TOB (公開買い付け) やM&Aで親子上場を解消する国内企業の動きが目立っている。親子上場解消の動きの背景と今後の展望、さらに、親子上場に限らずTOBやM&Aのニュースによって企業の株価はどのように動くのかについて解説する。

親子上場解消は時代の流れ

「親子上場」解消の動きが本格化 ? TOBやM&Aで企業の株価はどう動くのか
(画像=Jay Yuan / Shutterstock.com)

親子上場とは、親会社と子会社がそれぞれ上場していることで、親会社の連結決算に主要子会社の業績が反映されるため親子が上場している意味合いは少ない。むしろ、親会社と子会社は親子間での取引価格や配当といった経営政策において基本的に利益相反関係が生じるため、親子上場はコーポレートガバナンス的に問題があるとの指摘が多い。また、親子で上場していることは管理費などのコスト増要因であり、子会社株主への配当はグループ利益が社外に流出することにつながり、経営の効率面でも問題視されている。こういった背景から親子上場は縮小していく流れとなっている。

東芝は2019年11月13日、上場子会社3社 (東芝プラントシステム、ニューフレアテクノロジー、西芝電機) に総額2,000億円のTOBを実施し、完全子会社化する方針を発表した。グループ全社改革計画である「東芝Nextプラン」をもとに事業ポートフォリオの再編を急いでいる流れの一環だ。

三菱ケミカルホールディングスは同年11月18日、グループ内の主要子会社である田辺三菱製薬に対して4,900億円のTOBを実施し完全子会社化する方針を発表した。成長分野と捉える医薬品事業への経営効率を高めることが目的だ。

日立製作所は同年11月25日、グループ中核企業の日立化成の売却で化学大手昭和電工に優先交渉権を与えるとの報道があった。昭和電工は12月18日、9,600億円のTOBを通じて日立化成を完全子会社化することを発表した。日立は、日立物流、日立キャピタル、日立工機、日立国際電気などの子会社を次々と売却してアグレッシブに事業再編を行っている。

親子上場解消が加速してきた背景には、 (1) 事業ポートフォリオの「選択と集中」で事業領域を絞り、経営の効率化・スピード化を進めないことには日本の大手企業グループといえどもグローバルな競争に生き残れないこと、 (2) 投資においてコーポレートガバナンスがより重要視されはじめていること、 (3) 企業の手元資金が潤沢でTOBを仕掛ける資金的余裕があること、などがあげられる。

親子上場の解消では非上場となる子会社株が買われる傾向 ?

東芝が子会社3社を完全子会社化するとの報道が流れたのは11月11日、東芝が正式にTOBを発表したのが13日だった。その間、ニューフレアテクノロジーが2日連続ストップ高で4割以上上昇するなど、結局3社ともTOB価格にさや寄せして急騰した。田辺三菱製薬も日立化成の株価も同様の動きだった。

これは親子上場の解消だからというわけでなく、一般的にTOBで完全子会社化やM&Aをするときには現在値に対してプレミアムをのせて既存の株主に募集を掛けるのが一般的であるため、それを期待しての株価上昇だ。

応募者が少なくTOBが成立しない場合には募集価格を引き上げることもあり、第三者がさらに上の値段で新たなTOBを提案するなど株の争奪戦になるような事例もある。実際、今回のニューフレアテクノロジーではHOYAが東芝を上回る12,900円でTOBを提案している。

したがってTOBが発表されると、被TOB会社の株が買われ、資金負担をするTOBをする会社はファイナンスなどの資金需要も増えることから売られるというのが一般的な傾向だ。

日本株の投資テーマとして「親子上場解消」が浮上 ?

親子上場の場合、ガバナンスの見地などから株価が割安に放置されていることがある。従来では、親子上場解消が経営の効率化やガバナンスの強化として好感されたり、またTOB時の投機的な動きを期待し、株価が上昇するケースもあった。今回のように積極的な親子上場の解消が続くのであれば割安銘柄の再評価につながり、今後の日本株の一つの大きなテーマとなることが期待されよう。

(提供:大和ネクスト銀行


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