SMAP解散
(写真=PIXTA)

連日メディアで報道されているSMAP解散・独立問題。芸能界の話題であるが、ビジネスのマネジメントの観点で見ることもできる。ここでは、あくまで報道されている情報を元に、今回の騒動を見てみよう。

企業としてのジャニーズ事務所、商品としてのSMAP

SMAPの属するジャニーズ事務所はタレント・エージェントという企業として、SMAPはその企業が扱う商品としてとらえることができる。タレントという人間を「商品」と呼ぶのに抵抗感のある人(特にタレント側)は多いが、歌であれバラエティー番組であれ、タレントの「価値」を売っていることにかわりはない。特にCM出演はその価値をクライアント企業最大限に評価して利用するので、出演料が高額になるのである。

タレントという「商品」である以上、そこには市場価値(この場合はSMAPまたはそのメンバーというブランド価値も含めて)が存在している。2014年のSMAPの売り上げは、ファンクラブ収入、コンサート収入、音楽収入、CM契約料、テレビ出演費を含めて200億円以上と報じられている。

これは直接収入であり、CM出演している商品の販売効果を加えると、それ以上の価値を生んでいる。その価値はどこよりも事務所が理解しているだろう。だからこそ、ジャニーズ事務所はタレントの価値を最大化するマネジメントに非常に長けており、売り出し方はもちろん、タレント活動を様々なメディアに展開させる戦略や権利関係のマネジメントは業界でもトップクラスだ。

ちなみに当然ではあるが「SMAP」はジャニーズ事務所によってショービジネス全般と各種商品展開での商標登録がされており、独立した場合は事務所のグループ名は実質使うことができない。そのため仮に全員が独立したとしても、それは「SMAP」と名乗ることはできず、ブランドとしての価値を下げるばかりか、下手をすれば消滅してしまうことになる。独立を画策した人はこの点をどのように理解・判断したのだろうか?

顧客不在の決断ではなかったか

SMAPという商品の顧客は2種類に分類できる。タレント価値を認めて対価を払っている「ファン」と、その価値を仲介しているテレビ局・レコード会社・イベントプロモーターなどの「メディア」だ。

「誰も得をしない」と報道されている通り、もし解散・独立してもどちらの顧客にもメリットはないと言える。むしろ商品価値を自ら下げ、その価値も市場に流通しない状態にしてしまうことになる。成功したからといって独立するのは「筋が通らない」とコメントされたと言われているが、これは義理や人情の問題として見るよりも、自分の価値を自ら下げる選択よりも維持・強化するにはどうすればいいかを検討した結果と見るほうがいい。その観点からは賢明な判断だろう。

マネジメント上の責任は?

扱う商品全てを直接コントロールする企業のトップとしてよく知られたのが、Appleの故スティーブ・ジョブズ氏だ。彼は細部に至るまで自身の目で確かめ決定を下すことで商品のデザインやクオリティー、マーケティングまですべてをコントロールしていた。そのためにマネジメント層を徹底的にコントロールしていた。

今回の一件ではSMAPのマネージャーが暴走したように報じられているが、企業マネジメントとして見た場合、トップがコントロールできていなかったことになる。その点で今回の騒動でのトップマネジメントの責任は非常に大きい。

ショービジネスの世界ではタレントはもちろん、マネージャーも個人の能力や力量に依るところが大きいのが特徴だが、マネジメントオフィスとして運営している以上、組織をマネジメントすることは当然だ。それが出来ていないことを自ら露呈させるのには別に意図があるのでは?と勘繰ってしまいさえする。

BCG流にいえば「キャッシュカウ」。いきなり“ディスコン”するほどか

企業トップが自社の売れている商品の価値を認めていないというのは、異常な判断だろう。本心はともかく表向きはそのようにインタビューで発言している。

それがたとえ自分が直接コントロールせずに現場に任せた結果だとしても、実際に顧客に認められている「売れている」商品をトップマネジメントが否定することは通常ありえないだろう。さらには非常にロイヤルティーが高く25年の長きにわたって継続的に安定した利益をもたらしてくれている商品だ。BCGのポートフォリオ・マネジメントでいえば「キャッシュカウ」に当たる。その商品に都合の悪い点があれば、早急に対応してキャッシュカウであり続けるように注力するだろう。

キャッシュカウをいきなり廃版(マーケティング用語で言う「ディスコン」)にするということは、よほど取り返しのできない瑕疵が見つかり回復が不可能と判断されたことになる。果たして、市場価値や顧客満足の観点から、取り返しのつかないほど大きな瑕疵があったのだろうか?今回の一件を商品の瑕疵と言っていいかは議論が残るが、最終的には責任は販売する企業が負うのが通常だ。この場合はジャニーズ事務所であり、タレントではないだろう。

落とし所は決まっているのではないか?

メディアに掲載される記事はジャニーズ事務所の了解を得ているものが多いと言われている。その通りならば、今回の独立・解散騒ぎには落とし所が設定されており、それに向かうように関係各所を調整しコントロールすることが、マネジメントが行うべきことだろう。

もしそれがなくて記事掲載を了解しており、SMAPを解散に追い詰めるとしたら、マネジメントの自尊心を満足させるだけの決定に留まるだろう。一方、SMAPメンバーについては、自身の価値と及ぼすであろう影響の認識が足りなかったこと、そして理性的な判断力が決定的に足りないことばかりが目立つ。まともな企業であれば、市場価値が高くすでに顧客も獲得している商品であれば、「改良再発売」とするところだ。

さて今回の誰も得をしない騒動を、ジャニーズ事務所はどのように収束させようとしているのだろうか。(ZUU online 編集部)

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