g20,アベノミクス
(写真=Thinkstock/Getty Images)

1月の鉱工業生産指数は前月比+3.7%(コンセンサス同+3.2%)となった。3ヶ月ぶりの上昇で、指数としては2015年1月以来の水準までリバウンドした。

経済産業省の1月の予測指数は前月比+7.6%とかなり強くなっていて、グローバルな景気・マーケットの不安定感により下振れることがほぼ確実でその下振れ幅の予測が難しかったが、無難な結果になった。

2月の経済産業省予測指数は前月比-5.2%と大きな反動減が予想されている。生産と相関関係が強いと考えられる実質輸出は12月・1月に前月比-3.0%・-0.4%と弱い。中国を含む新興国向けを中心とした輸出環境がまだ不安定なことを示している。円高が進行してきたこともあり、計画通りの生産と在庫の積み増しには消極的になるだろう。

1・2月の振れの後、3月の経済産業省の予測指数は前月比+3.2%としっかりとしている。しかし、10-12月期には前期比+0.6%と3四半期ぶりの上昇となったが、予測指数通りであれば1-3月期は前期は-0.3%と再び下落に転じてしまうことになる。

経済産業省の鉱工業生産の判断は「一進一退」と不安定な形が維持された。

この不安定な中で在庫はしっかり管理されてきており、生産が底割れするリスクは今のところそれほど大きくはないが、先行きの不透明感は払拭できていない。

2010年のG20が貿易活動の抑制に

日銀は、12月の金融政策決定会合で、輸出の判断を「横ばい圏内」から「持ち直し」へ上方修正している。1月の月例経済報告では、政府は生産の判断を「弱含んでいる」から「横ばいとなっている」へ上方修正している。

新興国の景気減速やマーケットの不安定感に対する警戒感がまだ強く、地政学上のリスクが企業心理を抑制する可能性があることを考えると、輸出と生産がしっかり持ち直していることが確認できるまでには、まだ時間がかかると考えられる。

政府・日銀の景況判断の上昇修正モメンタムが一時的に下方にシフトしてしまうリスクがあり、その現実化が経済対策につながるかもしれない。

2010年平均の鉱工業生産指数の100.1に対して、2015年の平均は98.2と、下落してしまっている。グローバルな貿易活動が弱まったしまったのが理由と考えられる。

振り返ってみると、リーマンショック後の財政拡大の反動で、財政健全化の方向性で合意した2010年のG20が、グローバルな需要不足の原因となり、貿易活動を抑制してしまったと考えられる。

アベノミクスにグローバルな追い風か

そう考えると、金融政策への過度な依存への反動で、財政拡大を含めた政策を総動員することで合意した2016年のG20は新たな転換点かもしれない。

2010年からの5年間は緊縮財政などによるグローバルな需要停滞とデフレ懸念が特徴であったが、これからの5年間は財政が拡大気味になれば、グローバルな需要回復とインフレ復活が特徴になるかもしれない。

グローバルな貿易活動の縮小の力は弱まり、構造的には弱まってしまった成長率という現実はあるにしても、循環的に貿易活動は底を打ってくる可能性が出てきたと考える。

3月の全人代での中国の経済政策がまずは注目されるが、日本も2020年度のプライマリーバランス黒字化を目指す政策目標をグローバルな需要拡大に貢献するために柔軟化させることを、5月のG7の議長国であるだけにアピールしていかなければならなくなるだろう。

グローバルな需要拡大に貢献するような政策抜きには、金融緩和への過度な依存は、今回のG20で警戒された通貨切下げ競争を企図していると誤解を受けかねない状況になっている。

2016年度の政府予算成立後の補正予算による景気対策、そして2017年4月の消費税率引き上げを見送り、2020年度の東京オリンピックまでは、財政緊縮路線を緩め、デフレ完全脱却でグローバルな需要拡大に貢献する方針に転換する可能性が更に高まったと考える。

G20の結果は世界経済と政策が5年単位の転換点にあることを示しているのかもしれず、米国・OECD・IMFも日本の財政拡大を望んでいるようであり、2013年のG20で国際公約した2020年度のプライマリーバランスの黒字化の先送りはほとんど批判されないばかりか、グローバルな需要拡大のために歓迎されるかもしれない。

深刻な高齢化で日本はもはや財政を維持することができないという固定観念が、この20年間の日本経済の停滞の一因になっていたと考えられ、財政健全化の負担が軽くなり、デフレ完全脱却を目指すアベノミクスにはグローバルに追い風が吹いてきたと考えられる。

会田卓司(あいだ・たくじ)
ソシエテジェネラル証券 東京支店 調査部 チーフエコノミスト

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