本記事は、内藤誼人氏の著書『「なまけもの」のやる気スイッチ』(総合法令出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

親切
(画像=taka / stock.adobe.com)

「死」について考えると、親切になれる

他人のために行動できない人がいます。

他人のために自分の労力や時間を費やすと、なんだか自分がソンをしたように感じてしまうのでしょう。自分がソンをするなんてとんでもない話だ、と考えてしまうのです。

こういうケチな人は、「死」について考えてみるといいです。

なぜかというと、死について考えていると、私たちは寛大な気持ちになれるからです。これを心理学では「スクルージ効果」と呼んでいます。

スクルージとは、ディケンズの小説『クリスマス・キャロル』に出てくる主人公の名前です。

守銭奴しゅせんどでケチん坊のスクルージですが、「死」について考えることで、寛大になっていくのです。これがスクルージ効果です。

ドイツにあるルードヴィッヒ・マクシミリアン大学のエヴァ・ジョナスは、葬儀場の前、あるいは何の変哲もない場所で、1人で歩いている歩行者に声をかけ、チャリティ活動についてのアンケートをお願いしてみました。

なぜ葬儀場の前かというと、無意識のうちに「死」についてのイメージが自然と高まる場所だからです。そういう場所では、スクルージ効果が起きるだろうとジョナスは仮説を立ててみたのです。

実験をしてみると、まさにジョナスの仮説通りでした。

『「なまけもの」のやる気スイッチ』より引用
(画像=『「なまけもの」のやる気スイッチ』より引用)

図②を見てください。葬儀場の前でアンケートに答えてもらったときのほうが、「チャリティは素晴らしい活動だ」「チャリティはどんどんやったほうがいい」という好意的な答えが多く見られたのです。

自分のことばかり考えて、他の人に親切な行動をなかなかとれない人は、「死」について考えてみてください。

「死んだら他の人に親切にしたくても、できないな」と考えているうちに、自然と慈善の気持ちが強くなるはずです。

ポイント
他人に親切にできない人は死について考えてみる
死について考えると寛大な気持ちになる

笑いながら取り組んでみる

つらい作業をしなければならないときには、あえてニコニコしてみるといいです。

ニコニコしながらやっていると、どんな作業もそんなに苦しく感じません。

お風呂掃除や、庭木の手入れなどをしなければならないとき、「やりたくない」と思うのであれば、まずは笑ってみてください。「アハハハハ、庭の雑草とりをしなきゃいけないのか、イヤだなぁ、やりたくないなぁ、アハハ」と笑ってみるのです。やりたくないという感情とは矛盾するようなことをするわけですが、ニコニコしてから取り組むようにすると、何だか愉快な気持ちになってくるでしょう。

アメリカのマサチューセッツ州にあるクラーク大学のジェームズ・レアードは、しかめっ面をしていると怒りの感情が湧き、にこやかな笑顔をしていると、気分が高揚してくることを実験的に確認しています。

私たちの脳みそは、笑顔を作っていると、「何か楽しいことがあったに違いない」と考えて、ハッピーホルモン(オキシトシンやドーパミンなど)をどんどん分泌し始めます。そのため、本当に楽しい気持ちになっていくのです。

私たちの気分というものは、自分がどんな表情をしているかによって影響を受けます。

しかめっ面をしていると、何だかムシャクシャしてくるものですし、ニコニコと微笑んでいると愉快な気分になってくるのです。

やりたくないことが目の前に控えているのなら、とりあえず1分ほど笑ってみることをおススメします。楽しくなくても「アハハ……」と笑っていると、次第に愉快になってきて、苦しさを感じにくくなるからです。私たちの脳みそは、簡単にだませるのです。

せっかく何時間もかけて作った資料のデータが全部消えてしまったとしましょう。もう一度同じ作業をしなければならないと考えると、だれでもうんざりした気分になるのではないでしょうか。

けれども、こんなときにこそ笑うのです。「また1からやり直しだよ。もう笑うしかないよね。アッハハハ、まいった、まいった、アハハハハ」と笑っていれば、「さてと、それじゃまたやるか」という気持ちが生まれます。

仕事がイヤで、出社するたびに気分が落ち込んでしまう人は、会社に到着する少し前から、笑顔を作りましょう。笑顔を保ちながらオフィスに入り、職場の人たちににこやかな顔で「おはようございま~す」と明るい声で挨拶していれば、自然に仕事のやる気も出てくるのではないかと思われます。

ちなみに、いつでもニコニコしていると、そのうちに笑顔の表情が顔にはりつくようになります。自分でも意識しなくても笑顔になっているのです。こうなればしめたもので、わざわざ笑顔を作ろうとしなくとも、いつでもハッピーホルモンが分泌されるようになります。

ポイント
つらい仕事のときはあえて笑ってみる
笑いながら仕事していると楽しくなってくる
「なまけもの」のやる気スイッチ
内藤 誼人
心理学者、立正大学客員教授、有限会社アンギルド代表取締役社長。
慶應義塾大学社会学研究科博士課程修了。
社会心理学の知見をベースに、ビジネスを中心とした実践的分野への応用に力を注ぐ心理学系アクティビスト。
趣味は釣りとガーデニング。
著書に、『世界最先端の研究が教える新事実心理学BEST100』『世界最先端の研究が教えるすごい心理学』『世界最先端の研究が教えるもっとすごい心理学』(以上、総合法令出版)など多数。
その数は200冊を超える。

※画像をクリックするとAmazonに飛びます。
ZUU online library
※画像をクリックするとZUU online libraryに飛びます。