認知症になった場合、介護費用はどのくらいかかるのだろう。この記事では、介護費用や介護期間に関するデータから、将来に向けてどのような備えをすべきかを解説していく。元気なうちにこそ、将来を見据えた準備を進めておくことが大切だ。

認知症の介護費用は ?

認知症の介護費用はいくら必要 ? 知っておきたいお金の制度
(画像=tomoco_sozai / stock.adobe.com)

認知症になると、徘徊・抑うつ・失禁・幻覚・妄想といった周辺症状が現れることがある。家族にとっては「介護の始まり」だ。

公益財団法人家計経済研究所の「在宅介護のお金と負担 (2016年) 」によると、在宅介護にかかる1ヵ月の平均費用 (1人あたり) は要介護認定区分別に下記のとおりだ。

全体平均 5万円
要介護1 3万3,000円
要介護2 4万4,000円
要介護3 6万円
要介護4 5万9,000円
要介護5 7万4,000円

在宅介護でかかる費用は、デイサービスなど介護サービスへの支出と、医療費や介護用品代などその他の支出に大別される。

要介護度は、認知症の有無だけでなく、症状の度合いによって個別に判断される。認知症が始まったばかりなら要介護1ということもあるが、症状が進行した場合要介護5になることもある。症状が進行すると、それだけ介護費用の負担も重くなる可能性がある。

生命保険文化センターの「生命保険に関する全国実態調査 (2018年度) 」によると、平均介護期間は4年7ヵ月という結果が出ている。分布をみると、「4~10年未満」が28.3%と最も多く、「10年以上」「3~4年未満」「2~3年未満」が14.5%と並んでいる。

介護した場所は、「自分の家」が41.1%と圧倒的に多かった。介護費用については、住宅改造や介護ベッドの購入など一時的にかかった費用の平均額は69万円で、在宅の場合、1ヶ月の平均介護費用は4万6,000円という結果だった。

平均をもとにシミュレーションすると、必要な介護費用は下記のとおりだ。

一時的にかかる費用 69万円
毎月かかる費用 4万6,000円×4年7ヵ月=253万円
合計322万円

しかし、上記はあくまで平均データをもとにした試算だ。認知症が進行し要介護度が上がったり、介護期間が長くなれば、それだけ介護費用の負担は増える。仮に要介護度5で10年間介護したとすると、介護費用の総額は957万円にものぼる。

認知症になる前から考えておきたいお金について

介護が必要になった時、家族に負担をかけないためにも、認知症になる前に準備しておくことが大切だ。ここからは、元気なうちから取り組んでおきたいお金にまつわる備えについて解説していく。

●「資産の棚卸し」をしよう

最初に取り組んでおきたいのが、「資産の棚卸し」だ。銀行ごとの現預金残高や有価証券等の評価額、保有する不動産の情報などを書き出してみよう。

財産を書き出しておくことで、亡くなった後に資産が「迷子」になることを防ぐことができる。葬儀の準備とあわせて、銀行口座や有価証券等の資産を調べてまわるのは、遺族にとっては大きな負担になる。生前に銀行口座などを書き出し、一ヶ所にまとめておくことで、遺された家族の負担を軽減できるだろう。

●「相続」の準備をしよう

「資産の棚卸し」が終わったら、あわせて「相続」の準備もしておきたい。どの財産を誰に遺すのか、遺言書に記すか、家族に申し伝えておくと、後々のトラブルを防ぐことができる。

財産を家族に明かしたくない場合は、通帳や土地の権利書などを一ヶ所にまとめておき、置き場所を配偶者や親族に伝えておくと良いだろう。

財産が3,600万円を超える場合、相続税がかかる可能性がある。相続税がかかるかどうかは、相続人の人数や、財産の構成によって変わるため注意が必要だ。相続税がかかる場合は、早めに税理士に相談したり、子どもに財産の一部を生前贈与するなどして、相続税の負担を軽くするための対策をしておきたい。

認知症になる前の準備は介護する側もされる側も必要

認知症になってから理性的な判断をすることは難しい。そのため、認知症になる前に自らの将来について考えておくことが大切だ。介護費用について知り、資産の棚卸しを行おう。また、家族ともよく話し合っておくようにしたい。

お金の話は、親からも子からも切り出しにくいものだと感じるかもしれない。しかし、お互いに気にしつつも口にしていない状況は、望ましいとはいえない。腹を割って話すことで、わだかまりがなくなり、将来に対して具体的な見通しを持ってお互いに備えておくことができる。

しっかりと自分自身の将来を見据え、元気なうちから備えを始めることが大切だ。

(提供:大和ネクスト銀行


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