民主党と維新の党の合併後の名称について、「立憲民主党」と「民進党」の2案に絞り、世論調査を経て決めることになったという。
党名については公募を行ない、2万弱の応募があったという。民主党サイドからは合併後も「民主党」のママという案が最も多かったと発信されているが、維新側は難色を示している。今回、党名の公募について、多方向から「決められない政治の象徴」といった非難がされているが、党名を公募する事は異常なのだろうか。過去の事例を見ながら考えてみたい。
新党の応募内容と「民主党」の文字に固執する理由
報道によると最も多かった案は「民主党」であるが、その他にも「国民民主党」、「日本民主党」、「平和の党」などもあったという。他にも「自分の名前も決められない党」といった、の揶揄する案も多く応募されたようだ。
国民にはネガティブなイメージが定着しているにもかかわらず「民主党」が多数応募された背景には、現民主党の支持母体である連合の思惑があるのかもしれない。
また新党名から「民主」の文字を外してしまった場合、7月に行われる予定の参議院選挙において全国比例選挙区にて「民主党」と書かれた場合、民主の文字を持つ「自由民主党」もしくは「社会民主党」に配分される可能性がある。
4月に名称を変更した場合でも7月の参議院選挙については6月公示が予想される為、実質的には2カ月半程度しか新名称を浸透させる時間がない。「民主党」では世論が付かず戦えないが、「民主党」でなくなくなった場合には政敵に票を与えるというジレンマがあるのだ。
党名の公募は珍しくない
日本において、党名を公募する事は珍しい物ではない。今回の民主党の党名公募について、ネット上では右派が「党名も決められないのか」とバッシングを浴びせているが、右派政党であった次世代の党(現・日本の心を大切にする党)も党名は公募で決まった。
この際には約600の党名案より、「次世代の党」、「自由立憲党」、「新党富士」、「日本改新党」、「れいめい日本」、また石原慎太郎氏からは「やまと」が提案されたが、所属議員内での投票により「次世代の党」となった。
また自由民主党についても合併元である「自由党」と「日本民主党」の名称を基にはなっているものの、建前上では「広く内外に公募した結果」により「自由民主党」となった事となっている。
日本新党も同様だ。一時は自由社会連合との政党名であったが、結党後すぐに名称を公募し、「日本新党」との名称に変更した。日本の政党において、党名の公募は珍しいことではないのだ。
むしろ政治・政党をより身近に感じさせられる為には国民・政党支持者に政党に対する参加意識を持たせたいという考え、また国民から広い支持を得ているとのイメージを作り上げるためにも、実態はどうであれ公募という形が取られる場合が多い。おそらく今回についても内々には既に党名案は定まっているものの、形式的に公募という形となるのであろう。その証拠に、新名称については応募数ではなく、世論調査によって定めるとの報道がなされている。
国民から冷ややかな目線が注がれている
新党名は早ければ14日、遅くとも27日の結成までには発表され、基本政策や綱領も発表されるはずだ。
しかし既にほころびの兆しが目につき始めており、社民党や共産党も含めた選挙協力体制についても意見がバラバラになっている。7月の参議院選挙では、特に1人区選挙協力を行う方向だ。選挙区によっては既に候補の1本化が発表されている。
しかし衆議院選挙では協力しないとの意見もあり、衆参同時が行われた場合どうなるのか不透明だ。
また一部でうわさされ、徐々に声が大きくなり始めている「参議院選挙前の衆議院解散総選挙」が現実となった場合、野党の戦略が根底から覆される。そうでなくても各地の政党選挙区支部の看板や町中に貼ってある街頭演説告知ポスター(俗に2連ポスターと呼ばれる)については党名変更に伴い張り替えが必要だ。自民党公明党、またおおさか維新の党等にとっては、このゴタゴタの中での解散総選挙は改憲保守派の大連立政権立ち上げの好機にもなってくる。
今回の民主党と維新の党の名称変更に伴うドタバタについて、多くの国民は冷ややかな目で見ている。少なくとも新党が次期解散総選挙で政権奪取が可能だと考えている者は少ない。「ゆ党」(野党として対立するでも、与党と連立を組むほどでもない、中途半端な政党を皮肉ったもの)としての立ち位置を確立しつつある、おおさか維新の党が漁夫の利を得る事になると想定されている。
1強多弱の現在の政局は日本の将来の為には必ずしも理想的な状況ではない。新政党がはたして再度、2大政党の一角となれるのかどうか--。27日の結党大会まで注視していきたい。(木之下裕泰、金融・政治アナリスト/MBA・金融工学修士)
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