本記事は、龍夏氏の著書『「器用貧乏」さんから脱出する本』(総合法令出版)の中から一部を抜粋・編集しています。
器用さはなぜ貧乏になった?
いつから器用さは「貧乏」扱いをされるようになったのでしょうか。
わたしは「高度経済成長期」(第二次世界大戦が終結した10年後、1955〜1973年まで)の前後で器用な人に対する評価が変わってしまったのではないか、という仮説を立てています。少し歴史を紐解いてみましょう。
【高度経済成長期以前】器用=生活能力
高度経済成長期以前の日本、すなわち第二次世界大戦前は、「副業・兼業は当たり前の時代」でした。実際、わたしの祖母はいくつもの仕事を掛け持ちして忙しく働いていました。早朝から畑を耕し大豆を育て、収穫して豆腐を作り、日中はリヤカーで売り歩き、夜は和裁で着物を仕立てる仕事をしていました。
器用に何でもこなすことは、豊かさをつくり出すための生活能力であったわけです。
【高度経済成長期以後】器用=良い進学・就職に必須の能力
高度経済成長期には、戦後の復興で経済が活性化し、会社に勤務することが一般的となりました。「終身雇用」「副業・兼業禁止」という制度のもとで、大半の人が「学校を卒業したら会社に就職」「定年まで同じ会社に勤務する」のが当たり前の時代でした。
好景気という時代、大企業、有名企業に就職すれば生涯安泰といったムードが高まりました。企業に就職するには高倍率の試験に合格する必要があり、高学歴、良い成績を、と「会社員になる=良い学校に入る」ための偏差値を重視する教育や活動が白熱した時代でもあります。
「良い学校に入る」ための偏差値を重視するということは、あらゆる科目でまんべんなく高得点を得ることが求められるので、必然的に器用さが必須となります。
【現代】器用=自分の利益にならない能力=貧乏
では、現代はどうでしょうか?
「みんな違ってみんないい」「ナンバーワンよりオンリーワン」「強み」「個性」「自分軸」「確固たる信念」「ビジョン」などが求められ、不器用でも「何かひとつキラリと光るもの」があるほうが良いと言われる時代になりました。それゆえ、器用であることは価値が低い、すなわち「貧乏」扱いになっていきました。
これからは自分で自分の正解を創り出していく時代へ
最近は、一芸に秀でることのみが評価される【現代】から、多様な個性や強みを活かして生き抜く時代へ変容しています。特に近年は、
- 予測が非常に困難な自然災害の発生
- 2020年から「風の時代」に突入
占星術の世界では、200年周期で時代が変化するといわれています。これまでの「土の時代」(物やお金、不動産などの目に見える資産や、成績、肩書き、安定、固定などといったひと目でわかる確実なものが価値となる時代)から、風のように目には見えないが存在する、情報や知識、教育、コミュニケーションなど、形のないものの要素が中心となる時代になるといわれています。
そしてこれは運命鑑定士でもあるわたしの持論ですが、文字どおり「土」、すなわち地に足をつけている時代から、風に吹かれて所在なく流されて流浪せざるを得ない時代に変化していくであろうとみています。
・ビジネスは「VUCA」で語られる時代
VUCA(ブーカ)は、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)という4つの単語の頭文字をとった言葉で、目まぐるしく変転する予測困難な状況を意味します。
といったことから、先行きの見えない不安な時代に突入していることは周知のとおりです。これからは、ますます正解がない時代へと変化が加速していくでしょう。
時代の変化に伴い、学校教育も大きく変化しています。学習指導要領の変更により、「アクティブ・ラーニング」(主体的・対話的で深い学び)が小学校から取り入れられています。これからは主体的に周りの人とかかわったり、試行錯誤したりしながら、自分で問題を解決していく力を養うことが重要となっていきます。
そんな時代を生きていくわたしたちは、「自己理解による自分軸の発見」と「主体的に周りの人とかかわるコミュニケーション能力」を磨いて、自分の正解をつくり出していくことが必須となっています。
しかし、器用貧乏さんは、器用であるがゆえに何でもある程度のレベルまでできてしまうことで、自分の何が強みなのか、何が自分の軸なのかがわかりません。
自分の良さが客観視できないことで、ますます自分以外の誰かのために能力を発揮せざるを得ない、自分の価値を自分のために活かせないという、器用さを価値にできない貧乏状態になってしまっているのです。
大手自動車メーカーで28年間勤務し、お茶汲みやコピー取りの冴えないOL時代を経て、社内外のカイゼン活動、マインド改革を2万6,000時間以上実施し、メンタルとビジネスの結びつきの重要性を実感。 この経験を生かして2011年よりメンタルコーチの活動を開始。5~83歳までの器用貧乏に悩む学生、主婦、社会人、治療家、経営者に向けてカウンセリング領域までをも含んだ1万1,000件以上の悩みの解決に携わる。 2019年よりライフコーチング・運命学・起業支援を組み合わせた、器用貧乏さんにマンツーマンで関わる講座「アシタノコンパス®」を主宰。 これまでに8,100時間以上開講中。本書が初の著書となる。
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