金融関係者も注目するレイ・ダリオ氏の「今は1937年と同じ」発言

米金融当局は6月か9月の利上げを示唆しており、見送るのは難しい状況だとの見方も示している。具体的にどの程度の引き締めが行われれば混乱を引き起こすかは、ダリオ氏自身も金融当局にも分からないと指摘している。

その上で、連邦準備制度は通常よりも遅く、用心深く臨むことに越したことはないと述べ、この報道は世界各国のメディアでも取り上げられ、政府関係者もこの発言に非常に注目しているのだ。

4月の米連邦公開市場委員会(FOMC)声明は、インフレや労働市場、国際的な金融市場の状況を勘案した上で利上げ時期を決定するとした前回声明をそのまま継承し、雇用の改善とインフレ率上昇の合理的確信が得られた時点で利上げに踏み切るとの見解を示唆した。

しかし、直近の米国の経済指標は軒並み悪化しており、4月29日に発表された米1-3月の実質GDP成長率は0.2%と事実上ゼロ成長近くにまで落ち込んでいる。また4月の消費者信頼感指数も95.2(前月101.4)と事前予想から大幅に下振れしており、とりわけ雇用に対する不安が高まりつつある。

こうした中、5月8日に発表された4月の雇用統計はほぼ事前予想通りの非農業部門の雇用者数は22.3万人増加、失業率は5.4%へと低下した。しかし3月分の非農業部門の雇用者数は12.6万人(速報値)から8.5万人に改定され、発表直後の為替市場は内容を消化できずに上下にぶれることとなった。

ただ、株式相場は利上げの後ずれを意識してこれを好感し大幅に上昇するといういい所取りの解釈をし、依然として米連邦準備理事会(FRB)の利上げ時期には不透明感が漂っている。こうした中で金融関係者が注目をしているのがブリッジ・ウォーター・アソシエイツのレイ・ダリオ氏の「今は1937年と同じ」という警鐘発言だ。


1937年の亡霊とは?

1937年というのは金融緩和の環境で米国経済が回復し、FRBが利上げに動いた年である。その結果、国債は大幅に売られ金利は逆に上昇、株価は1937年3月高値194ドルから1938年3月にかけて50%以上急落してしまった。

これを受けてFRBは再び金融緩和に動いたが、この後もNYダウは1942年4月28日の92ドルまで下落し、1937年高値の194ドルを回復したのは1945年12月8日のことで、戦時中という不幸な時期も重なったが実に相場回復に8年の歳月を費やすこととなったわけだ。

この1937年の再来という説は、FRBの中でも亡霊としてかなり影響を与えている事象のようで、経済指標の状況が今後さらに悪化し雇用の改善がはかられなければ、長期停滞論をベースとしたマサチューセッツ工科大学(MIT)学派がイニシアチブを握るFOMCでも利上げ時期に具体的な影響を及ぼす可能性も指摘され始めている。

一方で大統領選挙が本格化する過程では共和党が金利の正常化を求めてくる状況下において、イエレンFRB議長がレイ・ダリオ氏の警告にどこまで耳を貸すのかが注目される。(ZUU online 編集部)

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