本記事は、内藤誼人氏の著書『「なまけもの」のやる気スイッチ』(総合法令出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

スタート
(画像=maco / stock.adobe.com)

マインド・セットを変える

頭の良さですとか、才能のようなものは運命的に決まっているものではありません。あらかじめ決まっているものではなく、努力次第で伸ばすことができるです。

「努力したって、頭は良くならないよ。私の両親は中卒なんだから」

こういう思い込みはよくありません。そういう思い込みをしていたら、勉強しようという意欲が生まれるわけがないからです。

本人の思い込みのことを「マインド・セット」と呼ぶのですが、行動的な人間になりたいのなら、まずは間違えたマインド・セットを修正する必要があります。

アメリカにあるテキサス大学のデビッド・イーガーは、GPA(アメリカの成績評価のことです)の点数が低い中学3年生を集めて、マインド・セットを修正するためのトレーニングを受けてもらいました。


「努力は決してムダにはならない、だれでも学べば絶対に伸びる」
「伸びないのはやらないからであって、才能のせいではない」

こういうことをしっかりと教え込むことで、まずは勉強のできない子どものマインド・セットを変えるように仕向けたわけです。

するとどうでしょう、それまで成績が振るわなかった子どもたちも、数か月後には本当に主要科目の成績が伸び始めたではありませんか。マインド・セットを変えるやり方は大成功だったのです。

「どうせ自分にはできっこない」と思い込んでいるから「できなくなる」のであって、最初から「できない」わけではありません。

成績が悪いのだとしたら、それは明らかに自分のせいです。

自分がおかしな思い込みを持っているから、成績が悪いのであって、その思い込みを変えれば、成績はいくらでも伸ばせます。

「もともとの頭が悪いんだから、どんなに努力したって成績が上がるわけがないんだよ」と思っている人は、おそらくいつまでも成績は上がらないでしょう。本人がそう思い込んでいたら、成績が伸びるわけがないのです。

スポーツでも、芸術でも、同じです。

「私は背が小さいから、バスケットボールがうまくならない」と思っていたら、バスケットボールの技能を伸ばすことはできません。

たしかに背が低いことはバスケットボール選手としては致命的に不利でしょう。そのこと自体は否定できません。世界最高峰のバスケットリーグであるNBAの選手の平均身長は約2メートルだそうですから。けれどもマグジー・ボークスのように身長が160センチでも大活躍できた選手がいないわけではありません。つまり、身長ですべてが決まるわけではないのです。

「私には音楽の才能なんてない」と思っていたら、ピアノもバイオリンも、その他の楽器も学ぶことはできないでしょう。おかしな思い込みは叩き潰しておきましょう。マインド・セットを変えれば、才能はいくらでも伸ばせます。

ポイント
頭の良さや、才能は生まれながらに決まっているものではない
マインド・セットを変えればだれでも才能は伸ばせる

自分で限界を設けない

アメリカ人は、意志力のような精神力には、限界があると信じています。

つまり、精神を疲れさせるような作業にしばらく取り組んだら、精神力が回復するまで、しばらく休まなければならない、と信じているのです。

日本人も同じように考えています。頭を使う仕事をしたら、その後に休まないと回復しないと思っている人のほうが多いのではないでしょうか。読者のみなさんもたぶんそうだと思います。

ですが、「精神力には限界がある」と思っているから、精神力が出なくなるのであって、「精神力に限界なんてない」と思っていれば、精神力が枯れてしまうようなことはないのです。

シンガポールにある南洋理工大学のクリシュナ・サバニは、アメリカ人は精神力の限界を信じているけれども、インド人は限界など信じていないので、精神力を使う複数の作業を連続してやらせても、決して作業能率が落ちることはないという報告をしています。

精神力には限界なんてないと思っていたほうがいいです。
そうすれば、疲れなんて感じなくなります。

オランダにあるマーストリヒト大学のキャロリン・マーティンは、53人の大学1年生にハンドグリップを我慢の限界まで握り続けてもらう実験をしました。

それから2つのグループに分かれてもらい、ひとつのグループにだけ、「精神力は無限」ということを教えました。「精神的な疲れは、身体的な疲れとは違って、休憩なんていらないという科学的な研究があるのです」ということを教えたのです。

それからもう一度ハンドグリップを握ってもらうと、「精神的な疲れなんてない」と教えられたグループでは、そういうことを教えてもらわなかったグループより長くハンドグリップを握っていられることがわかりました。

もし人間に限界があるとしたら、それは自分が勝手に作り上げた限界であるにすぎません。そんなものはないのだと思っていれば、私たちはやすやすと限界突破できるものです。

自分ではここまでしかできないと思っていることでも、たまたまそれ以上のことをやってみると、意外にすんなり壁を越えてしまうこともあります。

「絶対にムリ」と思っているからムリなのであって、そんなことを考えなければ、私たちに限界などありません。

ポイント
精神力に限界などない
限界は自分で作り上げたものにすぎない
「なまけもの」のやる気スイッチ
内藤 誼人
心理学者、立正大学客員教授、有限会社アンギルド代表取締役社長。
慶應義塾大学社会学研究科博士課程修了。
社会心理学の知見をベースに、ビジネスを中心とした実践的分野への応用に力を注ぐ心理学系アクティビスト。
趣味は釣りとガーデニング。
著書に、『世界最先端の研究が教える新事実心理学BEST100』『世界最先端の研究が教えるすごい心理学』『世界最先端の研究が教えるもっとすごい心理学』(以上、総合法令出版)など多数。
その数は200冊を超える。

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『「なまけもの」のやる気スイッチ』
  1. やる気を出すために「ゲーム」の要素を加えてみよう
  2. 自信がない人が真っ先に修正すべきものは?
  3. 「完ぺき主義」には、良いことだけでなく悪いこともある
  4. 行動的な人間になるためにまず「マインド・セット」を修正しよう
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