事業承継12

今回は生命保険を活用して企業の事業承継に必要な資金調達を図る方法についてまとめていきたいと思います。

【参考 オーナー企業のための事業承継】

オーナー企業のための事業承継vol1「事業承継の必要性と円滑化のための法制度とは?」
オーナー企業のための事業承継vol2「後継者選びのポイントとは?」
オーナー企業のための事業承継vol3「後継者選びのポイントは?その2」
オーナー企業のための事業承継vol4「建設業界に学ぶ許認可事業の事業承継って?」
オーナー企業のための事業承継vol5「会社の現状を把握するポイントとは?」
オーナー企業のための事業承継vol6「企業の事業承継の際の法律上の問題点とは?
オーナー企業のための事業承継vol7「家族の絆を守る後継者以外への配慮とは?」
オーナー企業のための事業承継vol8「後継者の適性・選定のポイント」
オーナー企業のための事業承継vol9「種類株式を使った事業承継?」
オーナー企業のための事業承継vol10「贈与税の注意点って?」
オーナー企業のための事業承継vol11「代表者の個人保証・担保提供の問題って?」


◉事業承継のための資金〜会社の経営維持〜


企業の事業承継を円滑に進めるためには、会社に可能な限り多くの流動資金を確保しておくことが重要となります。つまり、キャッシュフローの確保が重要となります。

上場企業などのごく一部の企業を除いては、会社は、経営者様の人脈や経営センスなどによって成り立っている側面が非常に大きいというのが実際のところです。もちろん、登記簿に記載されている資本金の額や財務諸表の数字なども会社を信頼するための大きな指標となっています。しかし、実際に日々の経営においては、経営者様個人の経営の資質や人間性、人脈力などが重視されるのが日本企業の特徴であると言えます。いわばウエットな関係が日本の経営の特徴と言えるでしょう。

そのため、事業承継の実施により企業の経営者様が変わってしまうと、一時的に取引先との関係が疎遠になるなど経営状況の落ち込みが生じる可能性が非常に大きくなります。後継者様が自らの経営手腕や人間性、人脈などが十分に発揮されて信頼を得るまで、一時的に会社の業績が低迷するというケースがあります。
そこで事業承継の実施の際には会社内部に多くの資金を確保し、体力を強化して、売上が落ち込んでも会社が傾かないようにする必要性があります。


◉事業承継のための資金〜旧経営者の引退後の生活〜


一方で、事業を引退される経営者様の事情も資金の必要性に影響することがあります。
つまり、事業承継の実施により、会社の経営権は後継者様に譲ってしまうため、従来の経営者様は、事業引退後の生活資金を確保する必要性があります。そして、この場合に退職金の支給という形で多額のキャッシュアウトが必要となる可能性があります。
もちろん、事前に十分な蓄えがあるなどの際には、慰労退職金を支給しないなどにより会社の資金を優先するということも可能ですが、事業を完全に手放すこととなる以上、慰労退職金などの形である程度の生活資金は確保する必要があります。

このように事業承継実施の際には、会社の経営維持のためや事業からご引退される経営者様のために多額の資金を確保しておくことが重要となります。
(なお、事業承継実施の前段階として後継者に株式を集中させるためにも多額の資金が必要となりますが、この資金調達は、事業承継実施の前段階の問題なのでここでは別問題として割愛します。)