(写真=Thinkstock/Getty Images)
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2016年は年初から大荒れの相場となった。大発会から6営業日連続で株価は下落し歴史的にも不名誉な記録となった。「申酉騒ぐ」という相場格言に相応しい幕開けだ。
その一方で、投資信託に大きな地殻変動が起こっている。新興国、資源国、高金利通貨が主要な投資対象であった日本の個人マネーが日本株を投資対象とした投資信託に向かっているのだ。

日本株投信に資金が流入

投資信託の運用成績は15年には既に悪化していた。公募投信は4年ぶりに運用損を計上していたことが明らかとなった。分配金を払い出す前のベースで2兆円規模とみられる損失が発生したと見られる。

配金を投資家に払い出した額が約6.4兆円であったことから、分配金も含めると8兆円を上回る資金が運用で減ったことになる。新興国に対する先行き不安、中国経済の失速、米国の利上げなど、海外発信のさまざまな不安要因が海外で運用する投信の評価額を押し下げた。

ハイイールド、MLPなど資金流出相次ぐ

ある投信評価会社によると、15年の日本株投信への資金流入額(解約などを差し引いた純額、上場投信など除く)は昨年12月18日時点で1兆6363億円となり、00年(4兆円超の流入)以来の水準となった。それに対し、海外中心に低格付けの高利回り(ハイイールド)債を組み入れているタイプの投信は14年8月以来、17カ月連続で資金が流出している。天然ガスや石油のインフラ(パイプライン、貯蔵施設など)に投資するMLP(マスター・リミテッド・パートナーシップ)も原油価格の低下から資金が流出している。

投資家の嗜好がこれまでと明確に変化していることは明らかだ。これまで投資家は分配金を重視してきた。少しでも分配金の高い投資先を求め、新興国や資源国、高金利通貨に投資してきた。従来の分配金重視の投資がもはや通用しなくなったことに気付いた投資家が日本株に資金をシフトしつつあることは事実だ。

地殻変動の影で…

投資信託において新興国や資源国、高金利通貨から日本株へと大きな地殻変動が起こっていることは事実だ。投資家がマーケット環境に応じ適切な投資対象を選択していることは、当然であり健全なことだ。しかし、売れ筋のファンドの顔ぶれを見ると、理解するのが難しい複雑な仕組みを持つ商品も存在している。

日本株に投資しながら高額の分配金を毎月受け取るある投資信託を例にみてみよう。このファンドは直近で1万口あたり150円を超える高い分配金を出している。通常、日本株に投資しながらこれだけ高額の分配金を毎月受け取ることは不可能だ。それだけに、このファンドに高い人気が集まるのも納得だ。しかし、このファンドが一般の投資家には理解が困難な複雑な商品であることも確かである。

実は、この商品には非常に複雑な仕組みが組み込まれている。日本株という名前がついていることから、誰もが日本株に投資するファンドであることを想像するだろう。

それは間違いではないが、「株式カバードコール戦略」および「通貨カバードコール戦略」を行うことで、オプションプレミアムの確保を目指す。あなたはこの意味を理解できるだろうか。投資対象であるブラジルレアルや日本株の上昇分の一部を放棄する代わりにプレミアムと呼ばれる収入を得ている。ブラジルレアルのコールオプションを売却すること、そしてTOPIXのコールオプションを売却することで、オプションプレミアムを得て、分配金を確保しているのだ。

そのため、「TOPIXがこれだけ上昇しているのに、自分の投資信託の基準価額が上がらない」という状況になるのはオプション取引によって、ある一定以上の上昇分を放棄しているからである。

ただ、他に資金流入が多かったファンドを見ると、必ずしも分配金を重視する投資家ばかりではないこともわかる。企業統治改革による自己資本利益率(ROE)改善に注目したファンドにも資金が流入している。これまでになかった視点から日本株ファンドを選ぶ投資家が増えている点も注目すべきだ。

正念場を迎える日本株投信

今年からNISAの非課税限度額が100万円から120万円に引き上げられた。さらにジュニアNISAもスタートする。投資家がより有利な投資対象を求める動きが強まるだろう。運用会社や金融機関は投資家にとって本当に有用な投信を提供することができるのだろうか。

日本株投資へのマネー回帰が一時的なもので終わってしまうのか、それとも本当に地殻変動と呼ぶに相応しいものなのか。現段階ではまだ判断を下すことは難しい。日本株は年初から大きな試練に直面している。複雑な仕組みで分配金を確保しようとするファンドを一方的に否定することはできない。投資家が求めるからこそ、ニーズがあるからこそ、これだけの資金を集めることができたというのは事実だ。

しかし、目先の珍しさや一時的な分配金の高さを売りにするだけでは地殻変動は幻に終わってしまうのではないかと危惧する。いまこそ、本当の意味で日本株の魅力を投資家にアピールできるような投信の存在が必要では無いだろうか。(ZUU online 編集部)

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