生前贈与,孫への教育資金一括贈与
(写真=PIXTA)

2016年に、結婚してから離れて暮らす長男に念願の初孫が誕生したAさん。ちょうど長年にわたり資産を預けていた最寄りの信託銀行から、「教育資金贈与」という生前贈与の制度が流行っていることを聞いた。お祝いの気持ちを込めて、初孫を対象として上限いっぱいの1500万円を預ける。

ところが、その3年後に長女にも子どもが誕生。2人目の孫には500万円の贈与がいっぱいで、長男と長女のあいだに「しこり」を残すこととなった。話し合ってすぐに解決はしたものの、Aさんは孫のあいだに生じさせた「不平等感」に申し訳なさを感じることとなった。いま、生前贈与をめぐる「長男と長女の関係」で、このような光景が多く見られるのだ。こういった無用な争いを回避するために、教育資金贈与を活用する際のポイントを紹介していく。

教育資金贈与とは?

教育資金贈与は、正確な名称を「直系尊属からの教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税措置」という。2013年4月1日以降導入された非課税措置で、2019年(平成31年)3月31日までの贈与が対象だ(終了期限は一度延長済み。再度延長される可能性あり)。

通常の贈与は贈与税の基礎控除(上限110万円)を超える分について、贈与税が課税される。教育資金贈与では、直系尊属(父母、祖父母など)から30歳未満の子や孫への教育資金の贈与について、上記期間内の1500万円までの金額が非課税になる制度だ。贈与の世界では、相続開始3年以内の贈与について「相続財産に課税する」という決まりがあるが、この教育資金贈与に該当する贈与については、加算する必要がないのも大きな特徴だ。

入学時の学習机やランドセルなど、「おじいちゃん・おばあちゃん」世代から孫へプレゼントしていた、という家庭にとっては、相続対策となり、かつ孫の喜ぶ顔を見られる、という一石二鳥の嬉しい制度だ。実際に親戚が顔を揃えるお正月にランドセルなど学習用品が良く売れる、という話も聞いたことがある。学校費用に限定されず、塾や習い事の費用も含まれるため、とても使い勝手がいいと、教育資金贈与の導入直後は申し込みが殺到した。当初、教育費に含まれるか意見がわかれていた通学定期代や留学渡航費についても、平成27年の税制改正で対象に追加されている。

この人気を受けて、終了時期の同じ平成31年までの期間限定で、「結婚・子育て資金の一括贈与に係る非課税措置」が導入された。祖父母や父母から、「20歳以上50歳未満の子や孫」へ生前贈与として上限1000万円までが非課税となる。教育資金贈与の成功モデルを活用した、拡大措置ともいえるだろう。

教育資金贈与のデメリットは「長男・長女の関係」

一方、教育資金贈与にはデメリットや、「争族のきっかけとなった事例」も報告されている。それは、「孫はひとりではない」ということだ。

先の家族の場合、贈与金額に生じた差について、息子・娘間はなんとか理解をしてもらうことは可能だ。兄弟関係は金額の多寡で崩れるもの「ばかり」ではないし、平等を期するなら、孫への贈与金額以外でバランスをとればいいと思う。ただ、孫のあいだには「向こうだけ多く貰った」という不満が残ってしまうだろう。極端な言い方かもしれないが、それは自身や子世代がいなくなったあとも続く可能性すらある。納税額を抑えるためだけにこれらの非課税措置をフル活用すると、相続・贈与でもっとも避けたい、親族間で「しこり」を残してしまう。

それでは、教育資金贈与をはじめとした生前贈与の活用には、どんなことに気をつけるといいのだろうか。

生前贈与は、「総合的に活用する」ことが大切

このような事例の対策には、孫の誕生には差があるため、「総合的に生前贈与を使う」意識が大切だ。

たとえば教育資金贈与を活用するにしても、贈与1回分を少額にして、複数回贈与を行う場合は孫誕生にも対応できるだろう。結婚子育て資金の贈与についても同じだ。贈与手続きの手数料など短期間で見ればコストの上積みがあるが、家族親族間に「しこり」を残すことを考えると僅かな額ではないだろうか。このような対策も含めたうえで、非課税贈与を行うメリットを把握することが大切だ。信託銀行の担当者や税理士、FPといった専門家に相談し、俯瞰的に見て貰うようにしたい。

子どもの教育、結婚、出産。筆者に相談を寄せるお客さんを見ていると、このようなテーマの相談事はみんな明るい顔で話して貰える。このような「吉事」を、勇み足で生前贈与を活用するがために、「しこり」を残してしまうのは、とても残念なことのように思う。ぜひ、全体を見て、家族親族全員で孫たちの成長を喜び、見守るようにしていきたい。

工藤 崇 FP事務所MYS(マイス)代表
1982年北海道生まれ。北海学園大学法学部卒業後上京し、資格試験予備校、不動産会社、建築会社を経てFP事務所MYS(マイス)設立、代表に就任。雑誌寄稿、WEBコラムを中心とした執筆活動、個人コンサルを幅広く手掛ける。ファイナンシャルプランナー(AFP)。

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