NISAのような制度の登場により行政や金融機関が推奨していることもあり、投資信託の積立投資が注目を集めている。

積立投資には仕組みとしてのメリット以外にも、投資家の心理的負担を軽減するという効果もあり、初心者でも始めやすい。もちろん、積立投資は万能な投資手法ではなく、注意点もある。だが、投資の初心者が投資の第一歩を踏み出し、資産形成を目指すにはおすすめの方法と言えるだろう。

投資信託で積立投資をはじめる人が増加傾向

積立投資
(画像=PIXTA)

投資信託の積立投資を始める人が増えている。一般財団法人投資信託協会の『2019年 投資信託に関するアンケート調査』によると、投資信託を保有している人の4割以上が積立投資を利用している。また、積立投資を利用している人の比率は年々増加傾向にある。

このように、投資信託を利用した積立投資で、資産形成を目指す人が増えているのだ。

投資信託とは?

投資信託とは、多くの投資家から集めた資金を、大きな資金としてまとめて運用会社の専門家が株や債券で投資・運用をしてくれる金融商品だ。そして、その運用成果が投資家それぞれの投資額に応じて投資家に分配される仕組みである。

投資や運用と言われると、専門知識が必要となりそうだが、投資信託では実際の投資・運用は運用会社の投資のプロ(ファンドマネージャーと呼ばれる)が行なう。そのため、投資家は知識や経験がなくとも始めることができる。集めた資金をどのような対象に投資するかは、投資信託ごとの運用方針により違ってくるが、投資先の決定や売買のタイミングなどはすべて専門家に任せることができる。そのため、投資信託は初心者でも始めやすい投資商品となっている。

積立投資とは?

積立投資とは、一般に、定期的に一定金額ずつ投資信託を買付していく投資方法のことをいう。このような購入方法は「ドルコスト平均法」と呼ばれる。例えば、毎月月末に1万円分の投資信託を購入していくといった契約を金融機関とすることで、自動的に投資信託の運用残高を増やしていくことができる。

現在、投資信託を販売する多くの金融期間がこの積立投資に対応している。金融機関により呼び方は様々で、「投信自動積立」、「定期定額購入」、「定時定額購入」などの名称でサービスが提供されている。

投資信託が積立投資に向いている理由

投資信託は口数という非常に小さい単位で取引できるため、積立投資に向いている金融商品だ。通常、投資信託の口数は、1口あたり1円前後から高くても数円程度の価格だ。

株式やETFも1株や1口で取引できるケースもあるが、通常、数百円から数千円単位での取引となる。定額で購入するには端数が出やすい。

実際、株式やETF(上場投資信託)を用いた積立投資もある。だが、このような理由もあり積立投資は投資信託を利用して行なわれるケースが多い。

積立投資のメリット1 少額から始めることができる

積立投資には少額から投資できるというメリットがある。最低金額は金融機関により異なるが、投資信託の積立投資が月々100円からできる場合もある。これほど少額から投資をはじめられるのであれば、資金不足で投資が始められないことは、ほとんどないだろう。

積立投資のメリット2 時間分散ができる

積立投資では通常、ドルコスト平均法で定期的に一定金額を買い付けていく。このような購入方法は時間分散の効果が期待できる。

投資信託の価格(基準価額)は毎営業日変動していくものだ。まとまった資金があるからといって、多額の投資信託を一括で購入すると、思わぬ高値で購入してしまう可能性もある。複数回に分けて投資すれば、いわゆる「高値つかみ」を避けることができる。これが時間の分散効果だ。

ドルコスト平均法は、一定数量ではではなく一定金額を購入し続けていくことが特徴だ。一定金額を購入する場合、価格が安い時は口数を多めに購入できる。一方、価格が高い時は少なめの口数を購入することになる。結果として、平均購入単価を低く抑える効果があるというわけだ。

時間や心理的な負担を軽減するメリットも

投資信託の積立投資について、その仕組み上のメリットの他、時間的・心理的メリットにも注目したい。

・注文の手間が省ける

積立投資では一度契約すれば、契約終了するまで継続的・自動的に投資信託の買付がなされていく。何もしなくても、決められた時期に決められた金額が購入できるので、どの投資信託をどれだけ買うかを決定して注文するという手間を省くことができる。投資家にとって、時間節約のメリットも大きい。

また、購入代金を銀行口座から自動引き落として購入していくように設定しておけば、購入資金をその都度用意する手間も省くことができるだろう。

・購入するタイミングで悩まない

積立投資は投資家の心理的負担を軽減する効果もあるといえる。積立投資なら投資家は日々相場を注視して購入のタイミングに悩まされる必要がない。

いざ価格が乱高下し始めると新たな買付注文を躊躇してしまうことも多いだろう。だが、積立投資は投資家の心理状態とは関係なく自動的に購入されていく。そのため、積立投資は購入価格などが気になるという投資家の精神的ストレスも軽減される。

優遇制度を活用すれば積立投資はさらに有利に

積立投資が注目されてきている背景には、個人が資産形成を意識のするようになってきていることがあるが、行政が各種制度で積立投資を後押ししている側面もある。

「つみたてNISA」のような制度をうまく活用すれば、より有利に積立投資ができるだろう。

・つみたてNISA

「つみたてNISA」は、2018年から始まったNISA(少額投資非課税制度)の積立投資版ともいえる制度だ。少額からの長期・積立・分散投資を支援するために創設された。利用者も増えてきており、2020年3月末時点で、約219万人を超える投資家が利用している。

つみたてNISAでは、積立投資をする場合に、各年に購入したファンドを保有している間に得た分配金と売却益が購入した年から数えて最長20年間、課税されない。

毎年の40万円という投資金額の上限はあるが、毎年積立を続けていけば、非課税の恩恵を受けながら資産形成を目指せる制度だ。

参考にしたい「つみたてNISA」の対象銘柄

積立投資を始めようとした場合、どの投資信託を選べば良いか迷ってしまうという人もいるだろう。なにしろ、日本国内では約6000本も投資信託が販売されている。そこで参考にしたいのが「つみたてNISA」の対象銘柄だ。

つみたてNISAを利用して積立投資を行なう場合、どの投資信託でも好きに選べるわけではない。投資家が選びやすいように、条件に適った長期の積立投資・分散投資に適した一定の投資信託のみがつみたてNISAの対象銘柄となっている。

販売手数料ゼロ、運用コストが高すぎない、長期投資には適さない毎月分配型ではないことなど、高い条件をクリアした投資信託だけが対象だ。現在、インデックス型の投資信託が157本、アクティブ運用等の投資信託が18本選ばれている。(2020年6月29日時点)

積立投資を始める際に、投資信託選びに迷ったら、つみたてNISAの対象投資信託を参考にしてみるのもいいだろう。

積立投資の注意点

最後に積立投資の注意点についても触れておきたい。

・月々100円では資産形成できない可能性がある

積立投資を長年続けても、金額があまりにも少額だと資産形成としては物足りない結果にしかならない可能性がある。

確かに、積立投資は少額でも始められるというメリットがある。100円やワンコイン(500円)から始められることを売りにしている金融機関も多い。しかし、月々わずか数百円程度では、十分な資産を持つことは難しいかもしれない。

毎月100円の積立を20年間続けても、投資元本は2万4000円だ。毎月500円でも12万円だ。もちろん、運用成果によっては運用益が大きくなる可能性はあるが、資産運用に回す資金があまり小さすぎては運用益もそれほど期待できないだろう。

・ドルコスト平均法の弱点

積立投資の手法であるドルコスト平均法は、高値づかみを避けることができ、平均購入単価も抑えられるという特徴がある。だが、ドルコスト平均法も完璧な投資手法ではない。

例えば、投資信託の価格が右肩上がりで上昇を続けるのであれば、ドルコスト平均法はその効果を発揮しにくい。結果として一括で投資をして安値でたくさん買ったほうが、良い結果が得られるかもしれない。

また、ドルコスト平均法にいくら平均購入単価を抑える効果があったとしても、最終的に投資信託を売却して換金する際の価格が、購入価格を下回っていれば損失が出てしまう。

ドルコスト平均法は、あくまでも価格変動リスクを抑える手法である。保有する投資信託をいつどれくらい売却すればいいかについては投資家自身が判断しなければならない。そして、その結果も投資家自身が負うことになる。

積立投資は万能ではないけれど

積立投資も万能ではなく注意点がある。だが、積立投資のメリットを活かし、つみたてNISAのような税制優遇制度を活用しながら、積立投資を継続していけば、ある程度の資産形成を目指せるはずだ。

積立投資には一度を始めれば、投資残高が自然と積み上がっていくという魅力もある。最初は経験を積むつもりで、数百円からでも構わないだろう。まずは最初の一歩を踏み出してみてはどうだろうか。

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