休日料理の代表格は、ワチェとオモトだ。ワチェは、黒豆ご飯(日本のお赤飯のよう)に、チキンや魚、卵、マカロニ、サラダ、ソース、シト(ご飯によく添えられる香辛料)をごちゃ混ぜにしていただく。オモトは、おにぎりをさらに固めてボール状にした主食で、スープに浸して食べる。炭水化物中心の、重い食事ばかりだ。

ガーナのどこのスーパーマーケットにもあり、今や専門屋台も出るほど国民の食卓に浸透したインドミというインドネシアの即席麺ブランドがあるが、それもここ最近のことだという。ナイジェリアで生産され、ガーナに輸出されているが、当初のビジネス展開は容易ではなかったそうだ。

この地域にはもともと、麺を食べる文化がなかったため、マーケットでインドミの作り方デモンストレーションを行ったり、無料サンプルを配ったりするなどして、「麺文化」を創りだすことに相当労力を費やしたという。現在も、広告を貼ったバンを利用してたくさんの営業マンが駆け回り、販売ルートを確保すると同時に、一般大衆への認知度を高めている。


現地で根付く日本の食品も

実は、このインドミにも負けない、現地で圧倒的な知名度を誇る日本の食品がある。GEISHAという、川商フーズのサバのトマト煮の缶詰だ。日本では販売されていない、アメリカ、ヨーロッパ、中東、西アフリカの20か国以上で流通する商品で、100年以上の歴史を持つ。海外展開を始めた当時は、社員が缶詰をリュックに詰めて各国へ赴き、販売をしていたという。

トマトベースのスープ料理が多いこの地域では、1970年代後半から爆発的に売れ始め、1981年にはナイジェリアで4億缶も売れたという。これは当時、ナイジェリア国内で流通していたサパ缶詰の90%のシェアを占めていたという。現在では、安価な類似品が増え 、マーケットシェアは下落しているものの、 甘みと深みのある他が追従できないこだわりの味、品質を支持する声は依然として根強い。

街中の売店では、前述した定番調味料、食材、缶詰だけでなく、コビという魚を塩漬けにした日干しが販売されていることもある。水に戻して好みに合わせて塩加減を調整したものをシチューなどにするのだが、これが、恐ろしい臭気を放つ。日本でいう、クサヤそのものだ。あまりの臭いに、もう二度と家で調理してほしくないと思うのだが、コビの出汁の効いたシチューはクセになる美味で、ついつい手を伸ばしてしまう。

欧米人が苦手な「魚臭い」ものも、ガーナや西アフリカの食文化には存在しており、年々、国内での消費量が下降している水産業界の新たな進出先として、面白い市場だ。何しろ、ガーナ人にとって「食」は、生活必需品であると同時に、何よりの楽しみ、娯楽でもある。

豊かではあるが、バリエーションに乏しい食文化の中で、新しいものに対する好奇心は強く、スーパーでは、新商品が店頭に並んだ際の売れ行きは著しいという。

彼らの食文化と融合する新しい食材が、日本にもたくさん隠れているのではないだろうか。その場合、キオスクにも陳列できる常温保存可能な、日もちするものが望ましいだろう。

現在のマーケティング予算のほんの一部を都合し、5年以上のプランをもって草の根展開すれば、国内で縮小するマーケットでシェアを保持、拡大するよりは安価に、ガーナを中心に西アフリカ各国で市場を独占することも夢物語ではない。

<著者プロフィール>
大山 知春(おおやま・ちはる)MBA取得後、2013年、ガーナにて、ECとコンサルティングを軸とした MindNET Technologies Ltd を共同設立、ガーナ初のファッションオンラインストア VIVIA を立ち上げる。その後、ガーナと日本の通商活性化を目的とした VIVIA JAPAN を設立。ガーナ原産天然素材を使ったオール・ナチュラル・スキンケアブランド JUJUBODY を展開する。

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