発表される経済指標にその都度右往左往しつつも、市場参加者の間ではFRBによる米国の利上げ開始が秋口との見方でコンセンサスになりつつあるように思われる。
その話題とともに、「米国が最初の政策金利引き上げに着手するとドルは急落する」との過去の経験則に基づいた見方がメディアなどで散見される。確かにタイミングがサプライズでない限り、利上げというアクションは為替相場においては絶好の“材料出尽くし”のきっかけとなりやすい。果たして、今回ドルを取り巻く環境はどうであろうか。
実際に利上げとともにドルは下落しているのか
まず、実際に過去の動きをグラフで見てみよう。
ドル円で見てみると、現行のFOMC方式(FF金利誘導目標設定)で利上げに転じた時期は3回あり、確かにそのようなアノマリーがあるようにも見える(グラフ内赤丸囲み部分)。
1990年以前のドル円ではプラザ合意による影響が大きいため、別途ドルインデックス・ベースで変動相場制移行後のもっと長期のチャートを見てみよう。
1999年を除き、いずれもドルが下落していることが確認できる。また1999年については、いわゆる2000年問題に伴う流動性の供給と、その回収という特殊事情があったので、アノマリーから排除しても差し支えないであろう。
では、現在のファンダメンタルズ面から見て、今年以降ドル下落が起こり得る環境にあるといえるだろうか?
日米金融政策の違いも、良く検証すると…
足元のドル円の上昇は米国の要因に依るところが大きく、その持続性には円のサイドから追加の材料が必要となろう。翻って本邦では、物価目標達成の見通しを修正した日銀が、頑なまでに追加緩和には否定的な態度を示している。また、現状の円安レベルからもたらされているインフレ期待効果に甘んじて、一部では「緩和の必要性も薄れつつあるのでは」との見方も台頭している。
片やその一方で、米国の利上げに対する見方についても、市場では決して大幅なものになるとの予測はされていない。シカゴ商品取引所(CBOT)で取引されているFF金利の先物価格から算出される金利は、市場参加者の予測値を集約しているといえるが、6月2日現在の終値価格を基にすると、3年後の予測政策金利は2パーセントにも届いていない。その証左は、長期債利回りが2%台前半で低位安定していることからも見てとれる。
この程度の期待値では、少なくとも金利差という観点からは継続的に資金を呼び込むという、最も大事な投資家インセンティブは引き起こしにくいであろう。
また、実に12年ぶりという1ドル=125円超えのレベルでは、日米当局の為替相場に対する許容度についても検討が必要だ。結局、5月のG7においては為替に対する具体的な言及はなかったものの、財務大臣、日銀総裁ともに「急激な変動は好ましくない」「為替相場はファンダメンタルズに即して安定的に推移することが望ましい」などのソフトな口先介入を行っており、政府としても円安を歓迎していないことは明白になりつつある。
1ドル80円台のときに盛んに話題に上った実効レートベースで見ると、現在の日本円はプラザ合意以前のレベルに逆戻りしていることになる。
さらに2016年のスケジュールまで考慮すると、米国では大統領選挙、日本では参議院選挙という大きな政治的イベントが控えている。米国ではもはや数年に一度の定例行事となっている自動車メーカーを中心とした産業界からのドル高批判、日本では円安がもたらす輸入インフレが家計に及ぼす負担増懸念などの影響を考えても、2016年は今年よりもますます円安傾向が志向されにくい状況となるのではなかろうか。(ZUU online 編集部)
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