東京五輪の次は2022年2月開催予定の「北京冬季五輪」だ。東京五輪の場合は経済効果よりも緊急事態宣言による経済的損失の方が大きいと言われているが、北京冬季五輪はどうなるのだろうか。五輪開催が中国経済や株式相場にどのような影響を与えるのか考えていこう。

目次

  1. コロナ禍に翻弄された東京オリンピック
  2. 五輪と経済効果の関係性
  3. 五輪の株価の関係性
  4. 次なる五輪開催国は中国・北京、コロナ対策に世界が注目
  5. 北京冬季五輪は中国の先進技術をPRする大チャンス
  6. 中国が世界一の経済大国となる日はすぐそこ!?

コロナ禍に翻弄された東京オリンピック

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、1年延期された東京五輪。多くの試合が無観客で開催された。続くパラリンピックも原則無観客での開催となる。

無観客開催は、経済効果の縮小に直結する。それだけ人々の移動が減るからだ。大会会場近くの宿泊施設は当初期待していた数字とはかけ離れた結果となった。土産物店や飲食店、航空会社やJR・私鉄など、各方面に影響が出ている。

野村総合研究所(NRI)は、東京五輪において国内客を完全に受け入れるケース、全く受け入れないケースなどシナリオ別に、経済効果と経済損失を算出している。仮に観客を4分の1受け入れるケースでも、経済効果は約1,100億円の縮小となり、1兆7,000億円規模にとどまるという。

<東京オリンピック・パラリンピックの経済効果・経済損失>

シナリオ 経済効果 経済損失
国内観客「完全」受け入れケース 1兆8,108億円 0円
国内観客「半数」受け入れケース 1兆7,374億円 734億円
国内観客「4分の1」受け入れケース 1兆7,007億円 1,101億円
無観客のケース 1兆6,640億円 1,468億円
大会開催中止のケース 0円 1兆8,108億円
出典:野村総合研究所(NRI)

また、国内の観戦客に関してだけではなく、感染拡大防止の対策から、海外からの観戦客を受け入れられないことも、経済効果を大きく縮小させた。

五輪と経済効果の関係性

東京五輪はパンデミックと重なる稀なケースとなり、当初想定されていた経済効果は期待できなかったが、過去の各大会では開催国に大きな経済効果をもたらしているケースも少なくない。

以下は、その各開催国における開催年と開催1年前の実質経済成長率の差だ。近年は実質経済成長率を大きく押し上げるほどの経済効果は生じていないものの、過去13大会のうち、半数以上で実質経済成長率が開催1年前より開催年の方が高い結果となっている。

<実質経済成長率の増減(開催年 − 開催1年前)>

開催年 開催国 都市 増減
1964年 日本 東京 +3.2ポイント
1968年 メキシコ メキシコシティ +3.5ポイント
1972年 西ドイツ ミュンヘン +1.2ポイント
1976年 カナダ モントリオール +3.4ポイント
1984年 米国 ロサンゼルス +2.7ポイント
1988年 韓国 ソウル -0.6ポイント
1992年 スペイン バルセロナ -1.6ポイント
1996年 米国 アトランタ +1.1ポイント
2000年 オーストラリア シドニー -1.1ポイント
2004年 ギリシャ アテネ -0.7ポイント
2008年 中国 北京 -4.6ポイント
2012年 英国 ロンドン -0.8ポイント
2016年 ブラジル リオデジャネイロ +0.2ポイント

五輪の株価の関係性

続いて、過去に五輪が開催された国のその年の株価の推移を分析してみよう。

2016年はブラジルでリオデジャネイロ五輪が開催された。ブラジル株の代表的な株価指数は「ボベスパ指数」。2016年は、1月4日の始値が43,349、この年の取引最終日である12月29日の終値は60,227。38.9%の上昇となっている。

2012年にイギリスで開催されたロンドン五輪の場合はどうだろう。イギリス市場の代表的な株価指数は「英国FTSE100」。2012年1月3日の始値は5,572.28、この年の12月31日の終値は5,897.81だった。5.8%の上昇となっている。

冬季五輪の場合はどうだろうか。2018年2月に平昌冬季五輪が開催された韓国について調べてみよう。平昌冬季五輪が開催された2018年2月の前後1年間、つまり2017年8月から2018年7月までの韓国総合株価指数の変化は、2017年8月1月の始値は2,397.12、2018年7月31日の終値は2,295.26であるため、4.2%の下落となっている。

上昇したところもあれば下落したところもある。五輪の開催と株価の推移にはあまり相関関係があるとは言えないのかもしれない。五輪の開催より、その国のその時期の経済情勢や世界経済の動向の方が株価に与える影響が大きいように感じる。

ちなみに平昌冬季五輪が開催された2018年は、2月と10月に世界同時株安が起きた年だった。

次なる五輪開催国は中国・北京、コロナ対策に世界が注目

過去の五輪を参考にしても、北京冬季五輪が中国株上昇の追い風になるかは分からない。しかし、北京冬季五輪が中国の国力を世界にアピールする絶好の機会になることは確かだ。そのアピールの成否によっては、株価が大きく上昇する可能性は十分にあるだろう。

北京冬季五輪は2022年2月に開催予定だが、まず各国が注目するのは、新型コロナウイルスの感染拡大を抑え込めているかということ。そして、五輪前後と開催中の選手団に対する感染対策だろう。東京五輪と北京冬季五輪が比較されることは必至だ。

北京冬季五輪は中国の先進技術をPRする大チャンス

前述の通り、北京冬季五輪は中国の国力を世界にアピールする絶好の機会だ。そのため、自国の自動運転技術やAI(人工知能)技術、ドローン技術などを、開会式や閉会式でお披露目するのは、ほぼ確実と考えてもいいだろう。

例えば、中国のネット検索大手・百度(Baidu)やライドシェア中国最大手のDiDi Chuxing(滴滴出行)などが中国国内で自動運転車の実証実験に取り組んでおり、五輪会場でも選手の輸送に自動運転車が活用されるかもしれない。

中国では自動配送ロボットの開発に力を入れている企業も少なくない。中国EC(電子商取引)大手のJD.com(京東商城)の物流子会社であるJD Logistics(京東物流)もその1つだ。こうした企業のロボットも、選手村への食事や備品の輸送などで活躍するかもしれない。

中国が世界一の経済大国となる日はすぐそこ!?

世界の国々を対象とした「国内総生産(GDP)ランキング」では、今のところ中国はアメリカに次いで2位に甘んじているが、英シンクタンク「経済ビジネス・リサーチ・センター」(CEBR)は過去に公開した報告書を通じ、2028年には中国がアメリカを抜いて世界最大の経済大国になると予想している。

こうした予想を聞いても現実味がわかないかもしれない。しかし、北京冬季五輪で中国の先進技術が披露されれば、各国の人々は考えを一変させるかもしれない。それだけ中国の技術力は、一昔前よりも高まっているのだ。

現に、中国ではユニコーン企業(時価総額10億ドル以上の非上場企業)も増えており、ユニコーンの時価総額ランキングでも中国企業が上位にランクインする例が目立ち始めている。

いまは世界最大の経済大国であるアメリカの株式市場に資金が集まっているが、中国にその座を奪われればかなりの投資マネーが中国に流入することになるはずだ。投資マネーの流入は株価上昇に結びつきやすい。

北京冬季五輪は、世界経済のパラダイムシフトを加速させるイベントと成り得るのだろうか。注目が集まる。

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