1,500万円までは子や孫へ教育資金を贈与しても税金がかからない「教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置」は、来年の3月31日まで利用できる。今回は、そのほかの贈与税の非課税制度と比較しつつ、あらためてこの制度の内容をみていこう。

孫への教育資金を非課税で贈与できるのは2021年3月31日まで

2021年3月まで、孫への贈与が1500万円まで非課税に。
(画像=maroke / stock.adobe.com)

2014年に不動産情報サービスのアットホーム株式会社が行った調査によれば、親から子への平均贈与額は、約564万円とのことだ。この金額だけを見れば、後述する「毎年110万円ずつ贈与」でも十分だろう。

しかしながら、中には孫の留学や医学部進学など、高額な費用のかかる教育を検討している世帯もある。このような世帯には「教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」が有効な手段の一つとして考えられるだろう。

ただ残念ながら、この制度が使えるのは2021年3月31日までだ。あまり時間がない中で冷静に判断するのは難しいが、一考の価値はあるだろう。

孫への贈与の方法は3種類

「教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」について確認する前に、他の節税策を含めて確認してみよう。贈与税をかけずに孫に贈与するための方法として主に次の3つがある。

1.教育費・生活費としての贈与は元々非課税

子や孫に対し日常生活に必要な範囲で、その都度教育費や生活費を渡すこと自体には、贈与税はかからない。ただし非課税となるのは孫が祖父母に扶養されているときに限られる。また、扶養関係でも一括で教育費や生活費を渡したり、扶養親族がもらったお金を株などの購入に充てたりすると贈与税の課税対象となる。

2.「年間110万円まで贈与税はかからない」仕組みを活用

年間110万円以下で贈与すると税金はかからない。贈与税の基礎控除額が年間110万円だからだ。この仕組みを使って数年にわたって贈与する世帯もある。

ただし課税のリスクもある。例えば100万円を10年間にわたって贈与すると「1,000万円分につき贈与契約をしたというのが本来の姿であり、渡すのを10年に分けただけに過ぎない」とされ、1,000万円分につき課税される可能性があるので注意は必要だ。

3.3つの贈与税の非課税措置

親や祖父母など直系の血族からまとまった金額をもらっても贈与税がかからない仕組みには、次の3つがある。

(1) 住宅取得等資金の贈与税の非課税措置
(2) 教育資金の贈与税の非課税措置
(3) 結婚・子育て資金の贈与税の非課税措置

(1) は直接の贈与で行うが、 (2) と (3) は信託銀行などを経由することが必要だ。

教育資金の贈与税の非課税措置について

次に、教育資金の贈与税の非課税措置について解説する。

●非課税となる教育資金の範囲

非課税となる教育資金は次のようなものだ。なお、ここでいう「学校」とは学校教育法に定められた幼稚園や小・中・高校、専門学校や大学や認定こども園、保育所などを指す。

(1) 学校の入学金や入園料、受験費用
(2) 学用品代、修学旅行や給食費など学校生活で必要なもの
(3) 塾代やおけいこ代など
(4) 留学費用や通学定期代など

なお、全体の非課税枠は1,500万円だが、 (3) と (4) は500万円までしか非課税にならない。

●適用期間と手続き

制度の有効期限は、2021年3月31日だ。ただし期限前でも孫の年齢によっては非課税とならない場合もある。この制度で受け取った教育資金が非課税となるのは、受贈者が30歳未満の子や孫であるときに限られる。なお、受け取った孫が当初30歳未満でも、もらったお金を使っている途中で30歳になったらその時点で贈与税がかかる。

手続きはシンプルだ。信託銀行などで贈与者・受贈者がこの制度を使う旨の手続きをし、贈与者がお金を預ける。この後、受贈者側が支出の都度、教育費のレシートを持参したり、年度でまとめて申請をするなど、信託銀行等で定められた精算をする流れだ。なお贈与税の申告はいらない。

孫に必要な教育資金を確認して状況に合った制度を選択

この制度が使えるかどうかは状況次第だ。贈与額が少額なら110万円以下でコツコツ贈与してもよいだろう。また、この制度は子ども夫婦が先払いで教育費を負担する形をとる。「祖父母がリッチだが子ども夫婦は余裕がない」ケースでは贈与税を払ってでも通常の贈与をした方が喜ばれるかもしれない。

制度を活用する前に、子ども世帯と話し合い、孫の教育をどうしたいのか、どれくらい教育費がかかるのかを試算したり、信託銀行に相談することが望ましい。

(提供:大和ネクスト銀行


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