自動運転タクシーを世界で初めて商用化したのは、米国のGoogle系Waymoだ。しかし中国企業も負けていない。すでに北京などでサービス提供が始まり、実用化一歩手前の実証実験も盛んに行われている。その勢いはとどまるところを知らない。本稿では、自動運転技術の発展や世界の自動運転技術、中国の有力企業について解説していく。

目次

  1. 自動運転技術の発展が世界で進んでいる
  2. 米国や欧州、日本、中国などで自動運転技術が進む
    1. 米国:Google系Waymoが先行
    2. 欧州:自動運転シャトルの有力企業が2社
    3. 日本:ホンダがレベル3の市販車を発売
    4. 中国:自動運転タクシーの実用化・実証が進む
  3. 中国の自動運転技術の進歩に注目! 押さえておきたい5つの企業
    1. Baidu(百度):自動運転タクシーを今後3年以内に国内30都市で導入へ
    2. DiDi Chuxing(滴滴出行):2030年までに自動運転タクシー向け車両を100万台規模に
    3. Xiaomi(小米科技):自動運転技術の開発企業の買収を発表、EV企業の新設も
    4. AutoX:本田技研工業と業務提携して技術開発、自動運転レベル4に特化
    5. WeRide(文遠知行):自動運転の貨物バンを発表、物流向け車両として活躍へ
  4. 中国社会で自動運転が一般化するのも遠くない?!
  5. 自動運転技術の発展で世界経済・中国経済はどう変わる?
  6. 黎明期のいまこそ中国へ投資を

自動運転技術の発展が世界で進んでいる

近年は、世界の民間企業によって自動運転技術が進化しつつある。例えば「市販車向け」「シャトル・バス向け」「トラック向け」など自動運転技術は、さまざまなセグメントで無人化に向けた取り組みが進んでいるのだ。自動運転を実現するためには、以下のようなさまざまな要素が必要となる。

  • 運転操作の判断をつかさどるAI(人工知能)
  • 自動運転の目の役割を果たすLiDAR(ライダー)などのセンサー群
  • 走行ルートの決定などに役立つ高精度デジタル地図
  • クラウドとデータをやり取りする通信技術など

こうした各要素も民間企業の事業活動によって飛躍的に発展している。センサーの中でも特に重要なLiDAR(ライダー)に関しては、多くのベンチャー企業が各国で誕生。LiDARとは、Light Detection And Rangingの頭文字の略で直訳すると「光による検知と測距」である。レーザーを照射することで物体にあたって跳ね返ってきた時間から物体の距離や方向を測定するものだ。

すでに証券取引所に上場する企業も出始めている。自動運転業界にこれだけ注目が集まっている背景にあるのが何より「自動運転市場の有望性」だ。株式会社富士キメラ総研が公表している「2020 自動運転・AIカー市場の将来展望」によると2020年における自動運転レベル2以上の生産台数は、約724万台(見込み)だった。

一方で2045年における自動運転レベル2以上の生産台数予測は、1億3,552万台超となり約18.7倍に膨らむ。2018年6月に公表されたトヨタ自動車株式会社ニュースリリースによると豊田章男社長も自動運転などによるイノベーションを「100年に一度の大変革」と形容し社を挙げて自動運転技術の開発に取り組んでいる。

米国や欧州、日本、中国などで自動運転技術が進む

世界の中でも自動運転技術の開発が進んでいるのが米国や欧州、日本、中国などだ。

  • 米国:Google系Waymoが先行
  • 欧州:自動運転シャトルの有力企業が2社
  • 日本:ホンダがレベル3の市販車を発売
  • 中国:自動運転タクシーの実用化・実証が進む

米国:Google系Waymoが先行

米国では、Googleが自動運転業界をリードしている。同社の自動運転部門からスピンアウトして設立されたWaymoは、2018年12月、世界で初めて自動運転タクシーの商用サービスをアリゾナ州フェニックスで開始。当初は、セーフティドライバーを乗せてのサービス提供だったが2020年には一部車両でセーフティドライバーなしでのサービス提供を始めた。

2021年8月には、カリフォルニア州サンフランシスコでも実証的に無人タクシーサービスを導入している。自動運転は、自動運転レベルが0〜5の6段階で定義されており、Waymoの完全無人の自動運転タクシーの分類は「レベル4」(高度運転自動化)だ。すでに自動運転の最高位まであと一歩のところまで来ていることが分かる。

欧州:自動運転シャトルの有力企業が2社

欧州では、フォルクスワーゲンやダイムラー、BMWなどの大手自動車メーカーが自動運転技術を開発している。さらに自動運転シャトルを開発する有力スタートアップが存在していることは特筆すべき点の一つだ。特にフランスのNavya(ナビヤ)とEasyMileが急先鋒でNavya社のハンドルのない自動運転シャトル「ARMA(アルマ)」は、日本国内でも複数地域で実運用されている。

また自動運転向けにデジタル地図を作製しているオランダのHERE TechnologyやTomTomといった有力企業もある。

日本:ホンダがレベル3の市販車を発売

2021年3月5日本田技研工業株式会社は、世界初となる自動運転レベル3(条件付き運転自動化)の技術を搭載した「LEGEND(レジェンド)」の販売を開始。国内で同業のトヨタ自動車株式会社や日産自動車株式会社だけではなく世界の自動車メーカーの度肝を抜いた。自動車メーカー以外では、自動運転OS(基本ソフト)を開発する株式会社ティアフォーが世界的に注目を集めている。

同社は、自動運転OSをオープンソースで公開しておりすでに多くの企業・研究機関などで導入されている。

中国:自動運転タクシーの実用化・実証が進む

本記事の本題ともいえる中国は近年一気に頭角を現し始めた。北京や上海、深センなどの各都市で自動運転タクシーの実証実験が行われすでに一部の企業は米Waymoのようにサービスを商用化している。中国が存在感を高めている理由の一つは、中国政府の強力な後押しがあることだ。自動運転で中国が覇権を握るために開発各社に対して2017年から積極的に公道走行の試験許可を与えるなどしている。

そのため民間企業にとって自動運転技術の開発が進めやすい環境が整ってきているのだ。中国には、自動運転分野で多くのユニコーン(時価総額が10億米ドル以上の非上場企業)が存在していることも特筆すべき点である。

中国の自動運転技術の進歩に注目! 押さえておきたい5つの企業

世界の中でも自動運転技術の進歩が目覚ましいのが中国である。ここでは、中国で特に積極的に自動運転にアプローチしている企業を5社紹介していく。

  • Baidu(百度):自動運転タクシーを今後3年以内に国内30都市で導入へ
  • DiDi Chuxing(滴滴出行):2030年までに自動運転タクシー向け車両を100万台規模に
  • Xiaomi(小米科技):自動運転技術の開発企業の買収を発表、EV企業の新設も
  • AutoX:本田技研工業と業務提携して技術開発、自動運転レベル4に特化
  • WeRide(文遠知行):自動運転の貨物バンを発表、物流向け車両として活躍へ

Baidu(百度):自動運転タクシーを今後3年以内に国内30都市で導入へ

百度(Baidu)は、中国のインターネット大手だが自動運転プロジェクトとして「アポロ計画」を立ち上げ国内外のさまざまな企業がこのプロジェクトに参画している。同社は自動運転タクシーを今後3年以内に国内30都市で導入する計画を明らかにしている。

DiDi Chuxing(滴滴出行):2030年までに自動運転タクシー向け車両を100万台規模に

DiDi Chuxing(滴滴出行)は、中国のライドシェア最大手だが自動運転タクシーの取り組みを積極的に展開している。2030年までに自動運転タクシー向けの車両を100万台導入する目標を掲げており本当に実現するのか注目が集まっている。

Xiaomi(小米科技):自動運転技術の開発企業の買収を発表、EV企業の新設も

中国のスマートフォン大手のXiaomi(小米科技)は、車両の開発に注力していく方針だ。2021年8月には自動運転技術の開発企業の買収を発表しEV(電気自動車)を製造する会社を新たに設立したことも明らかになっている。

AutoX:本田技研工業と業務提携して技術開発、自動運転レベル4に特化

AutoXは、中国の自動運転スタートアップでありホンダと業務提携して技術開発を進めていることで知られている。「自動運転レベル4」に特化した取り組みを進めており、自動運転タクシーの実証実験も積極的に実施。

WeRide(文遠知行):自動運転の貨物バンを発表、物流向け車両として活躍へ

日産自動車株式会社が出資しているWeRide(文遠知行)は、2021年9月自動運転の貨物バンを発表した。物流向けの車両として開発されており中国国内で増大する物流需要を支える存在となることを目指している。同社によると発表した貨物バンは、すでに自動運転レベル4の能力を有しているという。

中国社会で自動運転が一般化するのも遠くない?!

中国政府は2025年までに、新車販売のうち約半分を自動運転レベル3の車両にすることを目指している。市販車として多くの自動運転車が発売され自動運転タクシーの実用化も進めば中国社会はより一層自動運転化の道を突き進んでいくはずだ。2021年に入ってからは、中国政府が高速道路でも自動運転の走行試験を解禁する方針を示し中国の民間企業にとってもさらに実証実験がしやすい環境が整ってきている。

自動運転技術の発展で世界経済・中国経済はどう変わる?

自動運転技術が社会実装されていくことで世界経済は大きく変貌を遂げるだろう。運転手いらずとなることでタクシーやバスによる人の移動コストが下がる。人の移動が活発化すればおのずと経済は活性化していく。中国経済にとっても同じメリットがもたらされるが、中国ではEC(電子商取引)需要が大きく伸びる中、特に物流セクターで自動運転技術の活躍が期待できそうだ。

自動運転トラックや自動搬送ロボットであれば人に代わって24時間休まずに働き続けてくれる。

黎明期のいまこそ中国へ投資を

自動運転で世界をリードしつつある中国。自動運転技術が社会実装されれば大きな国益を中国にもたらし経済成長にも弾みがつく。2021年時点で自動運転技術は、黎明期かもしれないが投資するなら黎明期こそ最高のタイミングだ。これを機に中国経済や自動運転技術を開発する中国企業への投資を検討してみてはいかがだろうか。

ご投資にあたっての留意点
取引や商品ごとに手数料等およびリスクが異なりますので、当該商品等の契約締結前交付書面、上場有価証券等書面、目論見書、等をよくお読みください。
外国証券等について
外国証券等は、日本国内の取引所に上場されている銘柄や日本国内で募集または売出しがあった銘柄等の場合を除き、日本国の金融商品取引法に基づく企業内容等の開示が行われておりません。
手数料等およびリスクについて
国内株式等の手数料等およびリスクについて
国内株式等の売買取引には、約定代金に対して最大1.2650%(税込み)の手数料をいただきます。約定代金の1.2650%(税込み)に相当する額が3,300円(税込み)に満たない場合は3,300円(税込み)、売却約定代金が3,300円未満の場合は別途、当社が定めた方法により算出した金額をお支払いいただきます。国内株式等を募集、売出し等により取得いただく場合には、購入対価のみをお支払いいただきます。国内株式等は、株価の変動により、元本の損失が生じるおそれがあります。
外国株式等の手数料等およびリスクについて
委託取引については、売買金額(現地における約定代金に現地委託手数料と税金等を買いの場合には加え、売りの場合には差し引いた額)に対して最大1.1000%(税込み)の国内取次ぎ手数料をいただきます。外国の金融商品市場等における現地手数料や税金等は、その時々の市場状況、現地情勢等に応じて決定されますので、本書面上その金額等をあらかじめ記載することはできません。
国内店頭取引については、お客さまに提示する売り・買い店頭取引価格は、直近の外国金融商品市場等における取引価格等を基準に合理的かつ適正な方法で基準価格を算出し、基準価格と売り・買い店頭取引価格との差がそれぞれ原則として2.50%となるように設定したものです。 外国株式等は、株価の変動および為替相場の変動等により、元本の損失が生じるおそれがあります。
投資信託の手数料等およびリスクについて
投資信託のお取引にあたっては、申込(一部の投資信託は換金)手数料をいただきます。投資信託の保有期間中に間接的に信託報酬をご負担いただきます。また、換金時に信託財産留保金を直接ご負担いただく場合があります。投資信託は、個別の投資信託ごとに、ご負担いただく手数料等の費用やリスクの内容や性質が異なるため、本書面上その金額等をあらかじめ記載することはできません。
投資信託は、主に国内外の株式や公社債等の値動きのある証券を投資対象とするため、当該金融商品市場における取引価格の変動や為替の変動等により基準価額が変動し、元本の損失が生じるおそれがあります。

この資料は、東洋証券株式会社が信頼できると思われる各種のデータに基づき投資判断の参考となる情報提供のみを目的として作成したもので、投資勧誘を目的としたものではありません。また、この資料に記載された情報の正確性および完全性を保証するものでもありません。また、将来の運用成果等を保証するものでもありません。この資料に記載された意見や予測は、資料作成時点のものであり、予告なしに変更することがありますのでご注意ください。この資料に基づき投資を行った結果、お客さまに何らかの損害が発生した場合でも、東洋証券株式会社は、理由の如何を問わず、一切責任を負いません。株価の変動や、発行会社の経営・財務状況の変化およびそれらに関する外部評価の変化等により、投資元本を割り込むことがありますので、投資に関する最終決定は、お客さまご自身の判断でなされるようお願い致します。この資料の著作権は東洋証券株式会社に帰属しており、電子的または機械的な方法を問わず、いかなる目的であれ、無断で複製または転送等を行わないようにお願い致します。