◉ ホームバイアスの改善は世界的な潮流
とは言え、少なくとも日本を含め主要国ではホームバイアスの改善が世界的な潮流となっています。以下は、内閣府の『平成25年度 年次経済財政報告』より引用した主要国のホームバイアスの推移を表した図です。日本では対象国と比べて、株式・債券両方においてホームバイアスの傾向が強い事が分かります。(米国は債券についてはホームバイアスが強いです。)また、日本を含めて全体的にホームバイアスが改善しつつあるという傾向も見られます。
図表:ホームバイアスの推移
出典:
『平成25年度 年次経済財政報告』(内閣府)よりコラム3-4図
より引用
日本においては株式におけるホームバイアスが特に改善し、債券についてはあまり変わっていないという傾向がありますが、この背景には、日本の長期的な株式投資の低いリターン、国債投資の安定したリターンがあると考えられます。
とは言え、日本においては個人金融資産に占める投資信託の割合が増え続けている傾向があるので、必ずしも日本人全体のホームバイアスが減少しているとは言えない事に注意する必要があります。
◉ 円安で「円建て利益が増えた」という記事で喜ぶ内向き志向
その理由に、日本では相変わらず「円安の影響による海外事業の利益改善」というニュースが大々的に報道され、実際、円安を評価して輸出が多い企業に株式投資を行う投資家も多い事が挙げられます。
1$ = 80 \が1$ = 100\になった場合、米国で同じだけ商品が売れた場合、確かに日本円換算で25%売上が増加するわけですが、別に米国において商品が値上げして売る事に成功したわけではないですし、ドルベースで考えれば何も変わっていません。
結局、この利益改善というのは企業が持つ力によって実現したものではないし、その利益も日本円ベースで考えた場合の話に過ぎません。トヨタ自動車のようなグローバル企業は世界全体で経営を考えているので、日本円ベースで利益が増えたからと言って一喜一憂しません(寧ろ、世界全体で為替レートの変化で利益が大きく変動しないように経営計画を立てるはずです)し、それを内的要因とも考えません。
(但し、日本の投資家やメディアは喜ぶので、戦略としては利益改善を強調して発表するでしょう。)
グローバル企業が円安によって利益改善した事に踊らされているというのはホームバイアスに陥った投資家の典型的な行動と言え、その内向き志向を世界目線に相対化するという作業は重要であると思われます。
◉「日本から出ないから関係ない」という人へ
一方で、「どうせ日本から出ないし、これから日本経済が回復する事を考えれば、国内投資中心も悪くない」と考える人も多いでしょう。円ベースだけで考えるから円だけを見れば良いというのは確かに一理あるかもしれませんが、それでも日本が不況に陥った場合や、日本がインフレに見舞われた場合などには、資産価値の目減りは不可避になります。
特に、今の政権・日銀は大胆なリフレ政策を行い、インフレ誘導を行う事を目指しています。インフレ誘導の為の金融緩和だけでなく、これから定期的に消費税が増税される見込みがある中、インフレ率が高くなる可能性は十分にあります。
そうしたリスクを軽減する為にも、日本だけに投資するのは安全な投資方法とは言えず、海外に資産を分散させるというのは、これからますます重要になってくるでしょう。
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BY T.T:経済学修士号を取得後、株価推定の事業・研究している。