2014年11月に家電量販店大手のノジマは、SPCを設立し、投資ファンドの日本産業パートナーズから携帯電話販売台数第5位のアイ・ティー・エックスを買収すると発表した。この買収によりノジマは、ティーガイア、光通信につぐ第3位へと浮上する。

ノジマの売上高は2,184億円、アイ・ティー・エックスの売上高は2,573億円と、買収されるアイ・ティー・エックスの方が大きいという「小が大を飲み込む」M&Aだ。買収金額は513億円、アイ・ティー・エックスから引き継ぐ負債も含めて850億円程度。これはノジマの売上の4割に相当する多額の投資となる。この発表を受けて、700円弱だったノジマの株価は約1.8倍の1,300円近い金額にまで急伸し、株式市場はこのM&Aを評価しているといえる。


携帯電話販売代理店の現状

スマートフォンを中心とした携帯電話販売事業を強化しているノジマは、自社の携帯電話販売子会社である西日本モバイル株式会社でauの携帯電話販売をメインに行っている。さらに、今年3月にJVCケンウッドの携帯電話販売子会社「株式会社ジオビットモバイル」を32億円で買収。これに今回の携帯電話販売会社アイ・ティー・エックスの買収と、携帯電話販売会社の地位を急速に固めつつある。


飽和する携帯電話販売市場

今回の買収により、携帯電話販売台数はノジマの100万台にアイ・ティー・エックスの266万台を加えると3位に浮上する。このようなスケールメリットがM&Aの狙いの一つだろう。しかし、人口比での普及率は100%を超え、一人1台以上保有するほど飽和している携帯電話市場。今後は大きな市場拡大は望めない。

かつては、通信キャリアからの販売奨励金は販売台数に応じて変化していたため、大手代理店を中心に販売台数の拡大を狙ったM&Aが盛んであった。しかし現在では、通信キャリア各社も販売奨励金を販売台数に応じて一律に支払うのではなく、動画配信サービス等への加入や、スマートフォンとタブレットとの複数回線契約といった付加価値に対して優遇するというように変わって来ている。単にスケールメリットを狙うのではなく、この買収により新たに法人顧客基盤を獲得することができるため、家電販売にうまくつなげていければ相乗効果が見込める。

国内家電販売市場をみるとすでに成熟期を迎えている。今後は家庭用電化製品が通信技術革新によってインターネットでつながっていくことを考えれば、家電販売のノウハウに、携帯電話販売のノウハウを組み合わせることで他社にはないコンサルティング営業が可能になる。

ノジマは特に販売力には自信があり、携帯電話販売には他社のようにメーカーからの応援要員を活用せず、自社の社員が直接販売している。7月には人材教育会社「株式会社ビジネスグランドワークス」を買収する等、人材育成への投資に余念がない。ノジマはコンサルティング営業が得意な人材を多く育成し、複雑化していく携帯電話機器や料金体系の説明に力を入れていき、他社との差別化を目指している。


飽和する家電量販事業からの脱却

家電量販店事業は、新機能の追加や、省電力等の訴求により新たな需要を開拓してはいるが、消費税率引き上げの影響により厳しい状況は今後も続くと予想される。他の家電量販店のように出店を強化したり、同業他社を買収し規模の拡大を目指すのではなく、携帯電話販売会社へと戦略をとることで飽和する家電量販店からの脱却を目指す。

今回の買収資金は買収先のキャッシュ・フローを返済にあてるLBOローンにより調達しているため、失敗してしまうと自社のキャッシュ・フローで補てんしないといけなくなるため、ますます失敗は許されない。家電量販店からの脱却を目指すノジマの成否は、今回の買収にかかっているといっても過言ではない。

(ZUU online)

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