この記事は2024年2月9日に「第一生命経済研究所」で公開された「おかず・菓子ランキングに映る地域社会(上編)」を一部編集し、転載したものです。


おかず
(画像=norikko / stock.adobe.com)

目次

  1. ランキングには宝が埋まっている
  2. おかずランキング
  3. スイーツ・ランキング

ランキングには宝が埋まっている

例年、総務省「家計調査」の年報が発表されると、都市別のギョーザ消費支出のランキング1位がどこかが大きく報じられる。2023年は、浜松市が1位、宮崎市が2位、宇都宮市が3位であった。この3強は例年、首位を争っており、ご当地では首位になった年に住民がお祝いをする騒ぎである。筆者などは、データ発表を機に、ご当地グルメが一役買うことについて、地域活性化になるので大歓迎である。

少し厳密なことを解説すると、対象は県庁所在地の47都市とそれ以外の政令指定都市(川崎市、相模原市、堺市、浜松市、北九州市)の5つの地域である。県庁所在地の調査サンプルが30~40と少ないこともあるので、統計的な信頼度が低いことは気になる。しかし、この統計自体が、地域興しにこうした意外な貢献をしていることを考えると、多少は厳密さに目を瞑って、統計的に怪しいなどとは言わない方がよいだろう。むしろ、この種のランキングをもっと活用して、地域の隠れた潜在需要を引き出す発想を持つ方が生産的な姿勢となる。

全国各地に出向くと、時々、この「家計調査」を使った消費支出ランキングを用いて、「今年は○○の消費で首位に輝きました」という宣伝文句に出会うことがある。ご当地グルメを売り出すときのアピールに使われているのだ。地域によっては、大きな盛り上がりになって、大きな経済効果を上げているところもありそうだ。そうした様子からは、「家計調査」というデータには、まさしく宝が埋まっていると感じられる。

おかずランキング

そこで一例として、まずは有名なギョーザ以外のおかず(お総菜)についても注目してみた。ギョーザ以外にある8品目(うなぎのかば焼き、サラダ、コロッケ、カツレツ、天ぷら・フライ、やきとり、ハンバーグ)のランキングを調査して、その特徴を考えてみた(図表1)。浜松市は、ギョーザが首位であるが、他のおかずでも上位を占めている。うなぎのかば焼きとハンバーグは首位。カツレツ4位、コロッケ5位である。ここからは、浜松市がギョーザ王国というよりも、おかず大国であることがわかる。浜松市の食文化は豊かで、現地に行くとうなぎなど浜名湖の幸を紹介するお店を多く目にする。それに対して、宇都宮市は浜松市ほど他のおかずでの上位を占めてはいない。宇都宮の方が、ご当地グルメの中でギョーザ依存が高いのだろう。

ほかにも、隠れたおかず大国の地域には、福井市がある。天ぷら・フライ、カツレツはともに首位。やきとりは2位である。次いで、首位こそ少ないが富山市もコロッケ、カツレツで2位。実は、北陸は油で揚げるおかずが強い。金沢市、新潟市もコロッケ、カツレツで上位を占める。金沢市などに行くと、冬の味覚が豊富で、海産物の競争力が圧倒的に強く、現地の人は逆に夏の食事に目玉がないと嘆く。しかし、北陸ではこのランキングを使って、コロッケなど揚げ物を売り出すことができるのではないかと思える。

しゅうまいのランキングは、他のおかずと傾向が違う。横浜市が首位、川崎市が2位、東京都が3位だ。横浜中華街があり、強力なしゅうまい弁当の企業もある。宇都宮市は、ギョーザだけかと思ったが、サラダは首位、しゅうまい、やきとり、ハンバーグも6~9位を占めている。宇都宮もまたグルメ都市であると言える。

第一生命経済研究所
(画像=第一生命経済研究所)

スイーツ・ランキング

同様のことをいくつかのお菓子で行ってみた(図表2)。ようかん、まんじゅう、カステラ、ケーキ、ゼリー、プリン、せんべい、ビスケット、キャンデー、チョコレート、チョコレート菓子、アイスクリーム・シャーベット)の12品目である。

地域性が現れるのはカステラである。断トツの消費額は長崎県である。長崎のカステラは説明を要しない。ようかんの首位は、長野市である。長野県内には様々なようかんがあり、これも地域性が感じられる。富山市のせんべいは、白エビが有名であるのを思い出す。気がつきにくいのは、ビスケットの首位が高知市である点だ。検索すると、高知には強力なビスケット・ブランドがあったと膝を打った。このように、和のスイーツはご当地のスイーツ文化が色濃く出ていて、観光客はその土地で有名な和菓子を楽しむことができる。

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(画像=第一生命経済研究所)

明らかな洋菓子の分類では、ご当地色は薄らぐ。福島市は、プリン、チョコレート菓子、アイスクリーム・シャーベットでいずれも首位。日本最強のスイーツ消費地域だ。少し目立ちにくいのは、盛岡市と山形市も上位に食い込んでいる品目が多い。この3地域は、東北の内陸にあるという点で共通している。東北以外では、大津市、金沢市が割に上位にいる。内陸の地域で洋のスイーツの消費量が多いのは、何か理由があるのだろうか。(下編に続く)

第一生命経済研究所 経済調査部 首席エコノミスト 熊野 英生