投資の勉強をしたいのなら、まずは少額で構わないので実際に投資を始めてみてはいかがだろう。メディアやセミナーで学ぶことはもちろん大切だが、実際にポジションを持ちどういった要因で相場が動くかを経験することで、さらに投資に対する興味が膨らみ、経験値を高めながら実践的な勉強を効率的に進めることが出来る可能性が高い。外貨預金は比較的少額で始められるので、 「金融投資」と「自己投資」を兼ねて米ドル投資をはじめた場合には、2019年に学べたコトは座学では得られないことばかりだっただろう。
投資を始めることは「金融投資」と「自己投資」
投資や金融商品に興味があっても、最初は判らないことばかりだ。仕組みもわからず、何を買っていいのかもわからないので、まずはネットや本で勉強したり、セミナーに参加して理論をある程度身に付けてからという人も多いのではないだろうか ? 長期の資産形成のために政府が導入した少額投資非課税制度 (NISA) は、2019年9月で1340万口座に達し、広く浸透したといえるだろう。しかし、口座開設しながらもまだ買い付けをしたことがない未稼働の口座が半数はあるとの指摘がある。多くの人は、NISAの口座は作ったものの、勉強してからと思い、そこから先に進んでいないのが実情だろう。投資は奥が深い。学んでから始めようと思うと、余計に始められなくなる。株式投資や外貨預金は比較的少額で始められる為、普段なじみの深いドルを対象とした外貨預金やなじみの深い企業への投資をまずは始めてみてはいかがだろう。
米ドル相場は海外情勢で動く
ドル円の相場は2015年以降、125円と99円のレンジ内で動いている。年間の変動幅は年々小さくなってきており、2019年は約10円、2020年は約8円と連続で過去最低の値動きとなった。これは、米ドルは世界の基軸通貨であり、日本円は日本が世界一の対外純債権国であるため、市場に米中貿易摩擦や地政学リスクといったリスクオフのときには安全通貨として買われ、同じ方向に動くことが増えていること、日本の製造業の構造変革が進み海外生産比率が高まったため実需のドル売り・円買い需要が減ったこと、日銀が長期のゼロ金利政策をとっており、日銀の政策変更など日本発の材料があまりでないことが指摘されている。
各国の通貨は、その国の景気、金融政策、金利などで動くというのが教科書的なファンダメンタルズの考え方であるが、現状では、日本の景気、金融政策、金利などに大きな変化は見られない。したがってドル円が動くときはほとんど、海外情勢などの外部要因で動くことが多い。
2019年でも、米中貿易摩擦、米国の金融政策、米国や中国の経済指標、BREXIT、中東情勢、北朝鮮情勢などが円が動く主要要因のほとんどが外部要因だった。
米ドル投資をしていたからこそ学べた3つのコト
2019年を通じてドル円は膠着感が強かったが、その中でもドル円の材料は色々とあった。投資していたからこそ学べたコト3つを紹介しておこう。
①フラッシュ・クラッシュ 日本中がまだお正月モードである2019年1月3日におきた。ドル円が108円台から一気に104円台までわずか数分のうちに4円もの円高が進んだのだ。きっかけは米アップルが業績予測を下方修正したことだと言われている。アップルは世界的な企業であり、アップルの業績動向は世界景気動向との関連性が高い。始めに、システム運用の一部のファンドが大きなドル売りに動いた。日本市場が正月休みで休場中のしかも早朝であり、市場の参加者も少ない時間の注文だっただけに、ドル円は大きく動き、ストップロスオーダー ( FX取引や株取引において、自分の予想に反して相場が突然暴落してしまった場合に備えて、損失を限定するために行うオーダー) が執行された。大きく相場が変動したときに、その流れにつくようにシステムを運用している高頻度取引 (HFT) がさらにその動きに乗じたことで起きたと言われている。2019年のドル円の動きは年間で8円程度。それが1日で4円動いてしまったのだ。ただこれは多大にシステム的な動きでありドル円相場はすぐにもとのレベルまで戻すことになった。このような瞬間的な動きを「フラッシュ・クラッシュ」と言う。
②逆イールドとFRBの利下げ 逆イールドは短期債利回りが長期債利回りを上回ること。通常債券は、償還までの期間が短い方が金利が低く、長期のものは高い。しかし、世界景気を下押ししかねない要因が発生し、長期金利が低下すると、長期金利が短期金利を下回る「逆イールド」が発生する事がある。過去の逆イールドは景気下落のサインであった。逆イールドは2019年8月に発生して、株安、ドル安の要因となった。ただ、米連邦準備理事会 (FRB) は景気下落を防ぐために7月の米連邦公開市場委員会 (FOMC) で10年半ぶりの利下げを決め、その後9月と10月にも利下げした。その結果、下振れ懸念が拡がっていた米国経済指標の多くが底堅さを示すようになり、株価とドルは回復する。
③トランプリスクとトランププット 2019年は米中貿易協議に振り回された1年だった。トランプ大統領が中国や中国企業に対してネガティブな発言をするたびに、株は売られドルも売られた。市場では「トランプ・リスク」という恐怖が広まった。ただ、トランプ大統領は、株安、ドル安になると、景気対策や利下げをちらつかせる発言をすることも多い。市場ではマーケットが下げた時に上げるプットオプションを文字って「トランププット」と言うようになった。
この3つの出来事で、損失を被った人もいるかもしれない。逆に利益を上げた人もいるだろう。いずれも、世界経済の動向や企業活動に起因するものだ。この時外貨預金を保有していた方は、経済のダイナミズムの中で、どのように為替相場が変化し、どのように経済が変化していったかを体感できていただろう。これは勉強して学べるものではなく、実際に投資をしたから経験できることだ。金融投資は結局、自己投資と並行していくのが一番いいのではないだろうか。
(提供:大和ネクスト銀行)
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