少させ」とか、生身のエコノミストならば挙げないような内容もある。さすが空気を読まないAIだと思った。

エネルギー革命だった

筆者は、ChatGPTだけではなく、図書館で古い資源エネルギー庁の資料も調べてみた。インターネットに載っていない情報も多く発見できた。驚いたのは、日本がオイルショックを機に、エネルギー効率を比較的に高めたというデータである。対GNP当たり一次エネルギー消費の推移である(図表2)。1973年199.5KL/億円→1983年140.2KL/億円へ約3割の省エネ化が進んだことだ。日本のエネルギー効率は、欧米、OECD平均よりも高い効率化(=省エネ化)を1973年以降に実現している。当時は、素材産業も懸命にエネルギー効率を上げ、冷蔵庫・エアコン・カラーテレビも1973年以降消費電力量が低下していった。ガソリン乗用車も、燃費が1975年から1982年にかけて1.44倍にも向上している(図表3)。筆者は、石油危機当時の記憶は定かではないが、社会全体が省エネを合い言葉に頑張っていたように思う。社会が危機感を共有し、政策当局も日本企業の競争力を念頭に置きながら政策を考えていたと思われる。

第一生命経済研究所
(画像=第一生命経済研究所)
第一生命経済研究所
(画像=第一生命経済研究所)

現在流に言えば、省エネ=脱炭素化に置き換えればよいだろう。2024年に価格補助をリフォームし、省エネ・脱炭素と整合的な政策誘導に切り替えていくことが望まれる。これは、日本の産業競争力を高めることにもつながっていくはずだ。例えば、自動車政策は、ガソリン使用に消費者を固定化するのではなく、EV車などに需要をシフトさせていくことが検討されてもよい。日本のEV車の価格が高いときは、もっと補助金を工夫する。インフラ整備も、日本だけの規格でガラパゴス化しないように注意する。そうした供給サイドの政策立案を物価・エネルギー対策として用意周到に準備することが岸田政権には望まれる。

第一生命経済研究所 経済調査部 首席エコノミスト 熊野 英生