多忙なビジネスパーソンにとって、資産運用は家族、あるいは次世代の暮らしに影響を与える重要なテーマである。特に、運用の規模が大きくなる富裕層にとっては、経済や相場の変動という不確実性に対して戦略的かつ堅実な資産運用が求められる。

また、不安定な資産運用は精神的なストレスを生み、心のバランスを崩しかねない。資産運用は、「心」と「資産」の両方を守れる形にする必要があるのだ。本記事では、そのための具体策として、リスクを抑えつつ長期的に資産を増やすポイントを解説する。

忙しさを理由に機会損失を招かないために

心も資産も守る「戦略的かつ堅実な資産形成」のポイント
(画像=rrice / stock.adobe.com)

資産運用の世界では、「相場は生きもの」といわれることがある。これには、「相場は時に理屈では説明できないような動きをするため、自分の考えや予想通りになるとは限らない」という意味が込められている。この不確実性を踏まえ、マーケットの動きに注意を払い、状況に応じて柔軟に対応することが求められる。

多忙な日々の中でマーケットのチェックを怠ると、知らぬ間に機会損失が生じることがある。「あのアセットに投資しておけば良かった」「この投資は避けるべきだった」と後悔するだけでなく、経済環境の変化やインフレの影響で資産価値が減少するリスクも高まる。国内外に多様な資産を持つ富裕層にとっては、この問題が特に大きな課題となる。

とはいえ、毎日マーケットの動きを追い続けるのは非現実的だ。効率的に時間を使いながら柔軟な運用を実現するには、「どこに自分の時間を使い、どこを他者に任せるか」を明確にする戦略が必要である。

将来の安心につながる資産運用を

戦略的な運用を考えるのは手間がかかるかもしれない。ただ、一度それをしてしまえば、不必要な心配を捨て去ることができる。

特に、富裕層にとって戦略的かつ堅実なポートフォリオの構築は必要不可欠だ。資産が少ないうちは、ある程度高い利益率を狙いがちなこともあって、時には限られた投資対象に資産を集中させることが求められる。しかし、資産が増えれば増えるほど、投資リスクを軽減させるため、国内外の多様なアセットに分散して投資する必要がある。

この分散投資の重要性は、資産継承の観点からも見過ごせない。適切な運用方針を持つことは、自分だけではなく、子や孫に資産を残すための手段の一つとなり、資産継承に向けた不安を解消することにもつながるのだ。

戦略的かつ堅実な資産形成のポイント

一口に「戦略的かつ堅実な資産形成」というのは容易だが、それを実現するには具体的に何が必要だろうか。重要なのは「投資対象の分散」と「リスクとリターンのバランス」、そして「長期的な視点」の3つである。このうち、どれか一つでも不十分だと、そのポートフォリオには戦略性、あるいは堅実さが欠けているといっていい。

① 投資対象の分散

「分散投資」は、資産運用の基本である。資産運用に関心のある人なら、何度も耳にしたことがある言葉だろう。ポイントは、「株式投資でさまざまなセクターに投資する」など、限定的なアセットの中における分散だけにとどまらず、債券や外貨といった投資対象の分散、さらには一度に全ての資金を投じるのではなく、積み立てを活用した「時間の分散」も考慮する必要があるということだ。

一つのアセットに集中してしまうと、そのアセットに何らかのトラブルが発生して大きく値下がりした場合、全体の資産が大きなダメージを受けるリスクが高まる。

例えば、私たちの年金を運用するGPIF (年金積立金管理運用独立行政法人) は、資産を「国内株式」「外国株式」「国内債券」「外国債券」の4つのアセットに分散し、長期的な視点で安定性を重視した投資戦略を採用している。この手法は、富裕層が参考にすべき分散投資のスタイルといっていい。

② リスクとリターンのバランス

堅実性だけを重視するなら、資産運用は預金や債券が中心となる。ただ、それだけでは経済や相場の変化についていけず、利益を得られる機会を失ってしまうことになりかねない。資産運用は、資産を防衛することだけが目的ではなく、利益を狙いながら資産を成長させることにある。そのためには、経済や時代の変化を捉え、適切な投資判断を行うことが重要だ。

国内株式や外国のアセットなど、ある程度リスクが高い一方で、大きなリターンが期待できるいくつかのアセットをポートフォリオに組み入れることで、資産全体の成長を目指すことができる。また、ポートフォリオに現金や預金といった比較的流動性・換金性の高いアセットを組み入れる意識も大切だ。人生には突発的なイベントがつきものであり、ケガや病気などによる急な出費にも備える必要があるからである。

③ 長期的な視点

②でリスクとリターンのバランスについて触れたが、経済や時代が変化していく中で、一つの決まったアセットが成長し続けるとは限らない。時には株式、時には債券、あるいは預金などが有効な投資対象になり得る。そのため、1年に1度など定期的なリバランス (ポートフォリオ内の投資配分の見直し) を行うことで、時代に見合った堅固なポートフォリオを構築することができるだろう。

また、資産継承や税効率を考慮することも重要だ。例えば、不動産は、相続税対策として有効な資産でありながら、安定した収益を生み出す手段としても活用できる。不動産の評価額は、相続時に購入価格や市場価値より低く見積もられるケースが多いため、適切に組み込むことで税負担を抑えつつ、長期的な資産形成を進めることが可能だ。

戦略的かつ堅実な資産運用が心を守る

富裕層にとって、資産を防衛しつつ有効なアセットに投資をしていくことは、資産を次世代につなぐための責任の一つでもある。株式や外貨など、多様なアセットを組み入れることで、経済の変動にも柔軟に対応できる強固なポートフォリオを構築でき、資産の保全とともに、自分や家族の心も守ることができる。

特に外貨預金は分散投資に適した、ポートフォリオへの組み入れ必須ともいえる投資手法だ。安定した金利収入をもたらすだけでなく、特定の通貨や経済圏に依存しないことで、リスクの分散を図り、ポートフォリオ全体の安定性を高める役割も果たす。こうしたアセットは、資産の成長と心の平穏を両立する土台となってくれるだろう。

(提供:大和ネクスト銀行


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