この記事は2024年4月12日に「第一生命経済研究所」で公開された「2024年・夏のボーナス予測」を一部編集し、転載したものです。


役員ボーナスの決め方・出し方は?支給日届け出などの注意点を解説
(画像=Asada/Adobe Stock)
  • 民間企業の2024年夏のボーナス一人当たり支給額を前年比+3.3%(41.0万円)と予想する(毎月勤労統計ベース)。22年夏(前年比+2.4%)、23年夏(前年比+2.0%)に続いて3年連続で高い伸びになるだろう。

  • 4月8日に厚生労働省から公表された23年冬のボーナスは前年比+0.7%と小幅な伸びにとどまっていたが、これはサンプル要因の影響が大きいとみられる。同一の事業所同士を比較している共通事業所ベースでみると、23年11月~24年1月の特別給与は+2%強となっており、ボーナスも同程度の増加となっていた可能性が高い。企業業績の改善を受けてボーナスは増加傾向にあるとの評価が妥当だろう。24年夏のボーナスも好調な企業業績を背景に増額が見込まれる。

  • 23年度の経常利益は前年比+6.9%と増益見込みとなっている(日銀短観、全規模全産業ベース)。価格転嫁を積極的に進めたこともあって企業業績は底堅く推移している。利益の水準も高く、従業員への還元余力は十分あるため、企業は賞与の引き上げに踏み切るだろう。加えて、物価高への配慮や人手不足感の強まりもボーナスの引き上げに寄与すると思われる。賃上げが物価上昇に追い付かない状況が長期化していることへの問題意識は高まっており、企業も物価高への配慮を行わざるを得ないことに加え、人手不足感が強まっていることも人材確保の面から賃上げに繋がる。実際、春闘においては、月例給与の引き上げのみならず、同時に交渉される一時金においても増額回答が目立っており、その理由として物価高や人材確保を挙げる企業も多かった。月例給与の増加が支給月数の増加と相まってボーナス増に繋がる面もあり、24年のボーナスは高い伸びになる可能性が高い。なお、ボーナスの増加は中小企業でも実現するとみられる。中小企業は大企業に比べると業況は厳しいものの、人手不足感は大企業よりも強く、防衛的な賃上げを行わざるを得ないだろう。

  • 24年春闘では賃上げ率が5.24%(連合調査、第3回)と非常に高い伸びとなっており、事前の予想を大きく上回る賃上げが実現したとみられる。こうした賃上げを受け、今後、所定内給与の伸びが高まることが予想されることに加え、ボーナスの増加も賃金の押し上げに寄与する。足元で名目賃金の伸びは前年比+2%程度で推移しているが、24年度は上昇率が明確に高まるだろう。

  • もっとも、物価上昇による実質購買力の抑制が消費の頭を押さえる状況は変わらない。再エネ賦課金の引き上げや電気代、ガス代の負担軽減策の終了でエネルギー価格が上昇することに加え、円安や原油高によるコスト上昇分の価格転嫁が行われることもあり、CPIコアは当面前年比+3%程度で高止まる可能性が高く、賃金の実質化に用いられる「持家の帰属家賃を除く総合」では+3%台の推移が予想される。名目賃金の上昇率拡大により実質賃金は24年7-9月期にプラス転化し、消費を支えるとみているが、物価上昇の影響で実質賃金の増加幅は限定的なものにとどまる可能性が高い。個人消費は持ち直しが見込まれるが、回復ペースは緩やかなものにとどまると予想している。

第一生命経済研究所
(画像=第一生命経済研究所)
第一生命経済研究所 シニアエグゼクティブエコノミスト 新家 義貴