リーマンショック後の景気浮揚策として取り組んだ米国

米国ではリーマンショック後の景気浮揚策として、医療機関における電子カルテ導入支援策が推進された。これは、2008年に制定された「2009年米国再生再投資法(ARRA)」と「経済的および臨床的健全性のための医療情報技術に関する法律(HITECH)」にもとづいている。

電子カルテの相互運用性や標準化に関しては、あらかじめ政府機関が定義した標準規格をクリアしたベンダー製品のみを、経済インセンティブの対象としている。あわせて、患者データ保護を規定した「HIPAA(Health Insurance Portability and Accountability Act of 1996:医療保険の携行性と責任に関する法律)」に基づくセキュリティ(プライバシー)対策の強化や、電子カルテのユーザーエクスペリエンス(UX)、ユーザーインタフェース(UI)標準化活動を推進してきた。

その結果、米国における病院の電子カルテ導入率は、2009年時点の12%から2012年時点には44%まで増加した。今後は、電子カルテシステムを起点とする医療データの連携、利活用促進が政策目標となり、支援策の重点も地域医療連携システムにシフトしている。


日本の課題は標準化と相互運用性

日本では2001年、IT戦略本部の「e-Japan戦略」を受けて、厚生労働省が「医療のIT化のグランドデザイン」を策定。2006年度までに400床以上の病院、全診療所の6割以上に電子カルテを導入することを目標に掲げたことが契機となり、さまざまな電子カルテ導入支援策が実施された。

厚労省によると、400床以上の病院の電子カルテ導入率は、2002年度の2.9%から2008年度には38.8%まで増加している。

ただし、一般病院全体の導入率は2008年度で22.7%にとどまり、現在も、中小規模の医療施設においては電子化は大きな課題だ。またデータ交換の標準規約がないまま、個別に電子カルテシステムの構築が進んだ結果、診療情報の項目やデータ形式が微妙に異なるなど、相互運用性の妨げとなる不具合が生じていた。

このような背景から、新会社「日本医師会ORCA管理機構」には、、電子カルテの標準化と相互運用性という課題を克服し、中小医療施設で遅れているICT利活用の推進役として地域包括ケアの実現につなげられるかという点で注目が集まっている。(笹原 英司、NPO法人ヘルスケアクラウド研究会理事)

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