日本銀行が1月29日に日本の歴史上初となるマイナス金利政策に踏み切ったが、マイナス金利自体は既にスイス、スウェーデン、デンマークでも導入されている。量的緩和政策と併用するという点でも欧州中央銀行(ECB)と共通するが、巨額の負債を抱え、何十年間も低迷している世界第3位の経済大国という観点から、「日本は最も興味深い例となる」という見方が強まっている。

富士通総研シュルツ氏「必要なのは融資ではなく投資のチャンス」

日銀の動きをECBと重ね合せる見方も多いが、マイナス金利による各中央銀行の狙いはそれぞれ異なる。

デンマークとスイスが自国の通貨高を回避する手段としてマイナス金利を導入したのに対し、ECBとスウェーデンはデフレの回避策として、日本はその両方の理由から今回の決断に至ったといわれている。

マイナス0.1%の金利を設定することで企業や個人への融資を促進し、それによって経済成長率を引き上げようという狙いだが、日本の新たな金利政策に重大な落し穴が隠れていることを指摘する声も多く聞かれる。

富士通総研で国際経済の上席主任研究員を務めるマルティン・シュルツ氏は、「日銀の最後の切り札」だったマイナス金利の効果に疑問を唱えている1人だ。

シュルツ氏は英BBC放送のインタビューで、ユーロ圏で経済危機を抑えるためにマイナス金利を導入せざるを得なかった背景と、経済成長の速度をあげる目的で金利を落とし込む日本の背景の差を指摘。「銀行の貸し渋りだけではなく、企業の借り渋りも日本経済の低迷を招いた」として、マイナス金利の導入がこうした流れに変化をもたらす可能性が低いという見解を明らかにした。

「ビジネスが求めているのは融資ではなく、構造改革によってのみもたらすことができる投資のチャンスだ」

何年にもわたって日本は「成長期を過ぎた先進国の成れの果て」というレッテルを貼られていた。1167兆円にも膨れ上がった負債、減少する人口と生産性、高齢化社会など、日本が直面している数々の深刻な問題に対し、マイナス金利が長期的にどれほどの成果をもたらすのかという点に世間の関心は集中している。

数々の深刻な問題を抱えながらも、単身で先進国にとって一世一代となる賭けにでた日本。そこが欧州のマイナス金利導入国とは最も大きく異なる点だろう。(ZUU online 編集部)

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