本記事は、小林 弘幸氏の著書『自律神経の名医が教える集中力スイッチ』(アスコム)の中から一部を抜粋・編集しています。

chewing gum / ガム / チューインガム / 板ガム
(画像=ButterflyEffect / stock.adobe.com)

咀嚼力を上げると、集中力と健康が手に入る

集中力を上げる方法を紹介してきましたが、そのなかでも集中力にプラスして、健康状態の改善にも大きく関わるものに「咀嚼」があります。

私たちは、食べ物のかたまりを噛み砕いて、唾液と混ぜ合わせて、飲み込みやすい大きさにするために咀嚼をします。小さくなった食べ物は胃で消化しやすくなり、腸での吸収を助けるので効率的に栄養を得られます。

では、はじめから咀嚼の必要のない流動食を食べれば、もっと消化・吸収が楽になるのでさらに健康的かというと、じつはそうではありません。人が咀嚼を行わなくなると、体にさまざまな変調をきたすようになります。

なぜ健康維持のために咀嚼が必要かというと、一定のリズムで口を動かす咀嚼行為は、あご、口の中、顔などの感覚センサーが刺激され、大量の感覚情報が脳に送られるからです。

それによって自律神経、とくに副交感神経が優位になり、腸の消化活動も活発になります。また、咀嚼のリズム運動は、幸せホルモンのセロトニンの分泌を促します。

人間が誕生したときには、噛まずに飲み込めるような柔らかい食べ物はありませんでした。

いにしえからの体の機能に「咀嚼をする、イコール、栄養が摂れるので幸せ」という感覚がインプットされているのかもしれません。栄養を吸収しやすくするためだけでなく、「噛むという行為」自体が大切なのです。

パフォーマンスを上げたければ、ガムを噛めばいい

さらに咀嚼は、脳にある海馬を刺激して血流量を増やし、前頭葉を活性化することもわかっています。

前頭葉は、集中力や注意力をつかさどる部位です。この点からいっても、咀嚼には、直接的に集中力を高める働きがあるのです。

よって、食事はよく噛んで行うようにしてください。厚生労働省は、より健康的な生活を目指すために、「噛ミング30(カミングサンマル)」を推奨しています。

よく噛んで食事をすると、太りにくい体が手に入れられます。

そして太りにくい食生活は、自律神経の改善にもつながり、集中力の向上にも結びついていきます。

食事の時間以外に、咀嚼を取り入れて集中力を高める手段には「ガムを噛む」という方法があります。私はアスリートのパフォーマンス向上のサポートもしているため、簡単に取り入れられて効果も出やすいガムはたいへん重宝しています。医学的にもガムと集中力に関する実験はさまざまな論文で紹介されています。

東京歯科大学の研究者らが発表した論文にて、健康な男女13名がガムを噛んでいないときとガムを噛んでいるときに、問題への反応速度や正答率に違いがあるかを調べた結果、ガムを噛んでいるときのほうが、反応速度も正答率もよくなることがわかったそうです。また、ガムを噛んでいるときのほうが、前頭葉が活性化されているというデータも出ました。

少し古い論文になりますが、2009年の『Psychological Reports』に掲載された実験では、小学校3年生85名をガムの咀嚼の有無に分けて、記号を判別させる集中テストを実施しています。

最初は咀嚼の有無にかかわらず集中力が向上したのですが、終盤になるとガムを噛んでいる子どものほうが好成績を維持しました。こちらも、ガムを噛むことが集中力維持に役立つことを示唆しています。

似たような研究では、ガムを噛みながら14週間勉強をした中学生と、噛まずに14週間勉強をした中学生に勉強の前後で数学のテストを受けさせたところ、ガムを噛んだ中学生の点数の伸びが大きく、高齢者に写真を記憶させたところ、噛まない場合よりガムを噛んで覚えたときのほうが記憶力が高かったというものもあります。

自律神経は自らコントロールをするのが難しいのですが、深呼吸、ウォーキング、そしてガムを噛むなどのリズム運動で、整えることが可能です。とくにガムは、直接的に脳にも働きかけ、作業をしながら噛むことができるので集中力アップのアイテムとして活用できます。

まさにリズミカルにガムを噛む「リズミ噛む運動」で、集中力を引き上げ、パフォーマンス向上に役立ててください。

集中力のスイッチ
小林 弘幸(こばやし・ひろゆき)
順天堂大学医学部教授。日本体育協会公認スポーツドクター。
1960年、埼玉県生まれ。1987年、順天堂大学医学部卒業。
1992年、同大学大学院医学研究科修了。
ロンドン大学付属英国王立小児病院外科、トリニティ大学付属医学研究センター、アイルランド国立小児病院外科での勤務を経て、順天堂大学小児外科講師・助教授を歴任する。
自律神経研究の第一人者として、プロスポーツ選手、アーティスト、文化人へのコンディショニング、パフォーマンス向上指導にかかわる。
『医者が考案した「長生きみそ汁」』『結局、自律神経がすべて解決してくれる』(小社刊)など、著書多数。
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